近畿圏:賃料は上昇基調が続く
近畿圏は、2016年から2017年にかけての大量供給により、空室率は2018年Q1に21.0%に上昇したものの、その後はほぼ一貫して空室解消に向かった。
コロナ禍の2020年も大規模施設が竣工した期を除いて空室率は低下し、過去2番目の大量供給(27万坪)となった2021年も需給が緩むことはなかった。
2022年の新規供給はわずか5.6万坪と、2013年以来の低い水準であるため、2022年Q4には空室率は0.7%まで低下すると予想している。
2023年は23万坪のまとまった新規供給となるものの、既存ストックに対する供給率は13%と、過去と比較して低い水準である(図表5)。
そのため、空室率は2023年Q4時点でも1.7%と低い水準を維持すると予想する(図表6)。開発計画は、滋賀県から兵庫県にかけての新しい地域に分散する一方で、名神高速道路沿いの近畿圏中心部でもみられ、物流立地のバリエーションが広がってきている。
低い空室率を反映して、実質賃料は上昇基調を維持する見通しである。2022年、2023年はそれぞれ2%超の上昇率、2023年Q4に4,310円/坪を予想する。
特にランプウェイを完備した物件は、竣工前の早い段階でテナントを獲得できる確率が高いことから、賃料上昇を牽引するだろう。
中部圏:大型のニーズあるが、空室率は上昇の見通し
中部圏は製造業の一大拠点であることから、新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーン分断の影響により、経済回復への不透明感が大きかった地域の一つである。物流施設についても、一時的に拡大を控える傾向がみられた。
また、2020年、2021年の新規供給は各1棟で、いずれも新興立地だったことも影響してテナントの動きは限定的だった。
しかし、感染拡大が沈静化してきたことに加え、2022年には16万坪、2023年には28万坪の大量供給が控えていることもあり(図表7)、足元では大型の拠点開設や移転ニーズがみられ始めている。
それでも大量供給の影響は避けられず、空室率は2022年Q4に12.4%、2023年Q4に21.2%に上昇する見込みである(図表8)。
今後の新規供給は、物流施設の集積がまだ少ない湾岸地域にも多く竣工するため、テナント獲得競争が激しくなるとみられる。
そのため実質賃料は、2022年はほぼ横ばいを維持するものの、向こう2年間では-0.3%と、わずかながら下落を予想する。
ただし、2023年後半には賃料水準が高い名古屋市内や小牧市で大型の物件が竣工する。これらの物件のリーシングが順調に進めば、全体の賃料が上振れる可能性がある。