本記事は、ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクターの深澤了氏の著作『「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング』より、一部を抜粋・再編集したものです。

リクルートが創出した日本の「採用インフラ」

戦前からはじまる「就職活動の歴史」

 

日本で初めて大学が設立されたのは1870年代のこと。当時、学界や官界を目指していた学生に対し、三菱をはじめとする産業界も積極的に働きかけるようになりました。

 

新卒採用の代名詞とも言われる「新卒一括採用」が本格的に始まったのは、第一次世界大戦後の1920年。不況を背景に応募者が殺到し、選抜試験が慣例となりました。

 

ただ一方で、新入社員の解雇や採用取り消しなどが常態化し、就職ガイダンスや模擬面接を行う大学が急増。大学生の就職に対する在り方も問われていくことになります。

 

その後、日本は高度経済成長期を経て、就職活動の自由化が進んでいきます。学部の垣根を越えた自由採用が本格化し、学生は大学側の推薦に頼ることなく、自ら就職先を探すようになるのです。それにより、これまでの採用活動は大きく変わりました。

 

特に注目したいのは「就職情報産業」の拡大です。就職に関する情報が重宝されるようになり、1963年に創業したリクルートをはじめ、その情報を提供する企業も誕生しました。このことは、現代の就職活動に大きな影響を与えました。

 

「採用メディア」を中心に構成された既存の採用フロー

 

では、現代ではどのようにして採用活動が行われているのでしょうか。

 

現状、人材を募集しているほとんどの企業では、いわゆる「採用メディア」を中心に据えた採用活動が行われています。

 

例えば新卒採用であれば、「リクナビ」「マイナビ」「エン・ジャパン」などの採用メディアが有名で、既卒(中途)採用であれば「リクナビNEXT」「マイナビ転職」「DODA」などが挙げられます。これらの採用メディアが主軸となり、採用フローが形成されているのです。

 

具体的には、採用メディアに自社の求人情報を掲載することで、次のステップへと至る母集団が集まります。母集団が集まることで、相当数の応募者に、説明会や面接へと進んでもらうことが可能となるのです。

 

そのフローに乗ってきた応募者の中から自社が求める人材を選定し、内定を出し、内定者フォローを経て実際に入社してもらう。これが採用メディアを中心とした採用フローの大枠となります。

 

今紹介した既存の採用フローは次のようにまとめられます。

 

① 採用メディアへの登録

 

② 説明会の開催

 

③ 選考(面接)

 

④ 内定

 

⑤ 内定者フォロー

 

このうち、既卒の場合には、説明会や内定者フォローといった手順を省く場合もありますが、おおむね流れは同じです。新卒のように1年がかりの採用活動ではなく、2週間~1カ月ほどで1サイクルを回していきます。

 

これが、リクルートが創出した、日本の採用インフラの全体像です。

 

過渡期にある採用活動

 

特筆すべきは、会社の規模や歴史、業種、業態にかかわらず、ほとんどの企業がこのような流れで採用活動を行っていることです。

 

どこも同じような流れで選考を行っているので、他社との差別化が難しく、集まった母集団の中から選ぼうにもなかなか母集団が集まらないという現実があります。まさにレッドオーシャンでしのぎを削り合っているのです。

 

今後、労働人口の減少が加速すれば、人材の獲得はさらに難しくなるでしょう。採用メディアを中心とした活動で人材を獲得できていた企業も、厳しい競争にさらされることになるはずです。

 

そのときに、中小企業が大手企業や有名企業と同じ土俵で戦うのは、どう考えても得策ではありません。今こそ、既存の採用フローを見直すべき時期なのです。

 

そしてここ数年、既存の採用フローで変化した部分といえば、「インターンシップ制度」が導入されたことでしょう。

 

インターンシップ制度とは、就職前の大学生に企業で就業体験を積んでもらうことです。日本では1990年代から外資系企業を中心に取り入れられてきましたが、歴史としてはまだまだ浅い制度です。

 

インターンシップ制度は就職活動の一環として徐々に浸透し、2000年代後半から実施する企業が多くなりました。学生の中にも、「就職活動はインターンから始まる」という雰囲気が少しずつ醸成されていきました。

 

特に注目すべきは、2017年に日本経済団体連合会(経団連)が発表した方針です。経団連は、2018年の就職活動(年春入社)のルールとして、インターンシップを1日から可能としました。それまでの「5日間以上」という規定をなくしたのです。ちなみに、企業説明会の解禁は3月1日。採用面接は6月1日以降としています。

 

そうしたなかで、大学3年の夏休み頃からインターンシップを行う企業が増えています。見えないところでも採用競争が過熱し、あらゆる企業において、水面下で優秀な人材を採用するための競争が行われています。

 

こうなれば、インターンシップで差別化することも難しくなります。結局は既存の採用フローを活用するしかありません。最近では、イベントへの参加に力を入れる企業が増えていますが、それもまた、既存の採用フローの延長線上にあるものです。

 

