「私は亡くなった父と一緒に住んでいなかったから、小規模宅地等の特例は無理かな」と諦めていた方も、「家なき子特例」だったら適用できる可能性があります。今回は「家なき子特例」について解説します。※本連載は、新宿税理士事務所の税理士である坂根崇真氏が、相続税対策の基礎知識について解説します。※本記事は 「新宿相続センター」掲載の記事を転載・再編集したものです。


 

【Q&A】

①3親等以内の親族とは?


簡単に説明すると、親戚のことです。親戚が所有していた家に住んでいた場合も、家なき子の特例を受けることができません。

 

3親等ってどこまでの親戚?
3親等ってどこまでの親戚?
出典:あんしん相続税(https://tax.brushmaker.co.jp/souzokuzei/ienakiko/ )

 

【Q&A】

②特別な関係にある法人とは?


特別な関係にある法人とは、主に自分が経営する会社や自分が大株主となっている会社のことです。こういった関係にある会社が所有する家に住んでいた場合は、家なき子の特例を受けることはできません。

 

③相続する自宅を相続税の申告期限まで所有していること

家なき子特例を含む小規模宅地等の特例で特に気をつけなければならないことが、相続した自宅を「相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」です。

 

相続税の申告書を作成する際は、税理士が特例の適用判断のサポートを行い申告を行います。ただし、それだけで一件落着とならないのが、この特例の怖いところです。

 

※家なき子特例を適用して相続税の申告書を税務署へ提出したあと、相続税の申告期限を待たずに相続した自宅を売却・贈与してしまうと、本来満たしていたはずの【家なき子特例の適用要件】を満たさないことになってしまいます。

 

家なき子特例の要件を満たし、かつ、相続税の申告期限を過ぎてから売却・贈与を行うのであれば法律上は問題ないと考えられます。

 

しかし、相続した自宅を相続税の申告期限まで保有していることが家なき子特例の要件となっていますので、売却のタイミングは注意が必要です。

 

不動産を売却するときは、家なき子特例のように知らなければ損をしてしまうものもあれば、逆に知っていると得する制度もあります。相続した不動産を売却する際は、事前に税理士へ相談することをオススメします。

 

④過去に一度も所有していたことがない家屋に居住していること

家なき子特例を使う相続人が相続開始日(被相続人が亡くなった日)時点において住んでいる家屋が、過去にその相続人が一度も所有したことのない家屋であることが要件となっています。

 

《例》

・相続人の所有する自宅を自身の子供(被相続人から見た孫)に贈与し、相続開始日時点までその自宅に居住していた相続人

→持ち家ありと判断されます。以前に相続人自身が所有したことのある家屋に居住しているため、家なき子特例は適用できません。

 

・相続人(子ども)所有の自宅を被相続人(親)に買い取ってもらい、その自宅に引き続き居住していたが、その後賃アパートに引っ越して5年後に被相続人が亡くなった場合の相続人(子ども)

→家なき子特例を適用できる可能性があります。

 

相続開始日時点に居住する家屋は過去に一度も所有していたことがない賃貸不動産であり、被相続人に買い取ってもらった家屋には相続開始前の3年間は居住していなかったため、家なき子特例を適用できる可能性があります。

 

 

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