新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

映画館、ライブ、テーマパークの存続危機

コロナ禍は人が集まることのリスクを顕在化させた存在ですが、人が集まる最も危険なビジネスが、映画館やライブ、テーマパークといった集客型ビジネスです。ライブは2020年2月に大阪市内のライブハウスがクラスターとなって感染が続々発表され、人々を震撼させました。

 

同様に人が集まることによって事業として成立する映画館やテーマパークも休館、休園を余儀なくされました。私自身も年に数十回の講演をお引き受けしていますが、講演も大勢の方が集まることから延期やキャンセルが続出しました。

 

コロナ禍で人が集まる最も危険なビジネスが、映画館やライブ、テーマパークといった集客型ビジネス。(※写真はイメージです/PIXTA)
コロナ禍で人が集まる最も危険なビジネスが、映画館やライブ、テーマパークといった集客型ビジネス。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

人を集めることの意味合いは何でしょうか。ビジネスとしての効率を高めるために、一度にたくさんの顧客を集めることは必要です。ただ集客型ビジネスの特徴はそれだけに留まりません。顧客が同じ場所に集まって同時に同じ経験をする、同じ感動を味わうことによって一体感を醸成することに意味があるビジネスだからです。

 

誰かが良いと思ったこと、感動した姿を見ると自分も同じような気分になる。自分の感動が他人にも伝わると自分の感動も増幅される、こうした感動の輪が広がることが、ライブ全体の価値を高めていく効果があるのです。

 

映画館や劇場などでは、演目が終わると感動に咽ぶ観客がパンフレットやCDを買っていきます。人々はその場での感動を家に戻っても反芻したい、あるいは見に来なかった人にも伝えるために記憶に留めておきたいと考えるからです。ここに集客型ビジネスの真髄があるのです。

 

ディズニーランドに行くと、老若男女がなんだか幸せな気分になります。そもそもミッキーマウスやドナルドダックなんて、ただの着ぐるみにすぎません。ところがディズニーランドという現場に足を運び、シンデレラ城の前に佇み、その傍らにミッキーとミニーが寄り添えば、人々は幸せな気分に浸ることができます。

 

これがもし、誰もいない場所、たとえば暗がりの路上なんかで彼らに会ったら、おそらく嬉しいどころか恐怖さえ覚えるかもしれません。

 

たくさんの人々が集まって「やあ、ミッキー。おはようグーフィー!」なんてやって感動するのはディズニーランドというハレの場にいるからであって、おそらく現代という時間軸から見れば、古めかしい着ぐるみに身を包んだネズミの出来損ないに、普通は感動することは少ないのではないでしょうか。

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