(※写真はイメージです/PIXTA)

中国経済に失速の兆しが見えています。先進各国は動向を見守りながら世界経済への影響を懸念していますが、その一方、中国による大量の資源の輸入が減少すれば、世界的な資源の需給関係も大幅に緩むことが期待できます。経済評論家の塚崎公義氏が中国経済失速のシナリオについて解説します。

資源価格が安定し、世界経済にプラス効果も

明るい材料もあります。仮に中国経済が失速したとして、世界経済への影響はマイナス面だけではないからです。米国のインフレによる金融引き締めが世界経済に影を落としているわけですが、それが緩和されるかもしれないからです。

 

中国は資源の大量輸入国ですから、中国経済が失速すれば資源の輸入が減り、世界的な資源の需給関係は大幅に緩むと期待されています。

 

現在、我々の生活は電気料金等々の値上がりで苦しいわけですが、それが原油価格や穀物価格等の値下がりで緩和されれば嬉しいですね。

 

加えて、欧米諸国では、日本より遥かに物価上昇率が高いので、インフレを抑え込むために金利が引き上げられています。それによってドル高円安になり、輸入品の価格が一層高くなっているわけです。米国のインフレが収まれば、金利が下がりドルが値下がりして、その面からも輸入価格が下がるかもしれません。ちなみに、ドルの金利が高いとドルが値上がりする、という理由は、説明が長くなるので今回は省略します。

 

しかし、それだけではありません。ドルの金利が高いことで、米国が不況になり、日本からの輸入が減ることが懸念されているわけですが、そのリスクが小さくなるかもしれません。

 

また、途上国は海外からの借金をドル建てで行うことが多いので、金利が上がると苦しくなる途上国が多いでしょうし、米国の金融の引き締めによってドルが借りにくくなると、途上国の借り手はドルを買って返済する必要が出てくるかもしれません。

 

そうなると、最初に返済する人がドルを買うことでドルが値上がりし、次にドルを返済する人の負担が増し、最後にドルを返す人は倒産してしまうかもしれません。そうでなくとも、ドル高による輸入物価の高騰で途上国がインフレになり、経済が苦しくなる可能性は十分あるでしょう。そうなれば、世界的な不況となり、日本の輸出が対米以外も落ち込むかもしれません。

 

中国の景気の落ち込みが資源価格を安定させれば、そうしたリスクが大幅に減ると期待されるわけです。中国も輸入大国ですから中国向けの輸出が減ることは世界経済にとって痛手ですが、ドルの金利が高くなったり、ドル高になったりすることによる世界経済への痛手が和らぐのであれば、それは世界経済にとって素晴らしいことだといえるでしょう。

中国経済のバブル崩壊は、日本にとってプラスに働く?

筆者は国際政治には強くありませんが、米国と中国が冷戦状態に近づきつつあるようですので、もしも今後も米中関係が悪化を続けるのだとしたら、米国の経済がインフレで痛むよりも中国の経済がバブル崩壊等で痛む方が日本の安全保障にとってはプラスかもしれません。

 

企業にとっても、「中国は新型コロナでの都市封鎖等をするかもしれないから、工場を中国から移転させよう」ということになれば、短期的にはコストですが、長期的に米中関係が悪化していくのだとすれば、中国の工場を拡張せずに縮小しておいてよかった、ということになるかもしれませんね。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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