(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の進行をできるだけ遅らせるには、どうすればよいのでしょうか。認知症研究の第一人者・浦上克哉氏が監修した『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)より、症状を進ませないために重要な「家族がやるべきこと」を見ていきましょう。

「これまでの古い記憶を大切にする環境づくり」を

■「認知症の母を世話したい」帰郷した息子。新築の家で同居を始めたら…

アルツハイマー型認知症は忘れる病気ですが、一方で古いことは楽しい思い出とともによく覚えています。ですから、古い記憶にもとづいて生活できる環境を維持することも、症状を進ませなくするためのポイントのひとつといえます。

 

お母さまが認知症になり、自分が世話をしたいと郷里に戻ってきて、一緒に住むために立派な新築の家を建ててあげた息子さんがおられました。ところが新築の家に引っ越したあと、お母さまの認知症の症状がどんどん悪化してしまったのです。

 

それは、環境の変化が原因でした。息子さんは、お母さまがそれまで住んでいた家の中の雰囲気や家具の配置、動線などの環境を新居でガラリと変えてしまったのです。

 

もちろん新築の家を建ててあげるのは素晴らしいことですが、家の中の造りは大きく変えることなく、それまでの環境を維持してあげることが大事です。使い慣れた家具をそのまま新しい家に持っていくなど、古い記憶の中で生活できる環境を整えることで、病状の進行を遅らせることができることをぜひ知っておいてください。

認知症になった方と暮らす家族の「心構え7ヵ条」

認知症による失敗やマイナス面をおおらかに受け容れ、相手を思いやりながら過ごすのが、家族として心がけたいコミュニケーションの基本です。それによって、「自分でできたこと」の達成感が生活への意欲をかきたて、症状の進展を防ぐことにもつながっていきます。

 

 

いっぽうで、一緒に暮らす家族にとっては、生活の中でのあらゆる局面で、「なぜ?」「どうして?」と戸惑ってしまう状況が増えていきます。

 

そんなとき、理不尽な行動に対して頭ごなしに叱ったり怒ったりしてしまうと、症状はますます悪化しがちです。

 

そうではなく、行動や言葉の裏側にある理由がわかれば落ち着いて対処でき、気持ちを理解して寄り添うことで、症状が改善される場合もあります。そのために、問題行動が出てしまう理由とそのときの本人の気持ち、正しい対処法を知っておくことが必要なのです。

 

【図表】に、毎日の生活のなかで、認知症になってしまった方と一緒に暮らしていく上での、患者さんにとっての良い対応を「7ヵ条」にまとめて紹介しました。

 

浦上克也著『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)
【図表】家族の心構え7ヵ条 浦上克也著『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)

 

ここで大事なのは、家族など周囲の人が思いやりのあるサポートをしていき、ご本人に安心感を与えてあげることです。ほかの人と同じように接して、プライドを傷つけないような言動を心がけること。また、失敗を責めたり、頭ごなしに否定することや、叱ったり命令するのも良くありません。辛抱強く、おおらかな気持ちを持って接していくことを大切にしてください。

 

これは言い換えれば、認知症患者の方だけでなく、家族が円滑なコミュニケーションのもと生活していく上で大切な事柄ということもできます。ぜひ日頃から気に留めていただければ幸いです。

 

 

浦上 克哉

日本認知症予防学会 代表理事

鳥取大学医学部 教授

 

 

本連載は浦上 克哉氏の著書『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)の一部を抜粋し、再編集したものです。

すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本 認知症を予防・克服する新習慣!

すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本 認知症を予防・克服する新習慣!

浦上 克哉 監修

徳間書店

【認知症研究 第一人者、浦上克哉氏の最新メソッド!】 「ひょっとして認知症?」…あなたや家族が不安になったら読む本。 早期発見チェックリストで今の状態とやるべきことがよくわかる! 自分自身や家族の認知症が…

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