多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「発展途上国の貧困」が密接につながっていることはあまり知られていません。そこで、池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)より、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと貧困について解説します。

紛争による飢餓を救ったコーヒー農園

飢餓は、紛争など、人為的な問題により引き起こされることもあります。コロンビアの中部にあるフラグア農園は、風光明媚な山稜に沿った広大な敷地を有する農園です。

 

1876年に開かれた非常に歴史ある農園で、5代目となる女性農園主のフォアニータ・シニステーラ・フンギートは、山の中腹までをコーヒーやマカデミアナッツ栽培に利用し、岩石の多い高地では牧畜を行っています。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

母屋の前に建設された精選工場には、1階部分に当地でのコーヒー生産の歴史を綴る様々な精選機材が保管されており、その様子はまるで小さなコーヒー博物館のようです。

 

実はフラグア農園には内戦で負った深い傷があります。1995年、コロンビア国内で激化していた内戦は、ついにフラグア農園のあるクンディナマルカ県にまで及び、紛争に巻き込まれた農園はコロンビア革命軍(FARC)の支配下におかれたのです。農園に住んでいたフォアニータと家族はゲリラによって追い出され、自分の農園や施設に立ち入ることができなくなってしまいました。

 

2002年に新政権が誕生し、コロンビア革命軍は地域から撤退したため、農園もやっと解放されましたが、農園に戻ったフォアニータは、荒れ果てたコーヒー農園と周辺地域を目の当たりにして愕然としました。

 

農園の多くのコーヒー樹は根こそぎ抜かれ、施設は荒れ果てていたのです。農園で働いていた人々の家を訪れたフォアニータは、さらに強いショックを受けました。長引く内戦の影響で、食料の入手が困難になり、長期にわたる栄養不足から大人は痩せ細り、栄養失調の子どもたちの腹は大きく膨れ上がっていたのです。

 

それは目を覆いたくなるような悲惨な状態でした。内戦の最中、ゲリラは人々の家を襲い、食料を奪い、12歳以上の子どもたちを戦士として連れ去っていたのです。もともとコロンビアのこの地域は天候には恵まれており、干ばつや食料不足とは無縁でした。

 

たとえ経済的に豊かだとは言えなくても、農園の長い歴史の中で人々が食べるのに困るような状況に陥ることなど一度もなかったのです。長い内戦は、前線で闘う兵士たちに食料が優先的に提供されるという不公平な状況を作り出し、それによって農園の人々は飢餓に陥っていたのです。

 

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コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

あたなの知らない、コーヒーとSDGsの世界。 コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える旅。 コーヒーには、SDGsのアイデアがあふれている! #コーヒー危機と世界経済 #コーヒーがもたら…

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