「3月まで緩和、6月から引き締め」は、転換が急すぎる
しかしながら、過去のデータを見ると、わずか3ヵ月で金融緩和から引き締めに転じることになれば、最も短い政策転換に並びます。金融緩和の環境に長く慣れ親しんできたマーケットがそれほど簡単に引き締めを受け入れられるとは思えません。
インフレを恐れ、利上げも恐れるのがマーケット
「マーケットはインフレを警戒している」「マーケットは一時期、2022年に3回もの利上げを織り込んでいた」、ゆえに「FRBによる早期の利上げはマーケットの望むところだ」と考えるのは早計です。むしろ「あんなに利上げを織り込んでいたのに、いざ利上げ、となると我先に逃げだすのがマーケット」です。
こうした反応は「滑稽」に映るかもしれませんが、「インフレを恐れ、利上げも恐れるのがマーケット」です。
意図せざる高いインフレは(設備投資や雇用を決める)企業の活動を困難にさせますし、家計から購買力を奪います。一方で、利上げはいつのときも、文字通り「経済活動を引き締め」ますから(→その極端な例は1981~1982年)、インフレも利上げも恐れるマーケットは間違っていないのです。
マーケットは、利上げを当てるのはうまくない
【図表6】で示すとおり、2年金利は政策金利を先読みして動きます。
【図の緑の矢印】を見ると、過去は、利上げ打ち止め後まもなく、2年金利は政策金利を下回って推移しています。翌日物の政策金利よりも2年金利のほうが低くなる状態は、金融市場が利下げを織り込んでいることを示します。実際、利下げの「読み」は毎回、上手に当たっていることがわかります。
反対に、【赤の矢印】で示すとおり、利上げを読みに行く局面では何度か失敗しています。「利上げ開始は思ったより遅くなる」「FRBは思ったよりハト派である」のが過去の通例です。インフレが高止まりする現下の「利上げ後ずれ」は、長期金利の上昇につながる恐れがあります。
今後は、「6月に利上げをして金融市場は問題ないのか」、「5月も含めて3回利上げするのではないか」といった思惑が入り乱れて、変動性が高まる可能性があります。
まずは利上げ開始までに変動性が高まる可能性があり、ポートフォリオの偏りを調整しておくことをお勧めしたいところです。
それでは良い年をお迎えください。2022年もよろしくお願いいたします。
重見吉徳
フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
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