欧米よりはるかに低い「日本の臓器移植率」…知っておきたい「心不全治療」の現状【専門医が解説】

欧米よりはるかに低い「日本の臓器移植率」…知っておきたい「心不全治療」の現状【専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

心不全は一度発症すれば完治することはありません。だからこそ、まずは発症させないこと、発症したのであれば、再発・増悪を防ぐ対処が重要です。心不全の治療方法として、今回は「カテーテル治療」と心臓移植」について見ていきましょう。“心疾患・心臓リハビリ”の専門医・大堀克己医師が、心不全の治療方法ついて解説します。

心不全の「カテーテル治療」

<動脈硬化を原因とする心不全の場合>

心不全の原因はさまざまであり、原因が分かっている場合は、それを解消するための処置が行われます。

 

例えば、心不全を引き起こす原因の一つに動脈硬化があります。これは血管壁の中で血液成分やコレステロールが固まって粥腫(じゅくしゅ)がつくられ、それが血管を細くして血液の流れを悪くしてしまう病気です。そのため、心臓へ血液を供給している冠動脈が細くなったり詰まったりして狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症し、心臓のポンプ機能を弱らせて心不全を起こします。

 

このような場合には、カテーテルと呼ばれる細長い管を冠動脈の入り口まで持っていき、そこから風船やステントを挿入して血管を押し広げ、血流を取り戻す治療が行われます。これを、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)治療といいます。

 

手首や脚の付け根、腕などからカテーテルを挿入し、血管の中を伝って冠動脈の入り口まで通します。そして、冠動脈の中に造影剤を流し込んでX線撮影をします。血管が細くなっているところが特定できたら、カテーテルから出した風船を膨らませ、血管を押し広げます。同時に、血管が再び狭くならないように、ステントと呼ばれる金網の筒を血管の中に留め置き、血流を再開させます。

 

カテーテルは直径1〜2ミリの細い管であり、差込口となる手首の動脈は約3ミリ、太ももの動脈は約10ミリです。そのためPCIは体に対する侵襲が少なく、高齢の人でも比較的安全に行えると考えられています。

 

<大動脈弁狭窄症を原因とする心不全の場合>

それから心不全を引き起こす原因に、大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)という病気があります。これは、心臓の左心室と大動脈の間にある大動脈弁がリウマチ熱や、加齢によって硬くなって開きづらくなることで、大動脈への血流が妨げられる病気です。弁の隙間が狭くなってしまうことで、心臓に過重な負担が掛かってしまい、心不全を発症するリスクが高くなるのです。

 

これまでは、変形したり硬くなったりした心臓弁を修復するため、外科手術によって人工弁に置き換える治療が一般的でした。金属などでできた機械弁や、ブタやウシの心膜などでできた生体弁などに置き換えることで、弁の開放を改善して、血液の流れを緩やかにしていたのです。ただ、すべての患者が手術を受けられるわけではありません。これを解決するために最近行われるようになった治療が、TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)です。

 

TAVIは鼠径部の動脈や鎖骨下動脈などから動脈へ、あるいは左肋間から直接心臓内にカテーテルを挿入し、狭窄した大動脈弁の内側に人工の弁を留置し、大動脈への血液の流れをスムーズにします。従来の外科手術では心肺を一時的に停止させて心臓を露出し、狭窄している大動脈弁を人工弁に交換しなければなりませんでした。しかし、TAVIでは開胸せずカテーテルを挿入するだけで済みます。そのため体への負担が少なく、高齢者でも安心して治療を受けられることがいちばんのメリットです。

 

入院期間はだいたい10日程度で、多くの人が手術の翌日には歩くこともでき、社会復帰もスムーズです。また、2013年10月よりTAVI治療が健康保険の適用となり、経済的負担も緩和されました。心不全患者の高齢化が進む現在では、非常に有用な治療法といえます。

次ページ重症心不全に対する最終手段、「心臓移植」

※本記事は、大堀克己氏の著書『心不全と診断されたら最初に読む本』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

心不全と診断されたら最初に読む本

心不全と診断されたら最初に読む本

大堀 克己

幻冬舎メディアコンサルティング

心不全と診断されても諦めてはいけない! 一生「心臓機能」を維持するためのリハビリテーションと再発予防策とは? “心疾患・心臓リハビリ”の専門医が、押さえておきたい最新の治療とリハビリテーションを解説します。

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