(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●このところ、FRB高官からタカ派発言が相次いでおり、次回FOMCでの利上げ幅に言及するものも。

●ブラード総裁などは年内大幅利上げの可能性を示唆、カシュカリ総裁は一部利下げ予想をけん制。

●タカ派発言で利上げ織り込み進行なら、実際の大幅利上げの必要性は低下し、株価にも好材料。

このところ、FRB高官からタカ派発言が相次いでおり、次回FOMCでの利上げ幅に言及するものも

このところ、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官から、タカ派的な発言が相次いでいます。具体的に名前を挙げてみると、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁、シカゴ連銀のエバンス総裁、セントルイス連銀のブラード総裁、リッチモンド連銀のバーキン総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁など、非常に多くが発言しています(図表1)。

 

(出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]主なFRB高官のタカ派発言 (出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

発言におおむね共通していることは、インフレは依然として高いという認識であり、また、米金融当局はインフレを2%の目標水準に戻すことをコミット(約束)しており、そのために必要なことをやるという意思表示です。また、次回、9月20日、21日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)における適切な利上げ幅について、自身の見解を明らかにするものもみられました。

ブラード総裁などは年内大幅利上げの可能性を示唆、カシュカリ総裁は一部利下げ予想をけん制

特に注目されるのは、今年のFOMCで投票権を持つ高官の発言です。セントルイス連銀のブラード総裁は8月2日、年末までに3.75%~4.00%への政策金利引き上げが望ましいと述べました。これは現状よりも1.50%高い水準です。また、クリーブランド連銀のメスター総裁は8月4日、9月の利上げ幅について、75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)は不合理ではないものの、50bpもあり得ると語りました。

 

また、来年のFOMCで投票権を持つ高官の発言も注意が必要です。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は7月29日、(市場で一部予想されている来年の利下げについて)利下げのハードルは極めて高いと述べました。また、シカゴ連銀のエバンス総裁は8月2日、(今年の年末の政策金利を3.25%~3.50%と予想した上で)来年1-3月期と4-6月期に25bpずつの利上げで、政策金利は3.75%~4.00%と十分高い水準になると発言しました。

タカ派発言で利上げ織り込み進行なら、実際の大幅利上げの必要性は低下し、株価にも好材料

以上を踏まえると、年内は相応な利上げ幅を伴う連続利上げが予想され、来年の利下げの公算はかなり小さいと推測されます(なお、前述のエバンス総裁は来年早期に退任予定)。一連の発言は、7月26日、27日のFOMC後に相次ぎましたが、これは同会合で利上げペースを緩める可能性が示唆され、期待インフレ率に上昇圧力が生じた(図表2)ことを受けてのものと考えられます。

 

(注)データは2022年7月1日から8月4日。米期待インフレ率は期間10年のブレークイーブンインフレ率(米物価連動債の取引参加者が予測する今後10年間の年平均物価上昇率)。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]米期待インフレ率の推移 (注)データは2022年7月1日から8月4日。米期待インフレ率は期間10年のブレークイーブンインフレ率(米物価連動債の取引参加者が予測する今後10年間の年平均物価上昇率)。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

パウエル議長は7月27日、市場がFRBの政策を信頼し、期待インフレ率が低下した旨の発言をしており、FRBにとって期待インフレ率は重要な指標です。そもそも金融当局のタカ派発言には、市場に早い段階で利上げを織り込ませる意図があります。織り込み進行で期待インフレ率が低下すれば、将来的な大幅利上げの必要性は低下し、景気後退リスクも低下します。そのため適切なタイミングでのタカ派発言は株式市場にも好材料といえます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『相次ぐFRB高官の「タカ派発言」の“読み方”【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