ペットの長寿化によって、寿命が短かったころにはみられなかった病気にかかることも増えてきました。本記事では、獣医師として数々の動物の命と向き合ってきた中村泰治氏が、犬の心臓病の9割を占める「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」ついて、症状と早期発見のための対処法を解説します。

進行して肺水腫になると、溺れるような苦痛に

さらに進行すると肺水腫になります。肺水腫とは、毛細血管から血液の液体成分が漏れ出して肺胞の中に溜まる状態です。本来であれば空気を取り込む器官である肺に液体が溜まってしまうことで、肺水腫になると溺れるような苦しさを感じます。肺水腫にまで進行すると、その後は1年ももたないともいわれています。

 

一方で、このように段階を経ないで一気に悪化するケースもあります。僧帽弁を支える腱索が切れて病気になる場合は、無症状から少しずつ症状が現れる時期を飛ばして、一気に重症化することがあります。

 

僧帽弁閉鎖不全症を早期発見するには、定期検診をしっかり受けて、そこで心臓の音を丁寧に聞いてもらうことが重要です。腱索が切れて一気に病気が進むケースを除けば、基本的にこの病気は聴診器で発見できます。

聴診器での心雑音の確認や、血液検査で診断

問診や聴診器で雑音を確認したうえで、診察では心拍数や呼吸数などを計測します。僧帽弁に変性が起きている場合は、血流の減少を補うために心拍数が増えることがあるからです。

 

同時に、血液検査なども実施するのが一般的です。血液検査では犬の全身の状態を調べることができます。特に心臓病では、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)やBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)と呼ばれるホルモンの数値が重要視されています。

 

これらのホルモンは、心臓に負担がかかっていたり、傷害があったりすると数値が上昇することが知られています。そのため心臓病などを把握することができるバイオマーカーとして重要です。

心電図検査やレントゲン、超音波検査も診断に有効

また、心電図検査も有効です。心電図検査は体に電極をつけて、心臓の電気的活動を記録することで心臓の状態を読み取ります。心電図を調べることによって、不整脈の有無などを把握することができます。

 

さらにレントゲン検査を実施すると、病気の状態をより正確に把握できます。レントゲン検査などでは、心臓の大きさや胸や腹に水が溜まっていないかどうかを調べます。

 

レントゲン検査よりも進んで病気の状態を調べるには、超音波検査が必要です。超音波検査は、小さな負担でさまざまな情報を得ることができます。

 

たとえば僧帽弁がどのくらい厚くなっているか、どの程度機能しているかなどを痛みもなく調べることができます。もしもかかりつけ医に超音波検査装置がなければ、検査をできる施設に紹介状を書いてもらうのもよいと思います。

 

 

中村 泰治

獣医師

 

 

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※本連載は、中村 泰治氏の著書『もしものためのペット専門医療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

もしものためのペット専門医療

もしものためのペット専門医療

中村 泰治

幻冬舎メディアコンサルティング

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