さらに近年では、ダイレクト・リクルーティングやリファラル(社員紹介)採用なども注目されてきました。年間数人の採用なら、ナビ媒体を使用せずともこれらの手法で対応できますが、人以上の採用人数になってくるとそれだけでは厳しいでしょう。結局、複数のチャネルを組み合わせた既存の採用フローを活用するしかなくなってしまいます。

「リクルート方式」で成功できるのは大企業のみ

かさむ「採用費」で経営が圧迫される現状

 

採用が難しくなっている現状に対し、現場の人事担当者は、強い危機感をもっているでしょう。

 

ほしい人材が採用できず、費用ばかりがかさみ、内定を出しても逃げられてしまう。さらには入社してもすぐに辞めてしまう。このような状況が続けば、企業の成長にもマイナスです。また、採用にかかる多額の費用が企業経営を圧迫しているという事情もあります。

 

「2017年卒マイナビ企業新卒内定状況調査(※1)」によると、採用費(※2)総額平均は一社あたり499.4万円。「広告費(※3)」「内定後にかける費用」「セミナー運営費」は順に212.6万円、62.7万円、140.5万円となっています。

 

注目してほしいのは、1社ごとの採用費を入社予定人数で割った数値の平均値である「入社予定者1人あたりの採用費平均」です。この数値は全体平均で46.1万円となっています。つまり、新卒者を1人採用するのに50万円ほどかかっている計算となります。現場の実感ではもっと費用をかけている印象があるかもしれません。年々採用しにくくなっ
ているため、予算をかけざるを得ない状況になっているのです。

 

望むような人材を採用できなかった場合、そこにかけた費用は当然、無駄になってしま
います。しかも、今後はさらに、採用費が増大していくと予想されます。採用に多額の投資ができる一部の企業ならまだしも、そうではない企業にとって、状況はどんどん悪くなる一方です。

 

(※1)2017年卒マイナビ企業新卒内定状況調査

 

(※2)採用費:広告費の他、入社案内やホームページ・ダイレクトメールなどのツール作成費、ダイレクトメール発送費、セミナー運営費、アウトソーシング費(データ処理・電話オペレーターなど)、資料発送費など、「採用経費」に含まれる費用総額

 

(※3)広告費:就職情報誌や就職情報サイト、新聞など、一般に公開される採用情報を掲載・出稿するための費用総額

 

「手法論」だけを追求しても効果は限定的

 

「中途採用の場合は、新卒採用と勝手が違うだろう」と思う人もいるかもしれません。ただ、そのような発想こそ、手法論にとらわれている証拠です。

 

採用の現場では、新卒採用と中途採用を分けて考えているところも多いでしょう。しかし、本質的にはどちらも変わりません。人材を募集し、選考を経て、採用するという流れに大きな違いはないからです。

 

確固たる採用活動の「軸」がないままに、「新卒採用に特化した施策」「中途採用向けのイベント」などと、それぞれの活動を点で考えてしまえば、あれもこれもと一貫性のない施策ばかりが並ぶことになります。また、費用がその分かかることになるため、1人あたりの採用費はさらに高まります。

 

本来であれば、新卒と中途ではほしい人材像が異なるのは当然であるため、彼らのことをしっかり考えて採用活動をしなければいけません。

 

例えば、新卒向けのメディアがあったとしましょう。そこには、新卒者の胸に刺さるようなメッセージを載せることになります。もちろん同業他社も、同じ媒体に新卒者向けの情報を掲載しています。どうやって差別化すればいいのでしょうか。

 

結論からいえば、デザインやコピーライティングなど、ページ全体の構成によって結果は大きく異なってきます。望むような人材に刺さる情報をビジュアルと論理できちんと表現できれば、採用につながる可能性が高まります。「新卒の媒体だから」「中途向けだから」ということではないのです。

 

「あのイベントが良いらしい」、「あの媒体は効果がある」という手法論ばかり追求していても、大手企業や有名企業には勝てません。条件が良く、待遇も良く、世間体も良い。そのような企業に対し、単なる手法の組み合わせで勝つことは難しいのが実情です。既存の採用フローにあるレッドオーシャンでは、そもそも勝負になりません。

 

給与や休日休暇などの条件を良くし、待遇面で勝負しようという企業もあります。高いスペックをつくり、前面に押し出して採用を有利に進めようとしているのです。

 

しかし、それもまた効果は限定的です。なぜなら、「その企業に入社したい」と思う人は、誰にも言われなくとも待遇を見るからです。待遇面の充実を打ち出しても、そもそも入社したいという気持ちがなければ目に止まることすらありません。

 

さらに、待遇に惹かれて入社してきた人は、さらに待遇の良い会社が見つかった場合、そちらに転職してしまうリスクもあります。結局、より大きな企業には勝てないのです。

 

既存の採用フローで勝てるのは「大手企業」のみ

 

大手企業や有名企業であれば、どの媒体に掲載していても、新卒でも中途でも、応募者は集まります。知名度があるだけで、母集団は自然に獲得できるからです。

 

その点で従来の採用フローは、大手企業や有名企業に有利だと言えるでしょう。他の企業と同じ土俵で勝負しても勝てる企業だけが、既存の採用フローでも望むような人材を獲得できるのです。

