(※写真はイメージです/PIXTA)

共産党独裁では持続成長できず、挙げ句の果てには膨張主義に走ります。戦争こそはロシアのウクライナ侵略に見られるとおり、最大の環境破壊をもたらします。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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習近平の打開策はただひとつ残されている

■成長が行き詰まった中国が走る膨張主義

 

中国の最高実力者だった鄧小平は社会主義市場経済と称し、経済活動は市場原理で行く一方で、政治権力でカネ(金融)、モノ・サービス(生産)と土地を支配する方式を採用しました。そして外国企業の投資を呼び込みます。党がカネをつくって配分し、土地に投資する。これが改革開放路線です。

 

それによって、高度成長を実現させたのですが、限られた数の権力者が特権をもつのですから、汚職腐敗が蔓延します。権力者は不当に得たカネを外に持ち出します。これが巨額に上る資本逃避です。

 

投資されるカネは資本と呼ばれますが、蓄積された資本が外部に流出するのです。しかも土地の上に建設される固定資本はインフラ、工場、さらに住宅などの不動産ですが、開発がすすめばいずれも飽和状態になります。

 

インフラ投資は2010年代半ばには一巡し、生産のほうも輸出頼みで不安定です。最後の投資先は住宅ですが、もはやこれも供給過剰になっています。2022年には売れなくて工事が中断された巨大な高層マンション群が野ざらしになり、完成前から住宅ローン返済を迫られている多くの人々がデベロッパーや金融機関に抗議し、ローン支払いを拒んでいます。

 

住宅頼みの経済成長は不可能となり、2022年の成長率は2パーセント台に落ち込む見通しです。若者の失業率は2022年7月で19.9パーセントに上昇しました。共産党主導の成長モデルは行き詰まったのです。

 

独裁者習近平党総書記・国家主席にとって、打開策はただひとつ、半導体王国の台湾併合です。

 

習近平は2015年に「中国製造2025」を打ち出し、ハイテク国産化を新しい成長の基軸にする野心をもっていましたが、巨額の国家補助を不正流用する党や国有企業幹部が多いうえに、米国のハイテク対中輸出規制のために頓挫しかけています。そこで、台湾に目を付けたのです。

 

共産党独裁では持続成長できず、挙げ句の果てには粗暴極まりない膨張主義に走ります。戦争こそはロシアのウクライナ侵略に見られるとおり、最大の環境破壊をもたらします。共産党独裁国家はあらゆる面で破壊者なのです。

 

マルクス主義では、私的な利益追求は許されず、共産党が利益を公平に分配する。これは建前にすぎません。理論としては理想的でも、現実的ではありません。私的な利益追求が許されなくなれば、個人は努力をやめてしまいます。投資を考え、利潤を追求する意欲を失います。

 

成長が意識されなくなるわけです。それで、社会が安定して回っていけば問題はありません。しかし、そうはいきません。

 

少子高齢化が急速にすすむなかで、高齢者の数は確実に増えています。働くことが難しくなる高齢者が安心して暮らしていくためには、やはりカネが必要になります。少子化といっても子供の数がゼロになるわけではないので、子供たちが安心して生活して成長していくためにも、カネが必要になります。マルクス主義では、それを保障するのは共産党の役割となりますが、ソ連は見事に失敗しました。

 

繰り返しますが、高齢者や子供たちの生活と未来を守り、働く世代も将来に希望をもてるようにするためには、国全体のカネが増えていくことが大切です。それが、経済成長です。

 

資本主義の経済を肯定する「ケインズ経済学」を確立したジョン・メイナード・ケインズは、雇用を確保して完全雇用を達成するのが大事だと言っています。そのうえで、経済は絶えずプラスになっていかなければいけない、と説いています。経済成長は、人々が幸福になるためには必要不可欠な要素なのです。

 

だからこそ、経済成長を追求し実現することは、政治家や官僚、経営者の義務だと私は思います。「経済成長は要らない」という意見は、その義務の放棄でしかありません。

 

米国をはじめ海外諸国では、政治家は経済成長を最大の目標にしています。米国のドナルド・トランプ前大統領は、「アメリカ・ファースト」と盛んに言っていました。あれは、「米国の経済成長を優先する」という意味です。

 

経済成長を達成できなければ、リーダーとして失格です。トランプが大統領選で敗れたのは、国民の大多数が納得するだけの経済成長を実現できなかったことが大きな要因です。

 

同じように海外では、経済成長を実現できないリーダーは評価されません。経済成長を二の次にしていてもリーダーでいられるのは、日本だけだと言ってもいいかもしれません。

 

それは日本の国民が、経済成長の重要性を理解していないからです。デフレ慣れしてしまって、経済成長を軽視してしまっているからです。それこそが、日本の危ういところだと思います。

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本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本経済は再生できるか

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田村 秀男

ワニブックス

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