(※写真はイメージです/PIXTA)

お店を継続してくために重要なのは「売上」ではありません。手元に残る「儲け」がいくらになるのか、が重要なのです。その儲けを把握するために、「会計」が重要になってきます。公認会計士の石動龍氏が著書『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』で解説します。

無計画な旅行は楽しいが、無計画の経営はダメ

私は、行き当たりばったりが好きです。当時24歳の私は、大学の卒業旅行(2回留年)でインドに行くことにしました。沢木耕太郎さんの『深夜特急』に影響を受けて、初めての海外旅行です。

 

準備したものは、着替えと飛行機の往復チケット、ガイドブック―以上です。それらをリュックに詰めて、ニューデリーに降り立ちました。

 

当時はスマートフォンもなく、頼りになるのはガイドブックだけ。空港の出口に行くと、ものすごい数のインド人が柵の向こうから大声を出しています。入場制限があるようで、怒鳴りながら「自分の車に乗れ」と盛んにアピールします。ガイドブックには、「悪徳旅行会社に連れていかれるので、空港が手配したタクシー以外には絶対に乗ってはいけない」と書いてありました。

 

2時間ほど右往左往して空港職員に聞きまくり、なんとか正規のタクシーを捕まえることができました。同じ飛行機に乗っていた日本人の何人かは、迫力に負けて悪徳旅行会社に連れていかれてしまいました。

 

それから1ヵ月ほど、思うままにインドやネパールを周遊しました。麻薬中毒者に誘われたり、ものすごい断崖絶壁を走るバスに乗ったり、山奥で目出し帽をかぶった反政府勢力にマシンガンを突き付けられたりと、振り返ると怖い経験もしました。でも、何も決めずに行動するのがとても楽しかったことを覚えています。

 

20年後も、無計画好きは変わっていません。でも、楽しいから経営も無計画で行ってみよう――。そんな考えでスタートすると、たいていはあっさりつぶれてしまうでしょう。

 

「数字は経営の羅針盤(らしんばん)」と言われます。羅針盤とは、方位を知るための装置で、大航海時代に使われました。行き先がわからずに船を走らせたら、どこに着くかわかりません。無計画に経営するのは、それと同じことです。

お店には行列ができてるのに…減っていく預金残高

無計画に新メニューを作ったケースで考えてみましょう。

 

すべてを勘で決定する店主・丼振さんが経営するどんぶりラーメン。新メニューは地鶏と本マグロをふんだんに使ってスープを取り、地鶏のモモ肉で作った大ぶりのチャーシューをトッピングした「マグ地鶏ラーメン」です。

 

濃厚な鶏白湯にマグロの風味が上品かつ複雑な味わいを作り出し、大ヒットの予感がします。高級食材をたくさん使うため、ふだんのラーメンと同じ値段ではとても出せません。

 

丼振さんは「価格を2倍にすればさすがに大丈夫だろう」と考え、1500円で新メニューを出すことにしました。それでも、オープン初日からマグ地鶏ラーメンは話題を集め、行列が途切れることはありませんでした。

 

ところが1ヵ月後、どんぶりラーメンの預金残高は大きく減ってしまいました。「あんなに行列ができていたのにどうして…」丼振さんは頭を抱えることになってしまいました。

 

どうしてこうなったのでしょう? 実は、地鶏のモモ肉は、ブランドによっては国産ノーブランド品の10倍くらいの値段がします。チャーシューに1人前100グラムを使うとした場合、それなりの品質でも450円ほどの原価になります。これだけで1500円の売価の約30%になりますから、全体の原価率は50%を上回ってしまうでしょう。

次ページラーメン屋の原価率は30%程度に抑えたい

本書は石動龍氏の著書『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる

会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる

石動 龍

日本実業出版社

◎ラーメン屋会計士が「儲けを生み出す会計」を伝授! 本書は、公認会計士・税理士として働く傍ら、2020年10月に地元青森県八戸市で「ドラゴンラーメン」を開業した著者による、ラーメン屋を題材にした会計の入門書です。 …

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