カブトムシのタンパク質は「牛、豚、鶏の3倍以上」
2022年4月から大学と連携し、カブトムシを昆虫食に活用する研究がスタートしました。
国連が発表した「世界人口推計2022年版」によると、世界人口は2022年に80億人に到達。2030年に約85億人、2050年には97億人に増える見込みです。急速な人口増加によって、これまでの畜産に依存したタンパク質の供給量では人類の生存を支えられなくなり、2025年~2030年にはその需要と供給が逆転する「タンパク質危機」と言われる食料問題が発生すると予測されています。
そこで、今注目が集まっているのが昆虫食です。カブトムシのタンパク質は畜産物の実に3倍以上。牛、豚、鶏の100gあたりのタンパク質含有量は約21~23gであるところ、カブトムシは100gあたり約70gとその差は歴然です。さらに、飼育に必要な餌、水の量、CO2排出量のいずれも畜産の10分の1以下で、環境負荷が小さいことも大きな利点です。
すでに商品化が進んでいる昆虫食として代表的なのが、「コオロギせんべい」などで有名なコオロギです。そのコオロギと比較しても、カブトムシは温度が低くても飼育可能、群れる特性があり共食いしない、量産コストが非常に安いなどの優位点があります。
2013年に国連食糧農業機関(FAO)が発表した「食品及び飼料における昆虫類の役割に注目する報告書」によると全世界で1,990種類を超える昆虫類が食されている中、最も消費量が多いのはカブトムシなどを含む甲虫類であるとされています。
同社は、カブトムシを大量生産することで廃棄物を処理し、成長したカブトムシを食用にすることで、この先世界が直面するといわれている食料危機の解決を目指しています。
さらに、同社提供データを大学が調査したところ、カブトムシは「脱炭素」に効果的であることがわかってきました。カブトムシに与える前の廃棄物の状態と、カブトムシが食べた後の状態を調べたところ、窒素含有量が増え、温暖化に影響がある炭素含有量は減ることが明らかになっています。
JR東日本グループなどの大手企業と次々に業務提携
TOMUSHIは、2022年5月、JAグループのイノベーションプログラム『JAアクセラレーター第4期』に採択され、JAグループとのつながりを生かしながら、大量の有機廃棄物処理に困る全国の農家との協業体制を加速させています。
中でも、菌床でシイタケを栽培する生産者にとって、廃菌床の処分はこれまで大きな課題となっていました。大量の有機廃棄物の処理には、バイオマス発電や堆肥センターをつくる方法が一般的ですが、バイオマス発電は数億円単位、堆肥センターは最低2,000万円程度かかります。シイタケ農家では生産者が費用を負担し、近隣の畑作農家らに肥料として引き取ってもらうなどしていますが、近年は高齢化などの影響で引き取り先が減少し、廃菌床をどう活用するかは地域課題の一つとなっています。
対して、カブトムシによる廃棄物処理プラント導入にかかる初期費用は、規模にはよるものの500万円~2,000万円程度。生産者は、同社の独自技術とノウハウによって廃棄物処理をしながらカブトムシを育て、それを同社が買い取ることで、初期費用を2年という短期間で回収できるビジネスモデルとなっていることから、多くの農家が注目しています。
2019年、秋田県能代市のシイタケ生産企業と協力関係を結び、地域資源の活用に向けた実証実験を開始。2020年には、秋田県横手市のシイタケ生産会社と協力関係に。2021年には徳島県内の上場企業・大規模経営のきのこ農家の協力を得て、大規模プラント構築に向けた実証実験をスタートさせました。
さらに、2022年から業務提携を行っている宮城県の福祉事業とシイタケ生産事業を行う企業とは、障害者の就労支援事業につなげる取り組みも進めています。今では全国30ヵ所にプラントを設置し、カブトムシによる廃棄物処理が行われています。
廃棄物の処理は、農業に限らずあらゆる産業において大きな課題となっています。食品ロスを再利用という形で解決したいと考える大手小売店や、産業廃棄物のアップサイクルをしたいと考える大手企業との提携が数多く進められています。