 

特にB to C(Business to Consumer)企業は有利です。普段から消費者と接しているため、自然と知名度もあり、記憶にも残っています。そのような企業であれば、採用メディアに掲載するだけでも、比較的楽に母集団を形成できます。

 

大手企業でも、B to B(Business to Business)企業の場合は、工夫が必要となります。いくら業界内での知名度や企業体力があったとしても、一般的にはあまり知られていません。そのような企業の中には、テレビCMや新聞広告などのマス広告を積極的に行うなどして、知名度の向上に努めているところもあります。例えば、90年代から積極的にマス広告を展開してきた村田製作所などは、よく知られた存在です。大々的にマス広告を打つ体力がある企業は、そのような方法でも問題ありません。

 

採用学を研究する経営学者の服部泰宏氏は著作『採用学』(新潮社)で、「採用力=採用リソースの豊富さ×採用デザイン力」と定義しました。採用リソースは、企業が投入できる有形・無形の資源、例えば現場の社員や応募者にリーチできる人脈を指します。採用デザイン力とは採用フローの設計力やオペレーションの力です。いうまでもなく、これらは採用活動を通して企業が得られる力。採用できる企業は、採用力がどんどん上がっていくことになります。

 

では、そうでない企業はどうすればよいのでしょうか。これもリクルートがつくった文化ですが、ひとつの方法としては、採用こそ成長に欠かせないものだと認識し、営業成績の良い人材を採用の現場で登用する方法があります。営業のスキルが採用にも役立つというのは、どちらの職種も経験した人がよく口にすることです。

 

ただ、多くの企業では、売り上げを重視しているために、そのような思い切った対策はできていません。人材が豊富な大企業ではできても、そうでない企業にとってはかなり勇気のいる決断です。だからこそ、現場の社員はもちろん、経営者が採用に対する考え方を変えなければならないのです。

やりがちな失敗①「数打ちゃ当たる」という発想

9割の企業が陥る「母集団至上主義」

 

ここからは、あらためて、採用の現場における問題点を見ていきましょう。特に経営者がおかしがちな失敗には大きく6つのポイントがあります。

 

1つ目は、「『数打ちゃ当たる』という発想(母集団の数しか見ていない)」です。とにかく多くの母集団を集めようという考え方が根底にあるため、「母集団至上主義」と言い換えていいでしょう。前項で紹介した服部氏は、母集団という言葉が統計学上の本来の意味と違うため、「候補者群」とすべきと指摘していますが、本書では分かりやすさを考慮し、「母集団」という言葉を使います。

 

たしかに、母集団が集まれば集まるほど、望むような人材が見つかりやすくなるように感じます。「リクナビ」や「マイナビ」をはじめとする採用メディアが誕生してからは、母集団を集めるのも容易になりました。それと同時に、既存の採用フローから抜け出しにくくもなっています。

 

いくら採用メディアで人を集めることができたとしても、他の企業も同じような採用手法をしている限り、競争は熾烈です。同規模の会社だけでなく、大手企業や有名企業もいい人材が欲しい。その中で、どう戦えばいいのでしょうか。

 

採用メディアが誕生するまで、各企業は自分たちで人材を集めなければなりませんでした。その点、『リクルートブック』をはじめ採用メディアというのは画期的な発明でした。採用のイノベーションだったわけです。

 

ただ、ほとんどの企業が採用メディアを使っている現状においては、どこかで差別化しなければなりません。もはや、いくら投資すれば何人採用できるという次元では語れないほど、中小企業が母集団を形成するのは難しくなってきました。

 

採用に多額の投資を行える企業ならまだしも、費用対効果から考えて、限界があるはずです。だからこそ、その根底にある母集団至上主義から脱する必要があるのです。


「母集団」を集めるだけでは意味がない

 

母集団至上主義が通用するのは、ナビ媒体で、ある程度母集団が作れると予想できる場合です。

 

例えば、母集団から面接へと至る人数、および、内定まで至る人数が明確に数字として見える状態であれば、母集団至上主義にも一定の意味はあります。そうすれば、投資額による採用結果も見えてくるためです。

 

しかし、現実はそう甘くはありません。例え必要な投資額が見えたとしても、状況が悪化しているために、毎年予算が増大する可能性もあるのです。そのようなときに、いつまでも母集団至上主義を通していれば、いくら資金があっても足りません。

 

また、母集団至上主義の決定的な弱点は、望むような人材を獲得できるとは限らないという点にあります。不特定多数の人をとにかくたくさん集めようという発想なので、望むような応募者が来てくれるとは限らず、非効率です。

 

母集団が増えれば増えるほど、求める人材に出会える確率は高まるかもしれません。ただ一方で、選考の手間も増加し、時間もお金もかかります。このように、非効率な採用方法をいつまでも行っているのは得策ではありません。

 

究極的には、母集団と採用人数が同じ数であること。100人応募者がいて、その100人全員が望むような人材であり、そのまま100人採用できるのがベストです。無駄なく、費用を最小限に抑えつつ、最大限の効果を得られることになります。

