(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。「アジアリサーチセンター」のレポートを基に、7月のアジア・マーケットを振り返ります。

中国<党中央政治局会議>

⇒追加政策パッケージの見込み薄。

 

◆需要不足の認識はあるが…

習近平総書記は7月24日に中央政治局会議を開催し、経済の現状認識と年後半の景気対策に関する認識を表明した。4-6月期に循環的な景気モメンタムが低下した主因は需要不足と明確に認識しているが、その背景への言及はなかった。背景を正確に認識しなければ、政策対応がなされるにしても的外れになる可能性がある。また、長期のファンダメンタルズは良好だとし、足元の景気悪化は一時的な現象と楽観的な認識を示した。当社では、3つの構造的な背景によって(図表「不動産市況悪化の背景」参照)、不動産市況は長期的な下落局面に入っており、消費センチメントを悪化させることで、需要不足をもたらしていると判断している。

 

 

 

◆追加的な金融緩和が主軸になる見込み

積極的な財政政策、穏健な金融政策に関する表現には変化がなかった。政策余地を活用するという表現からは、政策の大きな枠組みの変更は行わないという意思表示と解釈できるため、財政政策に関して、一般会計予算でも地方専項債でも補正予算による増額の可能性は小さいと判断する。一方、反循環的な調整の強化に言及していることから、金融政策において、追加的な政策金利・預金準備率の引き下げが行われる可能性は大きいと判断する。

 

◆不動産政策も市況悪化の主因に言及せず

不動産政策に関して、需給関係に重大な変化が生じたとの認識を示したものの、問題が需要面にあるのか供給面にあるのか、また何が問題なのか明示しなかった。今回の中央政治局会議では、「住宅は住むところであり、投機の対象ではない」という文言は削除されたが、そのこと自体が住宅市況の反転上昇を意味するわけではない。習近平総書記の重要な理念の一つに「共同富裕」があり、貧富の格差を縮小することを目指している。中間所得者層を拡大することが王道ではあるが、分配機能を強化して富裕者から貧困者に富を移転する方法もある。この視点では、住宅価格の上昇は共同富裕の理念に反するものの、住宅価格の下落は特別に問題視されないだろう。不動産市況の悪化は地方政府の債務問題を深刻化させることから、地方政府のデフォルトなど債務問題を顕在化させない姿勢を明確にしている。方法次第であるが、一般論として銀行システム安定の視点ではポジティブだといえる。

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