(画像はイメージです/PIXTA)

日本の中小企業の倒産件数は2016年以降、毎年4万件を超えています。中小企業が時代の変化に適応し存続していくには、大企業の下請けから脱却し、主体的に地域創生に介入していくことが大切です。少子高齢化に人口流出…。地方が抱える課題にこそビジネスチャンスが埋もれていると指摘する、「宮崎中小企業大賞」を受賞した島原俊英氏が、著書でポイントを解説します。

中小企業の多くが深刻な人手不足・後継者不足

働き手の減少は地域のもっていたお金を稼ぐ力や付加価値の創造力が失われることを意味し、地方経済には大きな打撃となります。若者の県外流出は県下の中小企業に深刻な人手不足、後継者不足という問題を突きつけています。

 

例えば私の住む宮崎県は高校生の県内就職率が60.5%で全国ワースト3位です。15~24歳の県外流出が多く、その理由としては農林水産業や製造業などの第一次産業、第二次産業の比率が高く、若者が魅力を感じる職場が少ないことが挙げられます。

 

一方、素直で真面目という県民性が好感をもたれ、大都市圏や他県から労働力として期待されているという面もあるようです。また、宮崎県による中小企業労働事情実態調査によれば「経営上の障害」として挙げられたものの理由の第1位が「人材不足(質の不足)」で57.1%に上っていました。第2位が「労働力不足(量の不足)」で43.3%、これも高い数字です。第3位が「原材料・仕入品の高騰」で30.3%でした。

 

宮崎県の雇用労働政策課が2017年に県内640社を対象に行ったアンケート調査では人手不足について「かなり不足」「やや不足」と答えた企業は全体の70%を超えていました。人材や労働力の不足は地方中小企業にとって特に大きな問題となっているのです。

 

宮崎県では後継者不足を嘆く声も多く、県内企業2,101社を調べた民間のアンケート調査では、実に半数を超える1,120社が「後継者不在」と答えています(帝国データバンク2020年調査)。

地方自治体の約半数が、消滅可能性都市に該当

増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる日本創成会議が2014年5月に公表した消滅可能性都市に関する調査結果も、地方における若者世代の減少がいかに深刻な問題かを示すものでした。

 

消滅可能性都市とは同会議が独自に定義したもので「2010年から2040年にかけて20~39歳の若年女性人口が5割以下に減少する市区町村」のことです。こうした自治体では子どもが減って地域社会や経済、地方財政を支える世代が育たず、無居住地化する可能性が高いというのです。

 

現在全国にある1,799自治体のうち、実に約半数の896自治体が該当すると報告されていました。宮崎県についても日南市、小林市、串間市、えびの市の4市をはじめとする15市町村の名前が挙がっています。

 

実際、宮崎県の調査でも合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産むことが予想される子どもの数)の対象となる15歳から49歳までの女性人口については、1980年の29万2,000人をピークに減少を続けており、2045年には12万3,000人にまで減少すると推計されています。

 

消滅可能性都市の指摘は決してSF小説の世界のものではなくリアリティをもって地方都市の将来に警鐘を鳴らしているのです。

 

宮崎県では、ほかの多くの地方都市と同様に人口減少が全国の平均的な水準を超えて急速に進んでいます。すでに地域経済や産業の振興を担う人材の不足が顕著になっていますが、山間地とその周辺の平地を除く地域を合わせた中山間地域では暮らしに必要なサービスの維持さえ難しいという状況が現実のものとなっています。

 

日々の生活用品の購入、行政サービス・医療や介護サービスの利用、災害時の救援といった当然のことすら享受しにくくなっているのです。

 

こうした厳しい状況のなかでは自分の会社だけを見て対策を考えても展望は見えてきません。会社も大事ですが同時に地域全体が豊かにならなければ未来もないからです。会社も地域もほかでは得られない独自の価値を生み出すことで衰退を食い止めて反転させ、新たな発展の道を歩み始めなければならないのです。

 

島原 俊英

株式会社MFE HIMUKA 代表取締役社長

一般社団法人 日向地区中小企業支援機構 理事長

本連載は、島原俊英氏の著書『地域循環型経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋し、再構成したものです。

地域循環型経営

地域循環型経営

島原 俊英

幻冬舎メディアコンサルティング

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