海外PEファンドも資産防衛の「有効な選択肢」
こうした実物資産・知的財産などと同様に、海外プライベート・エクイティ(PE)・ファンドも、資産防衛の有効な選択肢となるかもしれない。
経済・産業・社会の停滞感が強まっている日本では、長期的に少子高齢化が進み、平均賃金は過去30年間上がっていない。収入・所得が増えないなかで、インフレが広範に進行しており、個人の力ではどうしようもない状況になりつつある。
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が4月に公表した2070年までの日本の将来人口推計によると、2020年に1億2,615万人だった総人口は、2056年に1億人を割り、2070年に現状から3割減の8,700万人に落ち込む見通しだ。
総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は2020年の28.6%から2070年には38.7%へ上昇する見込み。さらに50年後の合計特殊出生率は1.36と、17年の前回推計(1.44)から低下すると予想されている。
米実業家イーロン・マスク氏は2022年、「当たり前のことだけど、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」とツイッターに投稿し警鐘を鳴らした。
日本で労働者・消費者人口が減少する流れが変わらなければ、日本に住んでいる限り、国内の潮流に逆らうことは難しいだろう。長期展望を踏まえ、最悪の事態を想定して、平時に準備を怠らなければ、いざという時の生活防衛へとつながる。
米国では、2000年代のITバブル崩壊、リーマンショックなど、最近では、新型コロナ・ウイルス禍、米銀シリコンバレーバンク、シグネチャーバンク、ファースト・リパブリック・バンクの相次ぐ破たんなど、大きな混乱が発生してきた。しかし混乱を乗り越え、危機の後には、成長力の高い新たな産業・技術革新が次々と生まれている。
代表格はGAFAMと呼ばれるIT大手5社(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)や電気自動車テスラなどで、世界時価総額ランキング上位に成長している。足元ではオープン人工知能(AI)を活用したチャットGTPなども台頭している。
海外の未上場企業へ投資することは、日本の長期停滞という危機を回避するだけでなく、新興企業が大企業へと変貌する機会を捉えて、明るい未来への種をまくことにもつながるだろう。
髙橋 文行
池田 祐美
くにうみAI証券株式会社
オルタナティブ・インベストメントプロダクト部
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