(※写真はイメージです/PIXTA)

濱田佳代子氏、後藤英之氏、石黒仁氏の共著『リーダーのための動機づけ面接 実践編』より一部を抜粋・再編集し、日本の労働現場におけるマネージャー(上司)の役割についてみていきます。

全体最適解は上司(マネジャー)の能力開発

全体最適解は「上司(マネジャー)の能力開発である」と言われると、拍子抜けされるかもしれません。しかし、企業内でキャリアコンサルタントによる側面支援の恩恵が受けられるのは従業員1000人以上の企業や、ジョブカード制度を活用する熱心な中小企業に属する一部の労働者に限られると思われます。

 

キャリアコンサルタントの役割は、「職業を中心としながらも個人の生きがい、働きがいまで含めたキャリア形成を支援すること」です。いわゆる心のマネジメントなのです。

 

上司(マネジャー)が、サーバント・リーダーシップ精神(姿勢)をもち、動機づけ面接を活用した対話で成長支援ができるようになることが、現実的な展望といえるのではないでしょうか。

 

同時に、リーダー自身の自己概念の発達も不可欠です。

 

田中堅一郎氏は『自己概念から考えるリーダーシップ―リーダーの多面的自己概念と発達に関する心理学的研究―』で自己と他者といった単純な自己概念しかもたないリーダーは、権限の大きさと執行責任の重さが増すにつれて、機能不全をもたらすに違いないと述べています。

 

機能不全に陥らないためには、「自分の仕事は自分でする」から「他者に自分の仕事を任せる」へと、自己概念の再構成ができることが必要であり、先行研究からも特に、課長クラスから部長クラスへ移行する際にリーダーとして最も大きな変化が求められると述べています。

 

カッツ理論にあてはめ推論すれば、部長クラスはリーダー役割の3要素のうちテクニカルスキルやヒューマンスキルよりも、コンセプチュアルスキルへとその重点が移る階層であり、当事者自身が自己概念の発達的変容の必要性を痛感するタイミングということかもしれません。

 

結論としての全体最適解は、より上位のリーダーが、部下指導を行うマネジャー(リーダー)に対し1対1でのスーパービジョン的な対話を通じて成長支援マネジメントを行うといった、階層的システムを構築することといえるでしょう。

 

その際にサーバント・リーダーシップ精神(姿勢)と、動機づけ面接の対話スタイルを用いる力があれば、個人と組織の共生につながる創造的対話ができるはずです。

 

さらに、社内では扱えない個人の抱える問題については、適切な支援が受けられるようキャリアコンサルタントや産業医・公認心理師といった専門職と、社内外でのネットワークを形成し日頃から連携しておくことが大切でしょう。

 

 

濱田 佳代子

(株)ライフジャパン 研修グループ専任カウンセラー

2級キャリアコンサルティング技能士、シニア産業カウンセラー、看護師、公認心理師

非営利活動法人キャリアカウンセリング協会 認定スーパーバイザー

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『リーダーのための動機づけ面接 実践編』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

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