(※写真はイメージです/PIXTA)

老後生活の基盤となる公的年金。日本人であれば国民年金は強制加入のため、原則65歳から年金が受け取れます。しかし、この日本には「無年金」という人も。もし親が無年金の場合、子に与える影響とは……。本記事では、長岡FP事務所代表の長岡理知FPが、Tさんの事例とともに、無年金の親とその子に与える影響ついて解説します。

今後「無年金」となりかねない人の存在

会社員や公務員であれば厚生年金に加入しているため、無年金となることはありません。しかし国民年金の被保険者のうち、第一号被保険者(厚生年金に加入していない自営業者など)には「未納」の人が少なくありません。厚生労働省が2023年6月23日に報道関係者向けにリリースした資料によると、過去24ヵ月間にわたり年金保険料を滞納している「未納者」は89万人います。

 

現在の年金制度では120ヵ月以上年金保険料を納めれば、老齢年金を受給できる権利が得られます。しかし未納を続けていくとこの120ヵ月すら難しくなり、老後は無年金者となってしまいます。

 

年金保険料を払わない「理由」はどんなものでしょうか。厚生労働省の調査によると、未納の理由で最も多いものは「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」という理由です。これが6割を超えます。しかし免除制度や猶予制度があるにもかかわらず無断で未納を続けているということでもあり、必ずしも経済的な理由だけではないということも想像できます。

 

「国民年金をあてにしていない」という理由が1割程度あることも考慮すると、年金制度への無理解や誤解もあるのかもしれません。

 

年金保険料を滞納することで遺族年金や障害年金も受け取れなくなってしまう危険があります。老後でなくとも年金を受け取れる可能性があることを知らないなど、知識不足で保険料を納めないのは非常に危険です。国民年金の未納者が重い障害状態に陥ってしまうと、支える家族には甚大な影響があります。

無年金・低年金の頼みの綱は「生活保護」だが…

無年金、あるいは満額の年金額を受け取れていない「低年金」の状態に陥ったら、老後をどのように生きていくことになるでしょうか。

 

ひとつの方法として生活保護制度を利用することが考えられます。2018年の厚生労働省の資料によると生活保護受給世帯数のうち、65歳以上の高齢者が占める割合は54.1%です。この割合は年々上昇しています。

 

しかし日本の生活保護制度では簡単に受給が認められるものではありません。生活保護法第4条第2項に「扶養義務者の扶養およびほかの法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と書かれてあります。この「扶養は保護に優先する」という決まりのため、生活保護の前に親族による扶養を優先することになっているのです。

 

また、民法では次のように定められています。

 

民法752条「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」

 

民法877条1項「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」

 

民法877条2項「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合の外、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」

 

そのため生活保護制度には「扶養照会」という仕組みがあり、3親等までの親族に対して仕送りなどの援助ができるかを確認しています。実子が高額所得者であるにも関わらず親が生活保護を受給していたことが発覚し、大きな議論を生んだことも10年ほど前にありました。

 

この仕組みのために生活保護を受けられないケースは一定数います。また扶養照会に抵抗があり生活保護を申請せず餓死する危険のある世帯は、困窮世帯の7割~8割に上るという研究もあります。

 

もし、自分の両親が無年金で、生活保護も受給できないとなると、やはりTさんのように子供の生活は危機的状況に追い込まれるでしょう。

 

 

 

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