(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業を活性化する「両利きの経営」へ向け、新規事業に取り組もうにも、どこから手をつけるべきか迷う経営者の方は多いでしょう。新規事業創出へ向けたアプローチには様々な方法があります。多角的な視点を頭に入れたうえでの構想は、最適な方向性や戦略を得るために効果的です。ここでは、多角的な視点の重要性を解説します。※本記事は『中小企業の両利きの経営』(ロギカ書房)を抜粋・大幅に再編集したものです。

第二創業:後継者の受け入れ時に行う、新しい取り組み

第二創業とは、事業承継によって後継者を迎え入れるタイミングで行う新しい取り組みのことです。今や、事業承継は多くの中小企業で切実な問題となっていますが、新規事業の観点からは、大きなチャンスとなり得ます。

 

第二創業による「両利きの経営」では、自社事業を見つめ直し、後継者の特徴を活かすことを検討した上で、事業の立脚地を変えていくことが良いでしょう。

 

一般的な創業とは異なり、第二創業では過去に築いてきた資産や強みを活かすことができます。新規事業へ向け「自社にどのような武器があるのか」を見つめ直すことは有用です。その際、ヒト、モノ、カネといった経営資源に加え、それによって培われた「見えざる資産」に着目したいところです。

 

経営学者の伊丹敬之氏によれば、「見えざる資産」とは、技術や生産のノウハウ、顧客情報の蓄積などの環境情報、企業の信用やイメージなどの企業情報、組織風土や経営管理能力などの内部情報処理特性のそれぞれが蓄積されたものを言います。

 

後継者の経験や感性の違いは、第二創業へ向けて重要な要素となります。学校で学んだこと、卒業後に就職した他の企業での経験、打ち込んでいた趣味など、現経営者が経験していない何かの経験は、事業に新しい風を吹き込む源となります。是非、そうした特徴を活かしていきたいところです。

 

こうした検討は「既存事業とは異なる立脚地への転出」を最適化することにつながっていきます。

M&A…スピード感のある成長戦略

株式会社レコフの調査によれば、わが国のM&A 件数は増加傾向で推移しています。政府によるM&A政策の推進、M&Aに関する経営者意識の変化等により、今後この傾向は加速すると予測されます。M&A増加理由の一つとして、中小企業経営者の高齢化と後継者不足の問題が挙げられます。第三者承継(つまりM&A)がその解決策となっているのです。

 

最近では、M&Aを成長戦略として捉え、他社を積極的に買収する例も増加しています。中小企業が新規事業創出を狙い、買い手としてM&Aを活用することは、スピード感をもった取り組みにつながるでしょう。中小企業のM&Aは主に株式譲渡と事業譲渡に分けられますが、広義のM&Aとしてジョイントベンチャーのような資本提携も選択肢に加えてはどうでしょうか。

 

M&A検討の前提として、全社戦略の更新は必須です。「会社全体としてどのような方向に向かうべきか」検討した上で、「新規分野に対して既存の組織能力をどのように活かせるか」十分に考え、M&Aの必要性を見極めることです。リスクについても考慮する必要があります。買収時には高値で買ってしまうリスクがあるし、買収した企業を統合する作業(PMI:Post Merger Integration)において、その難しさゆえに目論見から外れてしまう可能性もあります。こうしたリスクも踏まえ、M&Aがベストな選択かについて判断していく必要があります。

 

買収先を検討する際には、買収後にシナジー効果を得られるかどうかがポイントなります。シナジー効果とは、自社と買収した企業とが相互に関係することでプラスαの効果を生み出し、「1+1」が「2」ではなく「3」や「4」になるような状態を言います。既存事業とのシナジー効果が生み出すことができれば、買収した事業は売り手が想定していた以上の価値を持つことになり、M&Aの成功につながっていくのです。

 

 

五藤 宏史
五藤コンサルティングオフィス 代表
中小企業診断士

 

事業承継支援コンサルティング研究会
 

中小企業の両利きの経営〈未来を創る10の視点〉

中小企業の両利きの経営〈未来を創る10の視点〉

事業承継支援コンサルティング研究会

ロギカ書房

未来を創る10の視点――「既存事業の深掘り」「新規事業の探索」中小企業だって“両利きの経営”を実践できる! 本書は、東京都中小企業診断士協会認定「事業承継支援コンサルティング研究会」における「第2回書籍出版プロ…

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