 

もちろん、こんなにうまくいくことは現実的ではありませんが、無駄に母集団だけ集めるという発想では、いつまで経っても効率化を実現することはできないでしょう。

 

「母集団至上主義」が一般化した背景

 

現場が母集団至上主義に陥ってしまう背景には、人事担当者への評価も影響していると考えられます。服部氏は、150社の採用担当者に対して実施した調査において「入社後の業績や人材の離職率に関して、採用担当者が責任を負っている」という回答は全体の10%にも満たないと指摘し、「日本企業の採用担当者の役割は、採用活動終了時点で終わるというのが実態」であると述べています。

 

結局採用担当者というのは、「何人採用できたか」という観点で評価されることになります。中途では通年、新卒は毎年、その結果が問われることになります。

 

だからこそ、短期的なものであっても、即効性のある施策に走ってしまう。あるいは、「とにかくたくさんの応募者を集めることに注力しよう」という発想に至ってしまうので
しょう。

 

費用対効果や採用後の定着という文脈で考えれば、母集団至上主義は非効率でしかあり
ません。なりふりかまわず集めるという発想では、理念や価値観に合った人を集められるとは限らないので、活躍人材に結びつかないことも少なくないのです。教育でなんとかする、といってもそのための労力も増大してしまいます。

 

採用担当者の評価基準は難しい問題ではありますが、採用数のみで評価されるのは採用の本質とはずれていることを認識すべきです。

 

やりがちな失敗②「応募者を選ぶ」という上から目線

企業は学生を選ぶ立場なのか?

 

2つ目は、「『応募者を選ぶ』という上から目線」です。つまり、応募者側の視点が欠如していることにより、上から目線で採用を進めてしまっている点に問題があります。

 

選ぶのは企業じゃなくて応募者…という考え方も?
選ぶのは企業じゃなくて応募者…という考え方も?

 

母集団至上主義とも通じるところがありますが、応募者を選ぶという発想があるために、より多くの人を集めようとしているとも考えられます。とりあえずたくさんの応募者を集め、その中から自社が望む人材を選べばいいという考え方です。「企業と応募者は対等で、結婚みたいなものだ」という考え方も浸透してきてはいますが、それは建前で、面接の場になれば「選ぶ」という発想で考えがちです。

 

不況で人材があふれている買い手市場であれば、優秀な人材を採用できるかもしれません。しかし、好況で人材が少ない売り手市場であれば、選ぶのは企業ではなく応募者です。特にこれからの日本市場では、売り手市場が続くと予想されます。企業の景気が上向き、働き手が減少していることがその理由です。そのような状況において、いつまでも選ぶ側の立場で採用を進めていこうとすれば、優秀な応募者は集まりません。

 

応募者にとって、企業選びは人生における大きな決断となります。特に、優秀な人材は引く手あまたなので、企業側が差別化された方法で打ち出し方を工夫しない限り、自社に興味を持ってもらうことすら難しいのが現実です。

 

多くの候補者から少ない採用数の人材を選ぶという発想から抜け切れていない企業では、これから先、望むような人材を獲得することは難しいでしょう。企業は「選ぶ」立場ではなく、「選ばれる」立場にあることを認識すべきです。

 

採用が理念教育そのものという発想

 

多くの企業では、採用してから社員を教育しようと考えているはずです。その点、「どんな人材でもいいからとにかく採用し、後から教育すればいい」といった経営者もいるほどです。

 

そのような姿勢は経営者としての懐の深さを感じます。ただ今後、この厳しい採用市場を戦っていけるかどうかは未知数です。むしろ、苦しい戦いを強いられるのではないでしょうか。

 

では、どのように発想を転換すれば良いのでしょう。大切なのは、「理念に共感してくれる人材を採用すれば、教育の負担も減る」という発想をもつことです。

 

たくさん集めて教育をするのではなく、応募者を選ぶという姿勢でもなく、はじめから理念に共感してくれそうな人だけを集めて、選考を進めていく。それが最も効果的で効率的です。理念を踏まえた上で、さらに深い研修を実施することができます。

 

そのように考えると、「採用→教育」という従来の考え方は非効率であると分かります。むしろ、採用活動の中で教育し、その後に採用へと至れば無駄がありません。

 

内定者フォローの段階で研修を行い、理念やその意味を初めて伝える企業は少なくありませんが、もっと早い段階から理念が伝わっていれば、企業にとっても効率的ですし、応募者も理念や価値観を念頭に置き内定承諾を判断できます。

 

望ましい流れとしては、理念や価値観に共感したから入社してくれた、というもの。そうすれば、ミスマッチで辞める可能性も少なくなります。

 

「共感」が欠如したまま進められる危うい採用

 

企業の理念や価値観に共感してもらうという視点を重視すれば、企業は「選ぶ」のではなく、応募者から「選ばれる」と、自然に理解できることでしょう。

 

