(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症を発症するということは「法的な死」を意味することをご存じですか? 認知症が進むと、重要な法律行為ができなくなるからです。認知症を患うと「財産凍結」により家族でも預金が引き出せなくなります。さらに、実家も売れない、贈与もできないという事態に陥ります。では、どのような事前対策ができるでしょうか? 税理士向けに相続の講演なども行う税理士・牧口晴一氏の著書「日本一シンプルな相続対策」(ワニブックス)より一部抜粋し、分かりやすく解説します。

「家族信託」は契約だが「遺言書」は契約ではなく希望

(5)「法定相続分」と異なる分割も自由です!

「法定相続分」については、誤解が多いので注意しておきます。

 

「法定相続分」とは、「この法律の通り分けなさい」というものではありません。

 

遺言で自由に分けられます。特定の相続人には特に大目に…ばかりでなく、お世話になった相続人でない人、たとえば介護してくれた嫁などへ「遺贈する」と書けます。

 

ただし、特定の相続人やその他の人にあまりに多くを渡すと、他の相続人の「遺留分」を侵害することがあります。兄弟姉妹以外の相続人には、通常は法定相続分の半分の「遺留分」がありますから、相続人から遺留分を請求されたら、その分は渡さなければなりません。

 

ということは、請求されなければ渡さなくてもかまいません。前の見本のように「その他の財産はすべて妻へ」と書いても、通常、子どもたちは遺留分の請求をしてこないものです。あくまで我が家のケースでの想像ですが、私も死んでみないとわからないものです。

 

遺言書がなければ、相続人で話し合い、自由に分けられます。さらには、遺言書通りでなくとも、相続人全員の同意で、遺言書と違う分け方も可能です。

 

「家族信託」は契約ですから、親子が納得する必要があります。しかし「遺言書」は、契約ではありません。親からの一方的な財産処分などの希望です。だから、誰にも見せる必要はありません。もちろん、見せてもよいですが…。

 

では「法定相続分」はなぜあるのかと言えば、上記の遺言書や相続人全員の話し合いで合意が得られないときは、家庭裁判所へ〝調停〟の申し立てとなります。

 

その際に、最後の最後に裁判官がエイヤーと〝審判〟を下すときに使う相続割合が「法定相続分」なのです。

 

家族間のもめ事はいわば痴話げんかで、昔のことや愛憎がからみあって、そもそも公正な分け方ができません。それでも放置しておくと、国民の生活が穏やかになりません。仕方なく、家庭裁判所が、エイヤーと、決めてしまわなければ収まらないのです。

 

牧口 晴一

税理士

行政書士

法務大臣認証事業承継ADR調停補佐人

※ 本連載は、牧口 晴一氏の著書『日本一シンプルな相続対策』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再構成したものです

日本一シンプルな相続対策

日本一シンプルな相続対策

牧口 晴一

ワニブックス

普通の家庭にある日、突然に悲劇が訪れる! 認知症という「法的な死」があるのをご存じですか? 認知症になると「財産凍結」で家族でも預金は引き出せず、実家も売れない、贈与もできない……やがて遺言書も書けなくなる。 …

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