(※写真はイメージです/PIXTA)

2020年だけでも、アメリカで2万5000店が閉鎖に追い込まれ、さらに大型ビル内に店舗が並ぶショッピングモールの25%から最大50%ほどが数年の間に営業を停止すると予測されているという。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

経営破綻の第一波は元から弱っていた小売企業

多くのブランドは、消費者がウイルスの感染拡大に翻弄されるなか、信用を取り戻せなかった。となれば致命的である。ささやかな収益源もロックダウン(都市封鎖)で完全に干上がってしまったのだ。

 

秋口には、毎日発表される膨大な感染者数に多くの人々が慣れきってしまったのと同様に、小売業界の新たな経営破綻のニュースに接しても、さして驚かなくなってしまった。

 

ファッション系情報サイト『ビジネス・オブ・ファッション』に2020年に掲載された記事で、アパレルブランド「セオリー(Theory)」の創業者アンドリュー・ローゼンは次のように語っていた。

 

「業界全体の浄化が始まり、元から経営不振だった企業は消えていき(中略)、切り抜けられる企業はこれまで以上に大きなシェアを確保します。同時に、新規参入の余地が生まれ、成長の新たな機会ももたらされます。」

 

パンデミックの倒産ドミノは終わらないという。(※写真はイメージです/PIXTA)
パンデミックの倒産ドミノは終わらないという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

長い目で見ればローゼンの見立てどおりだと思うが、筆者としては、短期的にもっと厄介な状況にあると見ている。

 

パンデミックの最初の段階で相次いだ経営破綻に人々は動揺したが、残念ながら真実は、こうしたブランドの大半が元々、集中治療室に入っていたようなものだったし、生命維持装置が手放せないケースもあった。もっと言えば、失業の憂き目にあった労働者の悲劇は別として、経営破綻ブランドのなかで、消滅してしまって残念と思えるブランドがどれほどあっただろうか。

 

こうしたブランドの消滅に涙を流す人々がどれほどいるだろうか。実は、パンデミックの前から、このようなブランドの大半がすでに消費者の視界から消えていたのではないか。ブランドの凋落は痛ましいけれども、想定外ではなかった。

 

問題は、パンデミックがまだ収束していない点だ。小売業界を襲った経営破綻の第一波は、元から弱っていた企業や問題を抱えていた企業の命を奪っていった。それは予見できた。だが、読者が本稿をお読みいただいているころには、もっと深刻な波が押し寄せているはずである。しかも、本来なら健全だったはずの企業にも悪影響が出ているはずだ。

 

■不況のドミノ倒しは終わらない

 

2020年6月、アメリカで雇用統計が発表され、雇用数が480万人増となった。トランプ政権(当時)は、このニュースをすべてが正常化に向かうシグナルに利用するつもりだった。あまりいいニュースを耳にしない時期だっただけに、多くの人々はこの発表を額面どおりに受け取った。

 

だが、よく見れば、この数字が語っていたのは、別のストーリーだった。第1に、発表にあった480万人という数字だが、これは新規に創出された雇用ではなく、経済活動再開で復活した雇用数に過ぎない。それに、パンデミックの初期の段階で失われた雇用数に比べれば、この数字はほんの一部だった。

 

第2に、雇用統計をじっくり読み込んでいくと、大統領の発表には盛り込まれなかった項目が見つかる。ほぼ60万人のアメリカ人労働者が永久解雇となっていて、パンデミックによる永久解雇の総数は約300万人に達していたのである。

 

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小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

ダグ・スティーブンス

プレジデント社

アフターコロナに生き残る店舗経営とは? 「アフターコロナ時代はますますアマゾンやアリババなどのメガ小売の独壇場となっていくだろう」 「その中で小売業者が生き残る方法は、消費者からの『10の問いかけ』に基づく『10の…

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