(※写真はイメージです/PIXTA)

児井正臣氏の著書『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』より一部を抜粋・再編集し、「自然災害の危険地域」に住む人々が「他の地域に移住すべきワケ」についてみていきます。

「放置すればどんな問題が発生するのか」6つの説明

このような考えに賛同いただける経済人、学識者、官僚、議員、マスコミなどによる構想の精緻化と、そのPR活動がまず必要だと思う。なぜこのようなことをしなければならないのか、何もせずにこのまま放置しておくとどんな問題が発生するのかということを、国民に知ってもらわなければならない。

 

新聞、雑誌、テレビなどのメディアを総動員し、また全国各地での説明会を実施し、以下のようなことを最小限理解してもらう。これを推進する勢力に政権をとってほしいと思う。

 

以下のような説明が必要と考えるが(1)~(3)は主として現在危険地帯と思われる人々向けである。しかしこの問題は日本人全体で考えなければならないことなので(4)~(6)を全国民に理解してもらう必要がある。

 

(1)日本は世界のなかでも地震や台風など自然災害の多い国であり、危険地域に多くの人が住んでいる

 

まず我が国は自然災害に対してきわめて脆弱なことを国民に知ってもらう必要がある。これには国際比較を含めた客観的なデータを使うことで納得が得られるだろう。

 

そして対症療法的ないままでのやり方がもはや限界に近いことを併せて納得してもらわなければならない。もちろん今まで何も手を打ってこなかったわけではなかったが、なかなか計画通りに進まず時間がかかっていた。

 

ダム建設や遊水地、堤防増強などの河川改修など、予算の制約もあるが、このような事業をするときに必ず反対意見があるからだ。なかには個人の利害関係での反対もあるが、その多くは効果に対する疑問であったと思う。群馬県の八ツ場ダムは計画から70年かけてやっと完成することになったが、熊本県の川辺川ダムなどは、50年たち役場などは移転しているのにまだ本体工事が始まっていない。

 

このような例は枚挙に暇がなく、これによる国費の無駄使いが実に多かったが、そんなことで時間だけがいたずらに過ぎているのが現実だ。その間も危険が去らない状況が続いているのである。

 

(2)いったん自然災害に遭って被災すると、もとの生活には戻れない

 

地震や台風で被災した方々の苦しみはテレビや新聞などで知ることができるが、そこで語られているのはほんの一部の人であり、実際ははるかに多くの人が苦しんでいる。命が大切ということは当然であるが、命さえ助かれば良いということでは決してない。

 

財産を失うだけでなく、まずもとの生活には戻れない。家のローンが残っているケースなどさまざまあるが、家族の写真や長年かけて収集したもの、気に入った家具や食器、ペットなども失うかも知れない。そして失ったものは、まず戻ってこないだろう。

 

経済的な損失だけでなく、心身的な喪失が残ることだろう。さらにこれも実際に起きていることだが、家の再建や修復をしたくても、災害が同時多発的に発生したときには、業者の不足などから順番待ちということになることが多い。長期間、場合によっては数年間避難生活を続けなければならないという話を良く聞く。

 

(3)危険地域に住んでいる人の解決策はそこから移住することしかない

 

上記のような現実から、危険に遭わないための根本的な解決方法は、その場所から離れる、つまり逃げるしかない。移転先は、危険の少ない場所を国が用意する。

 

大半は既存の市街地や住宅街の中にあり生活の利便性が今よりも大幅に損なわれることはないはずである。今住んでいる家は、移転に必要な費用などを考慮し国が妥当な価格で買い取る。

 

移転した跡地は緑地や湿原など自然に戻す。そのための必要な資金も国が出す。

次ページ「負のスパイラル」を抜け、停滞した経済は成長軌道に

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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