(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●新3市場が始動してから7営業日が経過し、市場参加者から様々な意見が聞かれるようになった。

●新3市場の動きを示す指数も新たに算出開始、ただ終値のみの公表で分析にはデータが未整備。

●新市場区分や新市場指数には課題が多く、今回の市場再編は解決に向けた第一歩に過ぎない。

新3市場が始動してから7営業日が経過し、市場参加者から様々な意見が聞かれるようになった

先週は4月4日に、東京証券取引所(以下、東証)の市場が再編され、新たに「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場が始動しました。昨日までに7営業日が経過しましたが、新たな3市場に対する様々な意見が市場参加者から聞かれるようになりました。そこで今回のレポートでは、これら市場参加者の声も踏まえ、改めて新市場の課題について考えます。

 

新たな3市場は、それぞれのコンセプト(図表1)に応じ、流動性やコーポレート・ガバナンスなどにかかわる定量的・定性的な上場基準が設けられ、旧市場より市場区分が分かりやすくなりました。ただ、上場維持基準の未達企業には経過措置が講じられたほか、プライム市場の新規上場基準と上場維持基準の流通時価総額は100億円以上と比較的小さく、日本株の魅力をアピールするにはまだ力不足との声も多く聞かれます。

 

(出所)東京証券取引所の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]新市場区分のコンセプト (出所)東京証券取引所の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

新3市場の動きを示す指数も新たに算出開始、ただ終値のみの公表で分析にはデータが未整備

また、新市場の誕生に伴い「東証プライム市場指数」、「東証スタンダード市場指数」、「東証グロース市場指数」の3指数の算出が始まりました。これらは新市場に上場する企業の値動きを示す指数であり、基準日は2022年4月1日、基準値は1,000ポイントです。しかしながら、これらの3指数は、リアルタイムで算出されず、1日に1回、15時30分以降に終値が公表されるだけとなっています。

 

つまり、新たな3市場については、取引時間内の動きを把握することができず、また、通常の指数で算出されるような、始値、高値、安値、終値といった4本値も3指数にはありません。さらに、3指数とも過去に遡って算出されていないため、長期データが存在しません。したがって、各市場の動きを分析するためのデータが十分に整備されていない、ということになります。

新市場区分や新市場指数には課題が多く、今回の市場再編は解決に向けた第一歩に過ぎない

そのため、日本株のリアルタイムの動きをみるには、引き続き、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)、東証マザーズ指数を参照していく必要があります。参考までに、新たな3指数を含む日本株の主要指数について、2022年4月1日を基準に4月12日までの騰落率を示したものが図表2です。これをみると、東証プライム市場指数はTOPIXと同じ-4.15%で、東証グロース市場指数は東証マザーズ指数に近い数字になっています。

 

(注)データは2022年4月1日から4月12日。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]日本の主要株価指数の騰落率 (注)データは2022年4月1日から4月12日。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

以上より、新市場区分については、早期の経過措置の撤廃や、プライム市場における上場企業数の絞り込みの検討などが課題であり、新市場指数については、リアルタイムの算出、4本値の公表、長期データの整備などが課題と思われます。海外から広く投資マネーを呼び込み、日本株市場を活性化させるには、まだ課題が多く、今回の市場再編は、その解決に向けた第一歩に過ぎないと考えています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『東証の「新3市場」開始から1週間でみえてきたこと【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

(2022年4月13日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

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