選考過程においても、無理に落とす必要はありません。応募者の中から、自分に合わない、あるいは共感できないと感じた人が、自然といなくなります。だからこそ、効率的な採用ができるのです。

 

また、入社時点で会社の理念や価値観に共感しているため、活躍人材になる可能性が高まります。ミスマッチが減り、仕事にやりがいを感じるようになるのです。

 

共感は、給料や待遇では生み出せない働くことの意義を与えてくれるものですが、入社してから理念に共感してもらうのはなかなか難しいでしょう。例え理念研修などを実施したとしても、そう簡単に身につくものではありません。

 

内定者の中には「人事担当者が良かったから入社した」という人もいるかもしれませんが、同様の理由で、望ましい採用の形ではありません。企業理念への共感という観点が一切ないからです。また必ずしも人事担当者その人と働けるわけでもありません。企業側としては、応募者を「選ぶ」という視点を捨て、「理念への共感」をベースに「選ばれる」という発想に切り替えるべきでしょう。

 

やりがちな失敗③「求める人材像」があいまい

横行するふわっとしたターゲティング

 

3つ目の失敗としては、「『求める人材像』があいまい」ということが挙げられます。求める人材像とはつまり、採用におけるターゲットのことです。ターゲティングが不足していると、人材採用をうまく進めることができません。

 

例えば、求める人材像を「元気で、素直で、主体性のある人」としましょう。これではいかにもあいまいです。元気さの基準や素直さの定義、また、主体性のある人とは具体的にどのような人材なのかなど、掘り下げられる部分はたくさんあります。

 

このように、ふわっとしたターゲティングのまま人材採用を進めていくと、当然、面接官によって選ぶ基準にブレが生じてしまいます。人によって元気さや素直さの定義は異なりますし、主体性の感じ方についても人それぞれです。

 

その結果、採用する人材がバラバラになってしまい、本当に自社が必要としている人材ではなく、当たり障りのない人材ばかりを採用することになってしまうのです。それこそまさに、ミスマッチのもとです。

 

また、「元気で、素直で、主体性がある」というような採用基準は、どの企業でも求めている人材像に当てはまります。掘り下げが足りないので活躍人材になってくれるかどうかも分かりません。このことは、自社にとっても応募者にとっても、マイナスの影響を及ぼします。

 

「求める人材像」を正しく把握している企業は少ない

 

「どんな人を採用したいのか?」という問いに対し、通り一遍の回答しかできない担当者は危険です。「誰でもいいから採用したい」と宣言しているようなもの。そのような企業はさらに人が集まらなくなるリスクがあります。

 

本来であれば、「自社にとって好ましい人材とは何か」ということを、掘り下げて考えておくべきです。そのうえで、活躍人材を明確化し、採用ターゲットとして社内で共有していく。そういった工夫が必要です。

 

ターゲティングという必要な過程を経ないまま採用活動を進めた結果、母集団至上主義に陥ったり、理念や価値観への共感がないミスマッチ採用につながってしまったりする事例は、枚挙にいとまがありません。

 

また、応募者側の視点から考えてみても、不明瞭なターゲティングはマイナスです。どんな分野でもそうですが、誰に対してのメッセージか分からないものは、誰の心にも刺さりません。商品でもサービスでも同様です。もしかしたら、自社とマッチする応募者がいたとしても、気づかず、応募に至らないということになります。

 

ターゲットを明確に決めているからこそ、その人に深く刺さるメッセージを送ることができます。特に採用される側は人生がかかっているので、中途半端なメッセージでは心が動きません。総花的なアプローチでは差別化もされません。

 

他社との違いを打ち出せず、応募者の意向も考慮されないままの採用活動であれば、レッドオーシャンで戦うしかありません。それはすなわち、会社の規模で勝負がついてしまうということなのです。

 

「ターゲットを明確化する勇気」を持て

 

経営者や採用担当者の中には、ターゲットを明確化するのが怖いと考えている人もいます。ターゲットを明確化することによって対象者のパイが小さくなり、獲得できる母集団そのものが減ってしまうことを恐れているのです。

 

しかし、その発想は間違っています。母集団至上主義が危険であることはすでに述べていますが、母集団集めに苦労している企業の場合、ターゲットを明確化することが、母集団を集める最善手になるのです。

 

なぜなら、多くの企業が優秀な人材を採用したいと考えている採用市場において必要なのは、他社とは異なる深いメッセージだからです。メッセージとは、単に採用広報で使用するスローガンやキャッチコピーだけでなく、採用活動の現場で発せられる先輩社員の言葉も含みます。

 

ターゲットがぼやけたままでは、メッセージも抽象的なものに落ち着いてしまいます。そのままでは、誰の心にも刺さることなく、スルーされてしまうでしょう。

 

例えば雑誌を見ると分かりますが、どの雑誌も、明確にターゲットを分けています。それは、たくさんの雑誌がひしめくレッドオーシャンにおいて、購入してもらうための工夫なのです。ターゲットを明確にしてコミュニケーションすることが、結果的に、必要な人に読んでもらうための秘訣となります。

 

