新型コロナより怖い、老人抹殺社会の現実が忍び寄ってきている。「老人はもう長生きしない。なぜなら、老人を殺してもおかしくない社会になっているからだ」――。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が明かす、驚愕の事実。超高齢化社会ニッポンが抱える問題点を明らかにする。本連載は小嶋勝利著『もはや老人はいらない!』(ビジネス社)から一部を抜粋、編集したものです。

公共事業とベーシックインカムは同じ理屈

そのような人たちの受け皿として、一昔前まではゼネコン(総合土木建設会社)が役割を担っていたと思います。そのため国は公共事業をたくさん考え、全国に箱モノを作り、ゼネコンに仕事とお金を供給しました。ゼネコン側はトンネルやダム、橋、道路、鉄道、役所などの公共施設を建設し、多くの労働者を必要としました。その中には必要な資金を得るために一時的に働きたい人や、失業中で仕事を探している最中の人も多く含まれていたと思います。

 

長期的には仕事をしたくない人や、デスクワークや人とのコミュニケーションを必要とする仕事が苦手な人などもいたと思います。つまり公共工事をたくさん発注することによって、ゼネコンの仕事を作り、雇用を作り、結果、失業者を減らす調整弁を担っていたと私は考えています。もちろんそこには大量の失業者に対し捻出しなければならない生活保護費という税金と、公共工事を作り出し発注することにより生じる費用という税金とを較べ、どちらが国として有利であるかという判断は当然あったと考えています。今の社会で、ベーシックインカムが論じられていることと同じ理屈なのではないでしょうか。

 

しかし当時を思い出してください。世論による〝公共工事は無駄遣い〞という論に端を発し、「談合」とか「利権」とか「贈収賄」などのキーワードで、ゼネコン汚職が発覚し、スーパーゼネコンの経営者らが次々に逮捕されたことを。建設物を造っても、そのメンテナンス費用に莫大なコストがかかるので「箱はもう要らない」という見出しが当時の新聞記事の中で躍っています。

 

その結果として公共工事は激減し、それに伴いゼネコンの許容雇用量は減り、失業者の受け皿がなくなっていきました。その代わりに出現したのが介護業界であると私は考えているのです。当時、私が老人ホームで施設長をやっていた頃、毎月のように金融機関やメーカーなどの早期退職者組が再就職コンサルタントと称する会社から紹介されたとして大量に転職してきたことを覚えています。大企業でオーバーフローしてしまった人材を無料で紹介しますよという謳い文句で、人材紹介会社が人を紹介してきました。しかし大変残念な話ですが、彼らの多くは介護職員という仕事になじめず、1年程度で新たな職場をめざしてふたたび転職をしていってしまったのです。

 

さらに言うと、彼らのような人材を介護業界にたくさん輩出するために1級ヘルパーという資格が誕生しました。私は国の考えを知る立場にはありませんが、現象から考えると、次のような考えがあったのではないかと推察できます。

 

介護保険業界は国の制度に基づいているゆえ、拡大も縮小も国がコントロールすることができます。今後はしばらく拡大させていくので当然、そこで働く人材は必要です。ついては他の業界で持て余している人材を介護業界に循環させるために、前もって教育をしてから介護業界に投入しようというもくろみで1級ヘルパー制度が誕生しました。

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