「詐害再審」に対する検討
(1)民事訴訟は、基本的には私人間の私的紛争を解決するものである。このことから訴訟における攻撃防御は、もっぱら各当事者の権能かつ責任に委ねられ、判決の既判力も、原則として当事者間にしか及ばない(民事訴訟法115-1)。
ただ、時として、第三者に害を及ぼすべく、意識的に馴合訴訟が行われるという事態も生じうる。かかる事態を避けるため、法は、いくつかの場面で、かかる馴合訴訟に基づいて獲得された確定判決に対し、再審の訴えを設けている(会社法853、特許法172、行政事件訴訟法34)。これを詐害再審という。
(2)民事手続に関する一般法である現行民訴法は、詐害再審の規定を置いていない。詐害再審に関する規定は、実は、旧旧民訴法(明治24年法律第29号)には、規定が置かれていたが(旧旧民訴法483)、旧民訴法(大正15年法律第61号)で削除されたものである。現行民訴法の立法過程でも導入が検討されたものの、結局見送られ、現在に至っている。
本Caseは、前記諸法が直接規定する場合以外にも、詐害再審と評価すべき場合がありうることを如実に示している。独立当事者参加の形を借りて、再審の訴えを許容する最高裁の立場は、1つの解釈上の便法として支持されるべきであろう。
松嶋 隆弘
日本大学教授
弁護士
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