母集団ではなく、質を重視した採用活動を行うためには、求める人材、すなわちターゲットの明確化が欠かせません。そして、ターゲットを明確にすることによって、より効果的な施策も見えてきます。

 

ホームページやパンフレット等、採用媒体の表現や活用方法もまた、ターゲティングによって導き出されるものだと理解してください。

やりがちな失敗④「なんとなく」の採用基準

選考官によってバラバラな「採用基準」

 

4つ目の失敗として挙げられるのは、「採用基準が『なんとなく』設定されていること」です。ターゲット像があいまいな企業は、採用基準も明確でないことが多いと感じます。確かに、ほしい人材像が明確であれば、採用基準もおのずと明確になります。また採用基準が決まっていたとしても、選考官によって基準がバラバラなのは問題です。

 

選考官がよく言われるのは、「一緒に働きたい人を選んでくれればいい」ということです。その結果、各人が個別に選ぶことになるわけですが、もともと基準が具体的に設定されていないため、当然バラバラな基準で判断することになります。

 

そもそも、「一緒に働きたい人」は、人によって異なるはずです。従順な部下がほしい人もいれば、自主的に仕事に取り組んでくれる人材を望む人もいるでしょう。「一緒に働きたい人」という観点で言えば、どちらが正しいということはありません。しかし、バラバラな採用基準は後に問題を引き起こす可能性があります。

 

よくあるのは、二次面接を担当した上司が「なぜあのような人材を通過させたのか」と叱責するシーンです。ただし、一次面接の担当官を叱責するのは、筋違いです。採用基準を共有していないのですから、当たり前です。

 

本来であれば、あらかじめ採用基準を設定しておき、面接官に周知させておかなければなりません。たまたまいい人材が採用できればいいのですが、面接官によって、そうはならない可能性もあり得ます。面接のクオリティーに差があれば、本来自社に合わない人を採用してしまう可能性も出てきます。それではお互いに不幸です。採用は目標の数を満たせばいいのではありません。理念や価値観に共感せず入社してしまうと、ミスマッチにつながりやすくなります。そもそも何のために正社員の採用を行うのか、そこを考えねばなりません。期間限定ならアルバイトでもパートでもいいはずです。

 

「具体的な条件」へと解きほぐせ

 

厳密に採用基準を設定していないことは、現場の担当者だけでなく、上司や経営者にも問題があると考えられます。いくら「現場でもっと頑張ってほしい」「採用に力を入れてくれ」と指示しても成果は上がりません。むしろ、採用すればするほどミスマッチが生じる可能性があります。

 

まずは、より具体的な採用基準を設定するために、条件を解きほぐしていかなければなりません。「一緒に働きたい」という言葉の意味を掘り下げ、分解し、言語で共有できる段階にまで落とし込む作業が必要です。

 

最終的には、複数の解釈ができる採用基準のままにしておくのではなく、誰が選んでも望むような人材を獲得できるようにするべきでしょう。細かいニュアンスも含めて、具体的な採用基準の設定が欠かせません。そのためにすぐにできることは、現場での活躍人材をしっかりと整理するということ。経営者や人事部だけでほしい人材像の条件を考えるのではなく、現場にヒアリングするなどして、具体的で明確な条件にすべきです。そうすることで、おのずと採用ターゲット像も明確になっていくはずです。

 

統一の基準を設けることで「ブレ」をなくす

 

もちろん、面接官も人間なので、好き嫌いで選んでしまうこともあるでしょう。すべての感情を排除することはできません。どこかに好みという要素が反映されてしまうのは、半ば仕方のないことです。

 

大切なのは、それだけにしないということ。好き嫌いという部分だけでなく、軸としての採用基準を用意しておくことによって、大きなブレをなくすのです。そして、採用活動に関わる人たちがその基準を理解できるようにすることが必要です。「一緒に働きたい人を採用する」というのは、使い勝手がいい言葉であるだけに注意が必要です。「どのような人と一緒に働きたいのか」「そのために必要な基準とは何か」などと、掘り下げて考えるようにすることです。

 

採用基準があいまいであればあるほど、獲得できる人材はバラつきます。採用の現場においては、「なんとなく」の採用基準をなくし、具体的に共有できる基準を設定することに時間と労力をかけるべきなのです。

やりがちな失敗⑤「社長不在」の採用

採用活動に経営者がコミットしないのは大損

 

よくある失敗の5つ目として、「社長不在で採用活動が進められている」ということが挙げられます。社長不在とはつまり、経営者が採用に関与していないということです。

 

現場の仕事という観点で言えば、採用した人がすぐ社長と一緒に仕事をするということは少ないでしょう。むしろ、現場の社員やその上司と仕事をすることが多いはずです。そのため、社長が関与しないという発想もあり得ます。

 

ただ、人事任せで採用を成功させることができるのは、一部の大手企業や有名企業だけです。そのような企業であれば、社長が出てこなくても優秀な人材を獲得することができるからです。これをブランド論的に解き明かせば、すでに応募者の頭の中に、「強くて、好ましくて、ユニーク」なイメージが作られているから、と指摘することができます。わざわざ社長が出てきて特別に語らなくてもいいのです。

