映画『マルサの女』で有名になった国税局査察部(通称マルサ)。マルサには、フィクション(映画『マルサの女』)がきっかけで実際に導入された“秘密兵器”があると、元マルサの税理士である上田二郎氏はいいます。その秘密兵器とはいったいなんなのか。秘密兵器の作製・導入に携わった筆者が詳しく解説します。
地方の実情に合わせた「改良型」を導入
2号車を全国に配備して実戦使用し、各国税局の実情に応じて改良を加えた。前方に視界を遮るものが少ない地方では200mの望遠が有効だったが、都内では建物が邪魔になって大きな望遠を使う機会が少ない。
また、高級車に乗るターゲットを追うには不向きだった。筆者も高速道路を走るジャガーを追跡中、アクセルをベタ踏みしてもみるみるうちに見えなくなった経験がある。
東京ではあまり駐車スペースを取らない車が必要とされたが、地方では追跡時のスピードが必要だった。東京国税局もスピードを重視した改良型を順次導入していったが、基本装備は2号車と変わらない。
現在、さらに改良を加えた最新型が導入されていると聞くが、車種も機能も秘密にしておく。退職者がマルサのアイテムを暴露するのはご法度だ。
上田 二郎
元国税査察官/税理士
元国税査察官・税理士
1964年生まれ。東京都出身。83年、東京国税局採用。千葉県内および東京都内の税務署勤務を経て、88年に東京国税局査察部に配属。その後、2年間の税務署勤務があるものの、2007年に千葉県内の税務署の統括国税調査官として配属されるまでの合計17年間を、マルサの内偵調査部門で勤務した。
09年、妻の実家を継承するために東京国税局を退職したが、縁あって再び税理士として税務の世界につながっている。
著書に『マルサの視界 国税局査察部の内偵調査』(法令出版)、『国税局直轄 トクチョウの事件簿』(ダイヤモンド社)、『国税局査察部24時』(講談社現代新書)がある。
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連載元マルサで“税理士兼住職”…異色の税理士が語る「税務調査」の表と裏