後継者がいないことを理由に休廃業する中小企業が激増しています。後継者がいない経営者が取り得る4つの選択肢では、どういった流れで後継者を絞り込んでいけばいいのでしょうか。そのメリットとデメリットとは。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

事業承継は「3つの経営資源」を引き継ぐ

それぞれについて、解説しましょう。

 

■事業承継の要素①:人(経営)の承継

法人であれば代表取締役の交代というように、人(経営)の承継とは、後継者へ経営権を引き継ぐことを指します。現経営者が育ててきた事業を誰にたすきをつなぐかで事業承継の成否は決まりますから、時間をかけ慎重に決める必要があります。

 

いままでは次期経営者としての資質に関係なく、経営者の長男に継がせるというケースが多かったのですが、その結果、事業が破綻してしまうと従業員は路頭に迷い本末転倒です。経営ビジョンや本人の覚悟・意欲、実務能力といった観点など、変わりゆく経営環境に対して柔軟に対応することができ、事業を継続・成長させていくことができる人物を選定しないといけません。

 

親族内承継や社内承継の場合は、経営ノウハウや取引先など必要な能力を身に付けるのに、ある程度の時間がかかるので、後継者候補をなるべく早く選び、育成に取り組む必要があります。

 

一方、これまで述べてきたように、近年は社外人材やM&Aが事業承継の選択肢の一つとして認識されるようになりました。親族内・社内承継だけではなく、外部の第三者への承継を視野に入れて、「誰に」事業を引き継ぐのか検討を進めたいところです。

 

■事業承継の要素②:資産の承継

資産の承継とは、株式や事業用資産(設備・不動産など)、資金(運転資金・借入など)といった、事業継続のために必要な資産の承継を指します。

 

法人の場合は会社が保有する資産の価値は株式に包括されるので、株式の承継=資産の承継と考えて構わないでしょう。

 

一方、個人事業主は自社株を持たずに、不動産や機械設備を経営者本人が個人所有していることがほとんどですから、それぞれを計上して承継しないといけません。

 

詳しくは後述しますが、資産の承継で押さえるべきことは、自社株・事業用資産を贈与・相続の形で引き継ぐ場合は、資産の規模や状況により多額の贈与税・相続税が発生する可能性があるということです。

 

後継者に税負担ができるほどの資金力がないと、承継自体を考え直さないといけなかったり、何らかの対策を練ったりする必要があります。税負担を回避するために、複数の人物に株式・事業用資産を分散して承継すると、その後の人間関係で揉めて経営に悪影響を与える可能性があり、お勧めはできません。資産の承継は後継者一人に集中させるのが賢明であり、そのためには税負担を考慮した手段を検討する必要があります。

 

一方、承継するのはプラスの資産とは限りません。法人や現経営者個人の負債や保証も整理して承継することになり、個人財産に関しては他の相続人との関係も考えないといけません。

 

これについては専門的な知識が求められるので、税理士をはじめとする専門家のサポートも必須になります。時間を要することもありますから、やはり早めに取り組んだ方がよさそうです。

 

次ページ事業承継には十分な準備期間を確保

※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

中小企業向け 会社を守る事業承継

中小企業向け 会社を守る事業承継

瀧田 雄介

アルク

後継者がいなくても大丈夫!大事に育ててきた会社を100年先へつなぐ、これからの時代の「事業承継」を明らかにします。 日本経済を支える全国の中小企業は約419万社。そして今、その経営者の高齢化が心配されています。2025年…

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