社員が成長するためには「仕組み」が必要です。仕組みづくりには3つのポイントがあるといいます。第1は営理念とビジョンの浸透、第2に全社員で作る経営計画、そして第3は経営チームの結成だというのがTOMAコンサルタンツグループ株式会社代表取締役会長で、TOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社代表取締役社長の藤間秋男氏です。第4回は社員が自ら考え働いて成長していく仕組みについて、藤間会長が解説します。

社員育成の仕組み、3つのポイント

永続企業を目指すならば、安易にM&Aを考える前に、後継者探しを真剣に行うことの大切さをお伝えしました。後継者は親族、従業員、第三者の3つから選ぶことができ、それぞれにメリット・デメリットがあります。事業承継を成功させるために重要な共通点が1つあります。それは「仕組み」です。

 

創業社長は一般的にバイタリティにあふれ、カリスマ性があり、先頭に立って会社をぐいぐいと引っ張っていくタイプが多いです。社長は会社の顔で、社内外に大きな影響力を持っています。しかし、後継者に同じことを求めるのは困難です。そこで大切になるのが「仕組み」です。仕組みづくりのポイントは3つあります。

 

第1は、全社員に経営理念とビジョンを深く浸透させることです。理念の大切さはすでに述べました(第3回「なぜか「後継者が育たない、社員が辞めていく」会社の共通点)。

理念の確立ができたら、次にビジョンを確立します。ビジョンとは、全社員が理念に基づき行動した先にある会社の未来像、かなえたい夢などです。当社のビジョンは「日本一多くの100年企業を創り続け1000年続くコンサルティングファームになります」というものです。

 

理念はブレーキで、ビジョンはアクセルの役割を担います。両方ないと車が安全に走行できないのと同じです。理念が社内に浸透すれば、社員は理念に反することは避けようとブレーキを踏みながら仕事を進めます。暴走する心配がないので、社長は安心して仕事を任せられます。

 

それに対して、ビジョンは会社が目指す方向性ですから、そのゴールに向かって自分がやるべきことを社員が理解すれば、行動にも自然とアクセルがかかります。このアクセルとブレーキをうまく使いこなすことで、社員一人ひとりが主体的に動くようになり、経営環境の変化に柔軟に対応できる強い組織になっていきます。

 

 

「経営計画」で社員一人ひとりが成長していく

第2のポイントは、人事評価制度です。理念やビジョンをいくらかかげても、社員に腹落ちさせるのは容易ではありません。そこで社員の適切な人事評価制度や組織体系、働き方を用意する必要があります。それにより社員は会社が目指していることを自分ごととして認識するのです。この仕組みにおいて重要な役割を果たすのが「経営計画」です。

 

経営計画は経営層だけではなく社員全員でつくります。売上目標や中長期計画にとどまらず、各部門、社員一人ひとりがその年の目標を設定し、具体的にどのような行動をとるのかを話し合い経営計画に決意表明します。こうして社員が自ら考え、発案、行動し、年度末に反省を行い、次年度の経営計画に反映させます。この繰り返しによって、社員一人ひとりが成長していくことができます。

 

第3のポイントは、「経営チーム」をつくり、経営を委ねることです。ピーター・ドラッカーも「社長1人で経営はできない、経営チームをつくるべきだ」と指摘しています。具体的には、部長・役員クラスの数人を集めて経営チームを組織し、会社経営で重要な点を共有、浸透させます。社長はなるべく前に出ず、メンバーの闊達な意見交換を尊重し、チームの合意制のような形にして経営を任せます。

 

これにより社長がいなくても「同じ意思決定の思考」が行われる状態をつくっておくのです。経営チームのメンバーについて、ドラッカーは全社員の5%程度が適切だと言っています。当社は12人(全社員の約6%)で構成しています。10人規模の小さな会社でも3人はそろえたいところです。

 

メンバーは発言内容や提案力などに応じて適時入れ替えます。そうして優秀な人材が経営チームのメンバーになるような仕組みにします。ここで後継者の育成も行えます。次期社長は経営チームの中から選ぶようにすれば、メンバーは切磋琢磨するようになり、社員が納得のゆく優れた後継者が選べます。

 

円滑な事業承継を成功させ、会社を永続発展させるためには、これらの「仕組み」、そして入念な準備が不可欠です。どれか一つでも欠けてはいけません。

 

マクドナルド人事制度に学ぶ「後継者育成」

ところが、経営者の中には目の前の仕事で手一杯のため、準備の時間などないという人もいます。それは例えるなら、木こりが切れない斧で懸命に木を切っているのと同じです。斧を研いで切れ味をよくすればいいのですが、忙しいからそんな時間はないと力まかせに切り続ける。経営者も同様に、効率よく仕事を進めるためには、仕組みをつくらなければいけません。それを後回しにしているため業績も悪くなっていくのです。

 

実際、私もそうやって事業承継を行いました。理念とビジョンの確立と浸透がある程度できた段階で、現在の社長にバトンタッチしました。事業承継がうまくできる土壌ができたと判断したからです。

 

最後に人事評価に関して、私が優れていると感銘したマクドナルドの例を紹介します。マクドナルドでは、米国本社から日本の経営幹部に定期的に「あなたのポジションを継ぐ人はいるか」という問いがくるそうです。幹部の評価制度の一番のウェートは、次の後継者をつくっているかどうかなのです。

 

これは非常に大事なことだと思います。社長が事業承継のために後継者を育てるのと同じく、部長も自分の後継者をつくらなければいけない。そしてバトンタッチした後は、自分は役員など上のステージに上がるのです。マクドナルドでは3年くらいで後継者をつくれないと評価が下がるそうです。この評価制度は会社全体が底上げされ、成長につながります。

 

藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社
代表取締役会長

 

取材・構成/田之上 信
※本インタビューは、2021年8月10日に収録したものです。

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幻冬舎メディアコンサルティング

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