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遺言書は自分の意思を家族に伝える大切な書面で、誰にどの財産を相続させるかを書いておくことで、遺産相続をスムーズにする効力があります。一方、遺言書に書いても法的な効力がない事項があり、場合によっては遺言書そのものが無効になることもあります。みていきましょう。

遺言書で効力がない事項

前出で取り上げた以外の事項は、遺言書に記載しても法的な効力はありません。ただし、効力がない事項を遺言書に書いてはいけないわけではありません。生前の思いを家族に伝えることで、相続がスムーズにできる場合もあります。

 

遺言書でできないこともある

次の事項は遺言書に記載しても法的な効力はありません。

 

  • 遺留分減殺の請求の禁止
  • 認知以外の身分行為(結婚・離婚、養子縁組・離縁)

 

兄弟姉妹を除く相続人には遺留分(最低限受け取れる遺産の割合)があります。

 

遺留分に満たない財産しか相続できなかった人は、不足分を他の相続人に請求することができます(遺留分減殺の請求)。特定の人に遺産を多く継がせるために遺留分減殺の請求をしないように遺言書に書いても、その内容には法的な効力はありません。

 

また、遺言書に認知以外の身分行為に関する事項を書いても効力はありません。遺言書で子の認知はできますが、養子縁組はできません。混同しないように注意しましょう。

 

付言事項

法的な効力はありませんが、遺産分割方法を定めた意図や家族に対する感謝の気持ちなどを、付言事項として遺言書に書くことができます。付言事項があると、家族は遺言書の内容に納得したうえで遺産相続を実行してくれるでしょう。

 

葬儀や埋葬方法の指定も付言事項として取り扱われます。

遺言書が無効になることも

残された家族のことを考えて書いた遺言書も、少しの間違いで無効になる場合があります。遺言書は記載方法や内容が法律で定められていて、それらを守っていない場合は無効になります。

 

形式の不備がある遺言書は無効

遺言書の主な形式には、自筆で書く「自筆証書遺言」と、公証人に筆記してもらう「公正証書遺言」があります。「自筆証書遺言」は自分だけで書くことができますが、法律で定められた要件を満たさない不備が多くなります。

 

◆遺言書の形式

たとえば、自筆証書遺言では次のようなものが無効になります。

 

  • パソコンで作成した遺言書
  • 日付が記載されていない遺言書
  • 夫婦の連名で記載した遺言書

 

自筆証書遺言は全文を自筆で書かなければなりません。手書きで署名しても本文をパソコンで作成した遺言書は無効になります。

 

また、日付は年月日を特定できるように書くこととされています。「平成○年○月吉日」のような記載では無効になります。

 

◆自筆証書遺言の文例

平成30年の民法改正で、自筆証書遺言についての制度が一部緩和されています。

 

代筆された遺言書は無効

遺言書の形式が整っていても、本人が書いたものでなければ無効になります。

 

認知症で判断能力が不十分な人や手が不自由な人に代わって他の人が書いた場合は、遺言書は無効になります。このようにして書かれた遺言書が有効であるか無効になるかは、裁判で判断されることになります。

 

次ページ遺言書を無効にしないためには

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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