新型コロナウイルスの感染拡大で日本人の働き方が大きく変わった。多くの企業でオフィスワークを在宅勤務に切り替えるなど対応に追われた。出版業界も例外ではない。出版社もリモートワークが始まり、新しい働き方が模索されている。都心部の大型書店は休業を余儀なくされ、出版業界も撃沈かと思われたが、売り上げ好調で予想外の健闘をしている。いま出版業界で何が起きているのか。新型コロナ禍の下での出版事情をレポートする。

コロナの影響をまともに受けた海外旅行ガイド

紙から電子書籍への過渡期にある出版業界では、生き残りを賭けたM&Aの動きが活発化している。会社まるごとではなく、不振に陥った事業だけ整理する事例もある。

 

ダイヤモンド・ビッグ社は、11月16日、『地球の歩き方』をメインコンテンツとする旅行ガイドブック出版事業およびインバウンド事業を、学研プラスに譲渡する契約を締結したことを発表した。

 

『地球の歩き方』は海外旅行ガイドの草分けだ。1979年から40年間、世界169の国・地域を巡り200冊以上を発行してきた。海外旅行のスーツケースを開けると、必ず衣類の上に分厚い同ガイドが入っていた時代があった。今なお海外旅行ガイドブックのトップブランドである。

 

地球の歩き方編集室『地球の歩き方 東京2021~2022』(ダイヤモンド・ビッグ社)
地球の歩き方編集室『地球の歩き方 東京2021~2022』(ダイヤモンド・ビッグ社)

「本年に入り、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により海外旅行関連の事業環境が大きく変動したこと等を受け」──譲渡に至った経緯をダイヤモンド・ビッグ社の三橋和夫社長はこう説明(ニュースリリース)する。

 

さもありなん。この1年間、日本はほぼ鎖国状態だった。海外旅行に出かけた人は数える程度だろう。海外旅行のガイドブックほどコロナの影響をもろに被った出版物もあるまい。ただ、内部事情を知らない外野から見ると見切りが早過ぎる気がしてならない。

 

コロナで海外旅行がストップしたとはいえ、まだ1年も経っていない。それに、『地球の歩き方』のブランド力は廃れていない。現に今年、創刊40周年を記念して初の国内版『地球の歩き方・東京』を出し、発売2カ月で7万部を達成したという。

 

事業を承継することになった学研プラスも、同日のニュースリリースで「コロナの収束は未だ見通せず、市場の足元の回復は楽観できない」と状況分析をしており、コロナ終息後の復調を見込んでというわけではないらしい。

 

戦力外通告を受けた他球団の大エースを獲得する狙いはどこにあるのか。学研プラスは、「当事業が学研グループ全体の今後の二大成長戦略である“DX”と“グローバル”での拡大に寄与するものと考え、事業を譲り受けることにした」と。

 

グローバルはいいとして“DX”っていったい何だ? 早い話、学研プラスは『地球の歩き方』の何に投資したのだろうか。

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