(※写真はイメージです/PIXTA)

ネット上に悪質な書き込みをされた場合、サイト管理者に対し情報開示請求をおこなうことによって、投稿者を特定できます。では投稿した端末が個人のものではなく会社の端末だとしても、特定は可能なのでしょうか。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、投稿者特定について江頭啓介弁護士に解説していただきました。

 

この投稿の内容は、アカウント名「Aチャンネル」に対する誹謗中傷です。

 

しかしながら、「Aチャンネル」は「A」の公式SNSですので、そのアカウント保有者は「A」であることは誰もが知っています。つまり「ゴミアイドルAチャンネルはイッテヨシ!!」の投稿はアカウント保有者である「A」に向けられたものと解釈できます。

 

他方で、「ゴミネコネコはイッテヨシ!!」と投稿したとしても「ネコネコ」のアカウント保有者が「A」であることは誰も知りません。したがって、「ネコネコ」に対する誹謗中傷は、実社会の「A」には届きませんので「A」に向けられたものではないと解釈されます。

 

つまり、アカウントがいくら口撃されようが、実社会のアカウント保有者に届かなければどうと言うことはありません。保有者の名誉はへっちゃらなのです。

 

では、ハンドルネームと登録地域しか記載されていない今回の事例では、相談者かなきさんの誹謗中傷は実社会の女性に届かないのではないか、というとそうではありません。「アカウント=実社会の人物」という関係は、公開されている情報や周辺事情から総合的に判断されてしまいます。

 

例えば今回の事例のようなマッチングサイトでは、顔写真や容姿、職種、年収、趣味など個人を特定できる情報が多く紹介されております。

 

実際、投稿を見た第三者が女性を襲撃できている点からも、かなきさんの投稿が実社会の女性に向けられたものと認められる可能性は十分あります。

 

従いまして、女性の個人情報が書かれていないかなきさんの投稿について、開示請求が認められる可能性があります。

 

②回線契約者以外の投稿について

次に②について見ていきましょう。

 

結論として、会社名義の回線を利用した投稿の犯人が特定できるかはケースバイケースです。

 

会社の回線を使用して投稿された場合、開示請求により開示される氏名住所は、回線契約者である会社の情報が出てきます。もちろん、会社の回線は複数人の社員が使用しておりますので、その段階では誰が犯人かわかりません。そこで、会社に対しては、該当社員の調査を求めていくことになります。

 

この場合、社内PCのローカルIPから特定できる場合や、社内の聞き取り調査等及び書き込み内容から犯人を特定できることもあります。

 

該当社員が特定できない場合は、何もできないかというと、そんなことはありません。誹謗中傷は不法行為に当たりますので、従業員を雇用している会社に対して使用者責任を問うことが考えられます(認められるかはケースバイケースです)。

 

いかがでしょうか。匿名や他人契約の回線であっても開示請求により個人が特定される可能性は十分あるのがお分かり頂けたと思います。

 

ただ、開示されなければいいというわけではありません。匿名投稿であっても必ず生身の被害者(閲覧者)がいることを強く意識すべきかと存じます。

 

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