 

一方で、知名度に乏しい中小企業の場合はどうでしょうか。もともと知られていないため、名指しで優秀な人材から選ばれるということはありません。検索エンジンで自社を検索されることもありません。たとえ説明会に参加してくれたとしても、たまたまであったり偶然であったりする場合が多いのです。「多少は興味があるから、ちょっと参加してみるか」くらいの気分でしょう。もしかしたら、友達に誘われただけかもしれません。だからこそ、採用活動において最強のコンテンツである社長が、自ら積極的に出ていかなければならないのです。

 

採用に関与せず、「なぜうちには優秀な社員が集まらないんだ」と思っている経営者には、いますぐ経営における採用の優先順位を上げ、コミットしていただく必要があると思っています。

 

採用とは「同志」を探すこと

 

そもそも、みなさんの会社では何のために採用活動を行っていますか。採用活動とは、ただ働いてくれる人を獲得するためのものではないはずです。私は、「採用とは同志を見つけるための活動そのもの」ではないか、と考えています。

 

企業とは理念を有し、ビジョンを掲げ、ミッションを達成するための組織体です。そこには中期的な目標もあれば、長期的なスパンで実現したい未来もあります。採用活動を通してビジョンを実現するための同志を探すのです。

 

同志に求められるのは、その企業が掲げている理念や価値観に、まずは共感すること。共感し、ファンになれば、仕事に対する向き合い方やモチベーションも変わります。それが、共に理想の未来を実現するための活力となるのです。

 

そのように考えると、人材採用が、経営にとって不可欠であると理解できるはずです。ビジョンをともに達成する存在を見つけることであると考えれば、経営判断が問われる最優先事項であると言っても過言ではありません。これを理解していただければ、採用活動を母集団至上主義で進めていくということも、筋違いだと認識していただけるはずです。

 

もちろん、会社を存続させるには、売上や利益が必要です。ただ、会社を存続させるだけでなく、成長させていくことも意識しなければなりません。社長が自ら採用活動にコミットすることで、同志を見つける確率を上げることができるのです。

 

社長の存在こそが「キラーコンテンツ」である

 

特に中小企業の社長というのは、人材採用におけるキラーコンテンツになり得ます。理由は簡単で、大きな企業ほど、社長は最終面接まで出てこないからです。社長が説明会に出てきて語るだけでも差別化になり得ます。新卒・中途にかかわらず、採用過程で社長の存在を感じられるということは、それだけインパクトのあることなのです。

 

例えば、会社の成り立ち、背景にある想い、過去の苦労などを語ることができるのは、最前線で活躍してきた社長だけでしょう。会社のことをすべて語れる存在であるだけに、言葉の重みもひとしおです。それが応募者の心に響くのです。

 

それだけのキラーコンテンツを採用フローで活用しないのは、どう考えても「もったいない」。社長が積極的に採用に協力している企業は、採用活動もうまくいっていることが多いものです。

 

報酬や待遇などの条件面ではなく、「この人のもとで働いてみたい」という気持ちが、仕事に対する姿勢を変えてくれます。また、社長が採用活動に参加することで、採用に対する企業の姿勢も伝わります。どんな巨大な企業でも、最初から大きかったわけではありません。最初は理念や想いしかなかったはずです。しかし、従業員にその理念や想いを理解してもらい、共感してもらうことで、少しずつ成長することができた。〝ホンダ〟も〝ソニー〟も同じです。

 

だからこそ、社長が前に出て採用活動を進めていくことが必要なのです。

 

やりがちな失敗⑥「コンセプト」がないまま採用活動

採用活動には「コンセプト」が不可欠

 

よくある失敗の6つ目として挙げられるのは、「コンセプトがないまま採用活動を行っている」ということです。コンセプトとはつまり、採用活動全体を貫く「軸」──基本的な観点や考え方のことです。

 

コンセプトを決めていないと、採用活動は自ずと散漫なものになってしまいます。数あ
る採用施策が個別の戦術としてしか機能せず、結果的にそれぞれの効果が限定的になってしまうのです。

 

採用に関する施策にはさまざまなものがあります。メディア掲載やイベント、説明会の実施、パンフレットやホームページ制作、面接のテクニックの使用など、細く挙げればきりがありません。それぞれの施策を着実に実行するだけでも大変です。

 

ただ、例えすべての施策を行ったとしても、コンセプトがなければ、それぞれが単発の効果しか生み出しません。相乗効果どころか、一過性の成果しか期待できない危険があります。

 

もちろん、それぞれの施策においてベストプラクティスを考えることは大切です。しかし、外部の協力会社が勧めることを実行するだけでは、全体最適にはなり得ません。

 

本来であれば、企業としての採用活動を、コンセプトで一気通貫させるのがベストなのです。

 

全体を貫くコンセプトがなければ、どんなに魅力的な採用の施策を行っても、すぐに忘れ去られてしまいます。個々の施策に関連性がなく、受け手側である応募者のイメージがブレてしまうためです。大事なのは、あらゆる施策がコンセプトを通じて一定の企業イメージを想起させることなのです。

