応募数4倍増に。「運動や対面で健康増進」中小も健康SDGsで採用力強化へ

応募数4倍増に。「運動や対面で健康増進」中小も健康SDGsで採用力強化へ
ストレッチやヨガで従業員の心身の疲労を軽減する企業も。

企業が従業員の健康を気遣い、デジタルデバイスを利用して体調を管理させたり、手厚い福利厚生を設けたりする事例が相次いでいる。少子・高齢化を背景とした人手不足が深刻となっていることや新型コロナウイルスの感染拡大などが背景にある。国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)では、「すべての人に健康と福祉を(目標3)」、「働きがいも経済成長も(目標8)」を掲げている。企業は自社のブランディングの一環としても従業員の健康サポートを充実し、目標を達成しようとしている。この連載では、全国で法人向けの出張マッサージサービスを手掛ける株式会社イーヤス(名古屋市)の遠藤基平社長が、その経験をもとに「健康SDGs」を実践する企業を紹介し、その意義を具体的に解説する。

IT企業はヨガで8割の人が「ストレス発散できた」

深い呼吸と全身を使ってポーズをとる「ヨガ」を取り入れる企業もあります。体の奥のインナーマッスルを強化するので、歪んだ背骨や骨盤などの骨格を筋肉で支えられるようになります。腹式呼吸や瞑想を取り入れることで、自律神経のバランスが整い、リラックス効果やストレス解消にも役立つとされています。

 

都内のIT関連企業であるL社は19年から月2回、朝の始業前1時間で、ヨガインストラクターに会社に来てもらい、社内のエントランススペースでヨガを実施しています。オフィスでは毎回20名程度の参加者ですが、同時に在宅勤務の方にもライブでオンライン配信しているとのことで参加者が増えているそうです。

 

同社の社内アンケートでは、「体を動かしたらストレスが発散されましたか」という質問には約8割の人が「発散された」と回答。「ヨガの後は、仕事の生産性があがりましたか」という質問にも約8割が上がったと回答しました。

社内ジムの設置で採用力強化、中小企業でも応募者数が4倍に

コロナ禍を受けて悪化した雇用環境が徐々に改善し、日本企業の採用担当者の間では人手不足の問題が再び浮上しつつあります。労働人口の減少の中で、特に中小企業では優秀な人材の採用が難しくなっています。これは、求職者(仕事を探している人)1人あたり何件の求人があるかを示す求人倍率をみるとわかります。

 

リクルートワークス研究所の新卒者を対象とした求人倍率の調査によると、従業員規模300人未満の企業は、コロナ禍の20年以降でも3~8倍程度で推移しており、1倍に達していない5000人以上の大企業とは大きな格差があります。これは、中小企業での採用がいかに厳しいかを示しているといえるでしょう。

 

こうした状況を健康SDGsの実践で改善した企業があります。社員30名の映像制作業C社は20年から、社員の健康維持増進の目的で社内にジムスペースを設置しました。ウエイトトレーニング用のマシンや有酸素運動をするためのエアロバイクを導入。月に2回トレーナーが出張し、希望者はアドバイスを受けられます。

 

通常、外部のジムに入会すると利用料や通うための時間が必要ですが、社内ジムなら就業時間以外はいつでも気軽に利用できます。このため同社では全社員の約7割が利用しています。ジム内で気軽に参加できるストレッチ教室などを実施することも、利用率の高さに繋がっているのかもしれません。ジム設置後には、体調不良で休む人の数が激減したといいます。

 

ジムの設置は中小企業であるC社の採用力の強化にもつながりました。「ジムがあるので関心を持って応募した」という声もあり、社内ジム設置の翌年は求人への応募者数が前の年の実績比で約4倍に増加しました。22年の売上高予想は導入前から2倍に膨らんでいるそうで、経営面でも大きな効果が出てきているようです。
 

 

(編集協力 P&Rコンサルティング)
 

 

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