2020年、新型コロナの感染拡大で世界の自動車産業も大きな打撃を受けた。ほぼすべての自動車メーカーが巨額赤字を計上するなか、トヨタ自動車は2020年4月~6月期の連結決算(国際会計基準)では、当然のように純利益1588億円の黒字を叩き出した。しかも、2021年3月期の業績見通しは連結純利益1兆9000億円と上方修正して、急回復を遂げる予想だ。トヨタ自動車はいったい何を行ったのか、そして命運を分けたものは何だったのかを連載で明らかにする。本連載は野地秩嘉著『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

新型コロナ感染拡大で、世の中はどう動いたか

新型コロナウイルスの蔓延を受けて、世の中はどう動いたか。時系列で整理するとだいたい次のようになる。

 

2020年1月。真夏に開かれるオリンピックを前に、国民は経済が活性化することに期待していた。

 

「景気はますます良くなって、自分たちの懐も潤うに違いない」

 

日本中、そんな雰囲気だったのである。

 

トヨタは平時のリスク管理、非常時には危機管理に動くという。(※写真はイメージです/PIXTA)
トヨタは平時のリスク管理、非常時には危機管理に動くという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ところが、1月の中頃から中国の武漢で新型コロナウイルス感染症の患者が増加したことがわかる。23日、中国政府は時を置かず、武漢市を封鎖した。ロックダウンが始まったのだった。

 

現地で日産、ホンダなどの工場は封鎖され、操業停止となった。トヨタが危機を感じたのはここからだ。

 

1月30日には世界保健機関(WHO)が公衆衛生上の緊急事態を宣言。

2月3日、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が横浜に入港。

2月4日、トヨタは本社隣にある事務3号館の1階大部屋に新型コロナ危機に対する対策本部を設置。

2月26日、日本政府がイベントの自粛を要請。翌27日、政府は全国の小中高校に一斉休校を要請。

 

3月11日、WHOがパンデミックを宣言。センバツ高校野球が史上初の中止。

3月24日、東京オリンピック・パラリンピックの1年延期が決定。

3月29日、志村けんさん亡くなる。

 

一般の人々が新型コロナに関して恐怖を感じたのはこの日、そして女優、岡江久美子さんが亡くなった(4月23日)後からだ。

 

4月7日、東京、大阪などの全国の7都府県へ緊急事態宣言を発令。

4月16日、緊急事態宣言を全国に拡大。

5月10日、中国、武漢の感染者が減り、1人となった。

5月14日、政府は39県の緊急事態宣言を解除。

 

このあたりでトヨタの生産現場における対策本部の活動は休止。ただし、対外的な支援活動は続いた。

 

5月25日、東京、神奈川など残る5都道県の緊急事態宣言を解除。

6月19日、東京など首都圏の1都3県や北海道の、都道府県をまたぐ移動の自粛要請が解除。

トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力

トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力

野地 秩嘉

プレジデント社

コロナ禍でもトヨタが「最速復活」できた理由とは? 新型コロナの蔓延で自動車産業も大きな打撃を受けた―。 ほぼすべての自動車メーカーが巨額赤字となる中、トヨタは当然のように1588億円の黒字を達成。 しかも、2021…

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