(※写真はイメージです/PIXTA)

日本では物価高騰が続いており、日銀が金融緩和を続けていることから、今後さらにインフレが進む懸念があります。この状況下では、資産を現預金のみで保有していると著しく目減りするおそれがあります。どう対策すればよいでしょうか。日銀で景気動向調査、金融業務、決済システムの開発に携わった経験をもつCFP・小松英二氏の著書『はじめての金利×物価×為替の教科書』(ビジネス教育出版社)から一部抜粋して紹介します。

エネルギー、金属、農畜産物等に投資する「コモディティ型投資信託」

国際商品(エネルギー、金属および農畜産物等)の市況は、日本経済や家計に大きな影響を与えます。国際商品市況が高騰する「資源インフレ」と呼ばれる事態への備えとしては、コモディティ(commodity:産品・商品)投資が有効です。

 

コモディティ相場を左右する最大の要因は、中国、インド等の新興諸国の経済発展に伴うコモディティ需要の高まりです。経済成長による新興諸国の国民生活の向上とともに、食糧、エネルギー、さらにはインフラ投資まで広範囲にコモディティ需要が拡大していくものと思われます。

 

インフレ対策における大事な視点は、物価と同じ方向に値動きする投資対象を資産として持つことです。理に適ったやり方としてコモディティ投資が注目されます。

 

個人投資家がコモディティ投資を行う場合、[図表1]のような「コモディティ型投資信託」や「ETF」を活用するとよいでしょう。エネルギーや農産物を中心に投資対象の分散投資効果が期待できます。その他に商品先物取引(原油や銅、とうもろこしなどの商品の先物を売買する取引)を直接行うことも選択肢となります。

 

[図表1]資源に着目するコモディティ型投資信託

 

コモディティ投資において注意したいことは、新興諸国における現実の需要(実需と呼ばれる)のほかに、先進国の金融緩和による過剰流動性(世の中にお金がジャブジャブあるイメージ)の存在です。

 

過剰流動性の動きは、「投機マネー」としてコモディティ市場に流入し、相場を押し上げることや、時として流出により相場を急落させることもあり、相場が荒れることも少なくありません。

インフレ対抗力が立地や用途で違ってくる「不動産」

金融商品ではありませんが、不動産を保有することも、インフレ対策として効果を発揮することがあります。

 

不動産販売において、「不動産投資はインフレに強い」といったセールストークを聞くことがあります。強調される点は以下の3点です。

 

1. 一般にインフレ時には不動産の資産価値は増大する(もしくは資産価値は下がりにくい)

2. インフレが進むと家賃収入も上昇する傾向がある

3. インフレ時には貨幣価値が下がるため投資用ローンも目減りする

 

ただし、これらは一概には断言できません。

 

まず資産価値ですが、不動産の立地や用途により資産価値の変動の程度が違います。資産価値が増大・維持されやすいのは、人口集積度合いの高い地域の物件や成長分野に関わっている物件です。

 

不動産の評価額は世の中の情勢によって変化しますが、長期ビジョンのしっかりした都心・商業地の不動産は、資産価値が変動しにくい資産といえます。

 

家賃収入の先行きも、不動産の立地や用途により違ってきます。一般に不動産の賃料は、築年数が古いほど下降傾向が強まります。場合によっては、相場よりも安価な設定にしなければならないケースもあるでしょう。

 

これに対し、希少性の高い都心のオフィスビルなどは、築年数よりも規模や立地が重視される傾向にあり、高い賃料を取れている物件もあります。

 

不動産購入において投資用ローンを組む場合、インフレに強い「固定金利型」のローンが有利です。返済期間中の金利が変わらず、変動金利と比較して返済総額(元金+支払利息)を抑えられます。

 

なお、不動産投資独自のリスクとして、空室リスク(所有しているマンション等が空室になり賃料が入らない状態になるリスク)、予期せぬ設備の修繕コストの発生、家賃滞納リスク等がありますので十分な注意が必要です。

 

 

小松 英二

CFP® FP事務所・ゴールデンエイジ総研

代表・経済アナリスト

 

本メディア並びに本メディアの記事は、投資を促すことや、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、株式会社幻冬舎ゴールドオンライン、幻冬舎グループは、本メディアの情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

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