65歳以上の4人に1人が認知症になる時代、希望どおりの相続を実現するには認知症対策が欠かせません。被相続人は、元気なうちに、遺言書・任意後見契約・死後事務委任契約からなる「終活3点セット」を作成しておきましょう。ここでは「死後事務委任契約」について解説します。※本連載は、OAG税理士法人取締役の奥田周年氏監修の『親が認知症と思ったら できる できない 相続 暮らしとおかねVol.7』(ビジネス教育出版社、『暮らしとおかね』編集部)より一部を抜粋・編集したものです。

自分亡き後の諸手続きを依頼する「死後事務委任契約」

「死後事務委任契約」とは、自分が亡くなった後の葬儀や納骨、埋葬などの諸手続を行ってもらう、死後の事務を委任する契約です。一般的には、故人の家族や親族が行っているので、なじみが薄いかもしれません。

 

しかし、2040年には、65歳以上の単身世帯は男女とも2割を超えると推計されています。こうした一人暮らしの高齢者をはじめ、身寄りがない高齢夫婦、親戚がいても頼めない人など、今後さまざまな人が死後事務を検討することになると予想されます。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

なお、契約のタイミングは遺言書や任意後見契約と同様に、元気で判断力のあるときに結ぶ必要があります。

 

「終活3点セット」のうち、まずは遺言書によって、本人の財産の分割方法や祭祀財産の承継人の指定などができます。また、任意後見契約によって、本人が認知症になった場合の財産の管理、介護や生活面のサポートを依頼することができます。

 

これで生きているうちのサポートと死後の財産などに関しては安心ですが、その先、つまり亡くなった後の事務を代行してくれる人がいると安心です。そうした人を死後事務委任契約で依頼するわけです。

 

なかには、「葬儀の予約もした」「お墓の生前契約もした」という方もいると思いますが、実際に契約を履行するとなると、すでに本人はいないわけですから、どうしても本人に代わる代理人が必要です。

 

契約内容はさまざまで、たとえば本人の危篤の連絡を受けて「駆けつける」ところから始まり、「遺体の引取り」「自宅や入院先の遺品整理」、さらには「各種支払い手続き」など、あらかじめ契約で決められた内容を代行してもらえます。

 

<死後事務委任契約で依頼できること(例)>

 

●死亡直後の緊急対応

・死亡または危篤の連絡を受けた際の病院や入所施設等への駆けつけ

・死亡診断書、死亡届など必要書類の受領・提出

・火葬許可証の取得、遺体引取り、火葬・葬儀の手配

・指定されている関係者へ死亡の連絡、通夜葬儀の案内

・病院・施設の居室内の私物整理

 

●通夜、告別式、埋葬

・本人の希望に沿った葬儀・火葬を行い、遺骨を収骨。指定の墓地・納骨堂へ埋葬、または散骨

 

●役所等への各種届け出の手続き

 

●医療費の支払いに関する事務

・入院・入居費の精算、解約などの諸手続き

 

●家賃、地代、管理費、公共サービスに関する支払いなど、不動産賃貸契約の解約、引渡し、敷金・保証金等の支払いに関する事務

・電気・ガス・水道・電話等の解約・精算

 

●後見人の選任申立手続きに関する事務

 *専門家への報酬は、手続き1件につき1~15万円が相場です。

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親が認知症と思ったら できる できない 相続 暮らしとおかねVol.7

親が認知症と思ったら できる できない 相続 暮らしとおかねVol.7

監修:奥田 周年
執筆協力:IFA法人 GAIA
編集:『暮らしとおかね』編集部

ビジネス教育出版社

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