 

「施策の軸」としてのコンセプト

 

個々の施策がバラバラの働きしかしない場合、企業の知名度や認知度には貢献しません。いくらインパクトのある施策を行っても、「おもしろい活動をしていた企業」としか認識されないのです。

 

そうではなく、メディア掲載からイベント、面接まで、コンセプトに沿って一気通貫させることで、「どこに行ってもあの企業の魅力に触れられる。イメージできる」と思ってもらう必要があります。

 

このようなコンセプトという軸を基にした採用活動こそ、本質的な採用方法です。一過性のものではなく、蓄積できるような価値としてのイメージを醸成していくことが重要です。一貫性のあるコミュニケーションは、少しずつ、認知度にも影響を及ぼします。

 

[図表1]コンセプトのつくりかた
[図表1]コンセプトのつくりかた

 

知ってもらい、体験してもらい、記憶してもらう。どのような施策であっても、採用フローのどの段階であっても、同じイメージを持って認識してもらえる。それが、採用活動における最良のコミュニケーションと言える出よう。

 

限られた時間の中で勝負するには、コンセプトが欠かせません。コンセプトを応用した効果的な採用活動によって応募者のロイヤリティ(忠誠度)を高めることができれば、大手企業や有名企業に対峙できる競争力を得られます。

 

[図表1]は、これまでのターゲティングの重要性と強みの整理を行ったうえで、どのようにコンセプトを開発すればよいかということを表しています。多くの企業はターゲットを明確化しないまま、漠然と応募者の求めることに合わせた採用活動を行いがちです。それは自ら「レッドオーシャン」の採用活動を選択していることになります。自社の強みをメッセージの基盤にしていないので、より大きな企業には負けてしまいます。本来は図表1の右上の「ビクトリー」ゾーンでコンセプトを開発すべきです。自社本来の強みを明確にして、ほしい人材像へと投げかける。これでこそ、差別化されたメッセージを深く伝えることができるので、共感を得やすくなるのです。

 

協力会社をリードしてコンセプトを貫け

 

採用活動においてコンセプトを貫くために必要なのは、「一貫性」です。一貫性のある採用活動を実施することによって、知名度がなくても、応募者から選ばれる確率を上げることができます。

 

そのためには、現場の人事担当者が主導権を握り、協力会社(パートナー)をリードしなければなりません。人事担当者は、積極的に主導権を握る必要があるのです。

 

まずは、自社の採用活動に対するコンセプトを理解してもらうこと。そして、コンセプトに沿った施策を実行してもらうこと。そのような意識をもち、一貫性のある採用活動を進めていくのです。

 

たとえ効果があったとしても、コンセプトと異なる施策を繰り返しているだけでは、中長期的な成果を得られません。人事担当者としては難しい舵取りが求められますが、明確なコンセプトさえ掲げておけば遭難することもありません。

 

外部の協力会社の中には、新しい施策を勧めてくる会社もあるでしょう。すぐに目新しい手法に飛びついてしまうのではなく、「コンセプトに合致しているかどうか」という視点を持たなければなりません。

 

企業経営の基盤を築くために、今すぐやり方を変えろ

会社の成長には「人材」が欠かせない

 

人材採用の目的は同志を見つけることです。そしてそのためには、理念や価値観を共有することが大切だということはすでに述べてきました。採用活動の本質とは、それらの言葉に集約されていると言ってもいいでしょう。

 

会社の成長は人材採用にかかっているという発想さえあれば、必要なリソースを適切に投下するべきという視点は容易に得られます。時間、労力、お金など、使えるリソースをきちんと採用活動に活かしていくことが、採用を成功させるための第一歩です。

 

そのうえで、経営者が前に出ていくこと。難しい判断が求められるからこそ、経営者が積極的に関与していく姿勢が大切です。特に中小企業の場合、経営者が変わらなければ、現場もなかなか変わらないものです。

 

「とにかく数を集めればいい」「現場単位でこれまでのやり方を踏襲すればいい」。そのような消極的な姿勢で採用活動を進めていくと、求める人材が確保できないばかりか、例え採用できたとしてもミスマッチにつながりかねません。経営者が採用活動にコミットしていく以上、採用予算はコストではなく、投資です。逆に言えば、その発想がなければ経営者がわざわざコミットする意味もありません。採用とは企業の目的をともに叶える人材を見つけること。コストという発想では、とうてい大手企業には勝てない採用活動をし続けることになります。ムダの多い採用活動になってしまうでしょう。

 

採用活動のゴールは、採用した人材に活躍してもらい、会社を成長させることにありま
す。母集団を集めることでも、内定を出すことでもありません。そのような発想は会社の資源の無駄遣いにつながります。

 

経営者の考え方が、現場の考え方に作用し、求める人材の獲得につながります。その認識があるかどうかが、勝負の分かれ目となります

 

 

深澤 了


ブランディング・ディレクター

クリエイティブ・ディレクター

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

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株式会社財産ドック

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