Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft、5社の頭文字をとって「GAFAM」と呼ばれる世界的ビックテック企業。これら企業が銀行業務や決済、セキュリティに関わる分野にまで台頭してきたら、どうなるのでしょうか。また、それらが日本で開業されるとしたら──専門家が詳しく解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
GAFAM銀行は静かに生活の一部に。初開業は「米国ではなく日本」? (※写真はイメージです/PIXTA)

「銀行に行きたい?」サービスとしての金融

「金融サービス」というと、ファッションや飲食など他サービス部門とは異なる位置づけにある、と何となく感じられるのではないでしょうか。「美しく着飾りたい」、「美味しいものが食べたい」など、欲求から生まれる積極的な消費行動に帰属するのではなく、「家を買うからお金を借りなければならない」、「給与が振り込まれるから銀行口座を開設しなければならない」など、受動的ニーズから求められるのが金融サービスであるためです。

 

医療サービスにおいて、「病院に行きたい」と思って行くのではないのと同じように、「銀行に行きたい」と考えて支店を訪ねる人はいないでしょう。金融サービスに費やすエネルギーや時間は、極力少なくしたいというのが多くの人に共通する考えだと思います。実際に、過去10年で来店客数が3割以上減少している銀行が少なくないのが実情です。デジタルバンキングなどのスマホ完結型取引により、わざわざ銀行に足を運んで忍耐強く待ち時間を過ごす人は、今後も減り続けるでしょう。

 

BaaS(Banking as a Service)という言葉を聞かれたことがあるかもしれません。銀行が提供しているサービスや機能が、API (Application Programming Interface, ソフトウエアなどの接続を行うことで銀行と事業者間の情報などのやり取りを円滑化するしくみ)を利用して「クラウドサービス」として提供されることを言います。

 

良質な金融サービスが受けられるのであれば、銀行のブランドなどへのこだわりは特にない人がほとんどだと思います。利便性やコストなどで魅力があれば、銀行ではない事業者から金融サービスを受けることも選択肢に入るのではないでしょうか?

 

GAFAMが銀行をつくるメリット

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

BaaSの本質をふまえると、GAFAM(テクノロジーを武器にグローバルに展開するGoogle(社名はアルファベット)、Amazon、Facebook(社名はメタ)、Apple、Microsoftの5社の頭文字を取った呼び名)が銀行を経営するメリットが見えてきます。GAFAMは多くのユーザーをその経済圏に抱えるプラットフォーマーであり、多くの人にとって日常生活のなかでもっとも接点を有する企業とも言えます。

 

ユーザーがサービスを受ける延長線上で金融ニーズが発生することは多々ありますが、これまではGoogle Payなどの「決済手段」に留まることが多かったと思います。ですが、そこにその他の金融サービスが加われば、GAFAMの金融サービスをブランドに惹かれて受けるのではなく、利便性を求めて「無意識に利用してしまう」ケースが今後増えてくるのではないでしょうか。

 

その可能性については、楽天が参考になります。Eコマースにはじまり、通信事業まで拡大した楽天経済圏には、銀行・証券・クレジットカードを網羅した金融サービスも存在しています。「楽天銀行」は、事業不振にあえいでいたイーバンク銀行を買収して誕生しました。そして現在、多くの方がご存じのように、瞬く間に伝統的な地銀大手と肩を並べる事業規模にまで発展しています。

 

下記の図表が裏付けです。2021年度の当期利益ランキングでは、100行以上ある地域銀行のトップ10に迫る勢いとなっています。多くの銀行は収益の半分以上が「法人取引」であるのが一般的ですが、「個人取引」主体の楽天銀行が他行を上回る業績を稼ぎ出せるのは、巨大なエコシステムが後背地として構えているからです。ちなみに、楽天証券も投資信託販売で、既存の大手証券会社を抜き、トップに立っています。