(※写真はイメージです/PIXTA)

がんを患う男性は、余命宣告を受けてもなお思いやりを示さない妻に、静かな怒りとあきらめを感じていました。そして、遺言書を通じ、ある思いを実現したいと考えるようになりました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

思い入れある母の土地は、必ず長男に継いでほしい

中川さんは余命宣告を受けて以降、財産の分配について考えています。いくら関係の悪い配偶者とはいえ、一切の財産を渡さないというのは現実的ではありません。しかし、思い出の詰まった母親の実家跡地の駐車場は、必ず長男に託したいと考えています。

 

普段から言葉の少ない中川さんですが、心のうちを整理する意味でも、遺言書を通じて気持ちを書き残したいと思うようになりました。そんな中川さんに筆者がアドバイスしたのは、公正証書遺言で想いを残すことです。

 

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が遺言者の口述を聞いて遺言書を作成するため、書式の不備などで無効になるリスクがもっとも低いものです。保管も確実で偽造される心配がなく、裁判所の検認も必要ないので、手間や時間も短縮できます。

 

ただし「公正証書遺言」の場合、2人以上の証人が立ち会うことが必要になります。証人とは、遺言書の内容に間違いがないことを証明できる人のことです。今回は、筆者の会社の相続実務士2名が証人となるよう依頼され、立ち会いました。

 

顔を合わせてきた筆者の会社のスタッフが証人となったことで、中川さんは公証役場でも緊張することなく、スムーズに遺言書を作成することができました。

 

「これで長男に気持ちが伝わると思います」

 

中川さんは、穏やかな笑顔を見せてくれました。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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