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調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
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米国では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対策として、連邦政府による支援金と失業給付の増額が個人に支給されたことから、戦後最悪とされる景気後退の最中で4月以降の個人所得は逆に大きく増加する結果となった。しかし、この失業給付の増額は7月末で失効する予定であり、連邦議会が追加対策を講じなければ年後半の個人消費が下振れする可能性がある。

失業前の賃金を上回る「異例」の失業給付

米国では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対策として、総額2.2兆ドルに及ぶコロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)がトランプ大統領の署名によって3月27日に成立した。この法律によって、連邦政府による個人への支援金や1週間で一律600ドルの失業給付の増額が支給されることになった。このため、4月の米国個人所得は前年同月比で11.9%増となり、戦後最悪とされる景気後退の最中、逆に個人所得の増加率が加速するという極めて希な現象が起こった(図表1)。

 

なかでも「異例」とも言えるのが手厚い失業給付だ。失業前に全米賃金の中央値である1週間当たり957ドルを得ていたとすると、カリフォルニア(CA)州では州政府から同450ドルの失業給付が支給されるほか、CARES法によって連邦政府から同600ドルの特別失業給付が得られる(図表2)。

 

この結果、失業給付の合計額は同1,050ドルとなり、失業前の賃金を上回ることになる。また、最低賃金で雇用されていた場合はさらに手厚くなり、CA州では失業前の最低賃金が同480ドルに対し失業給付の合計額は同817ドルと、実に70%もの収入増になる。失業前の賃金が低いほど失業給付が相対的に手厚くなる構造は、テキサス州やニューヨーク州でも同様だ。

 

月次、前年同月比、期間:2018年1月~2020年5月 出所:BLS(米労働省労働統計局)、州政府、ブルームバーグのデータよりピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国名目個人所得(季節調整済み) 月次、前年同月比、期間:2018年1月~2020年5月
出所:BLS(米労働省労働統計局)、州政府、ブルームバーグのデータよりピクテ投信投資顧問作成

 

単位:米ドル、1週間当たりの失業給付/賃金、最低賃金は2020年現在、全米賃金(中央値)は2020年1-3月期時点 出所:BLS(米労働省労働統計局)、州政府、ブルームバーグのデータよりピクテ投信投資顧問作成
[図表2]失業給付額と全米賃金(中央値)・最低賃金の比較 単位:米ドル、1週間当たりの失業給付/賃金、最低賃金は2020年現在、全米賃金(中央値)は2020年1-3月期時点
出所:BLS(米労働省労働統計局)、州政府、ブルームバーグのデータよりピクテ投信投資顧問作成

失業給付の増額は今月末で失効予定

しかし、逆に言えば特別失業給付が失効した場合の影響が大きくなるのが、失業前の賃金が低かった失業者になる。賃金水準を業種別にみると、小売やレジャー・ホスピタリティが相対的に低くなっており、これらの業種はロックダウン(都市封鎖)によって失業者を大量に抱えた業種でもある(図表3)。

 

このまま失業給付の増額が7月末で失効した場合、多くの失業者の個人所得が急減することになりかねない。連邦上院は休会明けの来週20日から失業給付増額の延長など、追加の景気刺激策について議論を再開させる予定だが、民主党と共和党との間で意見の隔たりは依然として大きく、残された時間も限られている。この先、数週間が正念場だろう。

 

業種別、単位:米ドル(横軸)、千人(縦軸)、2020年6月時点 出所:BLS(米労働省労働統計局)、州政府、ブルームバーグのデータよりピクテ投信投資顧問作成
[図表3]1週間当たりの平均賃金(横軸)と雇用者数(縦軸) 業種別、単位:米ドル(横軸)、千人(縦軸)、2020年6月時点
出所:BLS(米労働省労働統計局)、州政府、ブルームバーグのデータよりピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『失業給付「失効」で米国個人消費に下振れリスク』を参照)。

 

(2020年7月17日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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