本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●前回の米利上げ局面においてドットチャートは将来の利上げ回数をどのように予想したか検証する。

●2015年の米利上げについて、ドットチャートは2012年9月に3回を予想したが、実際は1回だった。

●ドットチャートの利上げ初期段階の見通しは利上げ間近でないと確度が高まらないように思われる。

前回の米利上げ局面においてドットチャートは将来の利上げ回数をどのように予想したか検証する

ドットチャートとは、米連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図です。6月16日に公表された最新のドットチャートでは、分布の中央値から、2023年に0.25%の利上げが2回あるとの見方が示されました。前回3月時点で、2023年は利上げなしとの見通しだったため、米早期利上げに対する警戒感が強まり、米国など主要国の株式市場に一時動揺が広がりました。

 

6月18日付レポート『FOMC後の市場環境を考える』では、政策意図を示す基本手段はFOMC声明であるため、ドットチャートについては、その変化にあまり一喜一憂する必要はなく、少なくとも過信は禁物と解説しました。そこで今回のレポートでは、前回の米利上げ局面において、ドットチャートは将来の利上げ回数について、どのような予想をしていたか、検証してみます。

2015年の米利上げについて、ドットチャートは2012年9月に3回を予想したが、実際は1回だった

前回の利上げ局面を振り返ると、2015年12月16日に最初の利上げが行われ、ゼロ金利政策が解除されました。その後、段階的に利上げが実施され、最後の利上げは2018年12月19日でした。利上げ回数は、2015年に1回、2016年に1回、2017年に3回、2018年に4回の計9回となりました。利上げ幅はいずれも0.25%で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は、ゼロ金利政策時の年0.00%~0.25%から、最後の利上げで年2.25%~2.50%に引き上げられました。

 

まず、2015年の1回の利上げについて、ドットチャートで最初に見通しが示されたのは、2012年9月のFOMCで、示唆された利上げ回数は3回(利上げ幅は0.25%、以下同じ)でした【図表】。

 

(注)年月はドットチャートが公表された年月。回数はドットチャートが示唆する0.25%の利上げ回数。正確に予測できた回数には色を付けた。 (出所)FRBの資料、Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
【図表】ドットチャートが示唆する米利上げ回数 (注)年月はドットチャートが公表された年月。
回数はドットチャートが示唆する0.25%の利上げ回数。正確に予測できた回数には色を付けた。
(出所)FRBの資料、Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

その後、2014年9月のFOMCでは、5回の利上げ見通しが示されましたが、結局、正しく予測できたのは、2015年9月(年内1回)と12月(利上げ後に年内0回)のドットチャートで、利上げ間近のタイミングでした。

ドットチャートの利上げ初期段階の見通しは利上げ間近でないと確度が高まらないように思われる

次に、2016年の1回の利上げについて、ドットチャートで最初に見通しが示されたのは、2013年9月のFOMCで、4回の利上げが示唆されました。こちらも、正しく予測できたのは、2016年9月(年内1回)と12月(利上げ後に年内0回)のドットチャートで、利上げ間近のタイミングでした。なお、利上げが軌道に乗ったことで、2017年の3回の利上げについては、2015年と2016年に比べて、予測の精度に改善がみられました。

 

しかしながら、2018年の4回の利上げについて、正しく予測できたのは2018年6月以降のドットチャートで、再び精度は低下しました。つまり、将来の金融政策の予想は、政策を決定できるFOMCにとっても、決して容易ではないといえます。また、前回の経緯を踏まえると、少なくとも利上げの初期段階の見通しについては、利上げ間近にならないと確度が高まらないように思われます。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『前回の米利上げ局面におけるドットチャートの予測精度』を参照)。

 

(2021年6月25日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

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