(※写真はイメージです/PIXTA)

「協調性」や「学力」を重視し、紋切り型の人材育成を目的とした戦後教育をいまだ色濃く引き継ぐ、現代日本の教育現場。社会に出てから必要な「独創性」や「問題解決能力」、「知識の運用」などの礎となる「主体性」の育成に重きを置かれない教育は、毎年新社会人が送り出されている社会全体にどのように影響を与えているでしょうか。世界中で多様な教育現場を視察し、独自に編み出した教育ビジネス構想を実現させるため、2015年にソニーグループ初の教育事業会社・株式会社ソニー・グローバルエデュケーション(SGE)を設立。現在同企業の取締役会長を務める礒津政明氏による著書『2040 教育のミライ』から、現代日本における教育の問題点とその改善策について解説します。

高度経済期から50年。日本の経済力は世界第30位に

GDPだけを見れば、いまの日本はアメリカ、中国に続く「世界第3位(名目では4位)の経済大国」です。しかし、そのGDPをより実態に近づけるために購買力平価(その国の物価)で調整し、さらに国民の頭数で割ってしまえば、日本の経済力は世界第30位でしかありません。

 

ちなみに、お隣の韓国は同27位。日本ではあまり報道されませんでしたが、2018年に抜かれ、その差は拡大しています。アジアのトップはシンガポールで、ルクセンブルクに次ぐ世界2位です。

 

冒頭にお話ししましたが、日本では平均賃金もひどいありさまです。購買力平価ベースの日本の平均賃金は約4万ドルで、OECD平均約5万ドルを下回っています。

 

1位はアメリカで、約7万ドル。ここ20年で日本は平均賃金を下げましたが、アメリカは倍増させました。日本はいまやEUの中で財政難にあえぐイタリアと同じグループにおり、そのすぐ下のグループには旧共産国や財政破綻したギリシャが迫っていることをご存じでしょうか。

 

なお、平均賃金についても2015年に韓国に抜かれており、月ベースに換算すれば韓国人は日本人より3万円以上多く給料をもらっていることになります。

 

株価についても、2021年の暮れに日経平均の年末終値が32年ぶりの高値をつけたというニュースが流れました。しかし、これは言い方を変えれば「日本が32年間経済成長していない」ということにほかなりません。その間、アメリカのダウ平均は12倍に成長しているわけです。

 

最近「日本の人口減少と労働力不足を外国人労働者や移民で補うべきか」といった議論をよく耳にしますが、あまりにも「上から目線」の論点と言わざるを得ません。そもそも日本は出稼ぎ先としての魅力を失っているからです。

 

むしろ近い将来、日本人が外国に出稼ぎに出なければならない時代がくる可能性が高いのです。世界における日本のプレゼンスは年々薄れていっています。

 

「でも、インバウンド(外国人観光客)が増えているじゃないか」という意見もあるかもしれません。たしかに新型コロナが流行る前、日本のインバウンド需要は異常な高まりを見せ、2019年に日本を訪れた外国人は3,000万人を超えました。2011年は約600万人だったので、わずか8年で5倍の増加です。

 

こうした現象に対して「日本の良さが世界に知れ渡ったからだ」「日本のサービスや製品がいいからだ」といった前向きな意見もありますが、その実態は「日本が貧乏な国になった」だけです。かつて日本人がアジア各国に貧乏旅行をしていた感覚で、いまはアジア各国の人が、安全で物価の安い日本で貧乏旅行を楽しんでいるのが現実なのです。

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