新型コロナウイルス感染拡大で医療現場はひっ迫し、医療崩壊ともいわれるなど、現場の医師や看護師、そして病院に注目が集まった。全国に緊急事態宣言が出された大混乱のさなか、ある医師から一本の電話がヘッドハンターにかかってきた。「どうやら資金ショートの噂が広がり、来年の春まで持たない。紹介できる病院はないか」と。もはや病院といえども安心の職場ではなくなった。ヘッドハンターが医師の転職の舞台裏を明かす。

岡山大学病院は諦めていないと考える理由

ところが、この構想は頓挫してしまいました。ただ、構想は失敗したといわれていますが、私はまだその火は消えていないと見ています。理由の一つは、羽田空港の東京モノレールに乗ると、岡山大学病院の大きな広告がいまも出ていることです。広告のメッセージは、日本版UPMCで、世界に向けて発信されています。岡山大学病院はまだ諦めていない証ではないかと私はにらんでいます。

 

一方、琉球大学でも同様の動きが出ています。2015年に返還された米軍キャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区(宜野湾市)に、琉球大学医学部と付属の琉球大学病院の移転が予定されており、2024年度までに完了し、2025年度の開学、開院を目指しています。

 

移転を機に、医療や健康をテーマとした特徴的なまちづくりを進めるために、高度医療機能を導入するとともに、高度な治療を行う専門人材の育成、先進的医学研究開発などの機能を集積させた「国際交流拠点」の形成を目指しています。これは国の方針に基づき、医療の輸出を行う環境を整えるようにするものです。

 

ほかにも、国際医療福祉大学の医学部新設があります。医療費抑制政策の一環として、国は長年、医学部の新設を認めませんでした。ところが、同大学の成田キャンパス(千葉県成田市)の医学部は、国家戦略特区制度により新設が認められたのです。

 

同校は医療の輸出、国際医療交流の拠点に位置づけられており、だから医学部新設の認可が下りたのだと私は見ています。実際、授業はすべて英語で行っており、同校のホームページを見ると、発展途上国を中心に世界各国から若者を受け入れていることがわかります。

 

成田キャンパスは成田国際空港に近く、海外からのアクセスがよいことも大きいと思います。前述の岡山大学も空港に近く、新幹線もあるのでアクセスがいい。国は医療特区やそれに準じるエリアを本気でつくろうとしていることがうかがえます。

 

医療の輸出の対象となる発展途上国や地域は世界中にたくさんあります。中東は米国が押さえ、アフリカは中国が押さえる中、日本はアジア地域に進出したいと考えていると思われます。中東やアフリカも一部は可能でしょうが、全体的な勢力図からみるとそういうことになると思います。

 

UPMCの成功に見られるように、医療産業は経済のエンジンになり得ます。医療で稼いだ利益を社会に還元し、街づくりに投資し、雇用も創出する。さらには国際医療交流を深め、海外進出や医療の輸出により外貨を獲得し、国の財政赤字解消につなげるというのが、国の戦略です。日本の医療はこれまで社会保障費だけに頼ってきましたが、将来は医療が日本経済を引っ張るけん引役になることが期待されています。

 

武元 康明
半蔵門パートナーズ 社長

 

 

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