マイナスの実質金利が実物投資や資産価格を支える
米国が世界景気をけん引する理由として、財政出動もありますが、金融政策が緩和的であることも大きいと見られます。
以下の図で示すとおり、主要国の実質政策金利を比較すると、米国が最も低く、金融政策のスタンスが最も緩和的です。それは、高いインフレ率のためだけではなく、高いインフレ率に対してゼロ金利政策を続けているという「政策反応」によって実現しています。
マイナスの実質金利が、企業の設備投資や在庫投資、家計の住宅投資につながるほか、金融資産価格と個人消費を支えると見られます。
企業の設備投資について、パンデミック前は、企業が投資の機会を見出せず、「長期停滞論」が言われていました。
しかし、早期リタイアを含むパンデミック後の労働者不足に直面し、企業は省力化・自動化投資に取り組むと見られます。
2.(高齢化を含め労働供給の不足が拡大する中での)労働コスト、
3.テクノロジーの進化
を考え合わせれば、「資本(機械)による代替」はますます進む可能性があります。企業は、売上高が伸び悩む局面でも利益を増やすことを求められるため、生産性向上やコスト削減により、マージンの確保に努めると見られます。
また、企業の在庫投資について、パンデミック前は「ジャスト・イン・タイム」システムの下で、在庫を減らす方向でした。
しかし、企業は現時点で深刻な在庫不足に直面していますし、今後を考えると、生産停滞の継続による仕入れ価格の再上昇を恐れ、多くの在庫を早めに確保するインセンティブ(誘因)を持ちます。さらには、パンデミックを機に在庫の水準を増やす可能性も考えられます。
大幅なマイナスの実質金利は、米国のみならず、世界の企業による設備・在庫投資を後押しする可能性が考えられます。
重見 吉徳
フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
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