近年、富裕層を中心に、子どもを幼少のうちに海外留学させたり、国内のインターナショナルスクールに通わせたりと、国際感覚を身に着けるための教育がひとつのトレンドになっている。本連載では、グローバルマーケットの第一線で活躍し、現在は留学サポート事業などを手がける株式会社ランプライターコンサルティングで代表取締役社長を務める篠原竜一氏が、グローバル人材を目指す富裕層の教育事情について、実体験も交えながら解説する。今回は、米国の留学生事情と、日本で求められるグローバル教育について説明します。

「中国」と「インド」からの米国留学生が急増

米国の高等教育機関で学ぶ留学生は、1955年34,232人、1965年84,045人、1975年154,580人、1985年342,113人、1995年452,653 人、2005年 565,039人、2015年974,926人に増え、そして、2016年に1,000,000人を超えました。

 

第二次世界大戦後、米国がいかに留学生の受入れに力を入れてきたかがわかります。そして、2000年に入ってからは、中国やインドを中心に、急速に米国で学ぶ留学生が増えています。

 

米国の大学数は世界一で、様々なレベルの学校があります。実学を学ぶ大学、教養を身に着ける大学、研究に力を入れている大学などがたくさんあります。また、ほとんどの私立大学には学生寮が完備されており、留学生にとっては安心して学ぶことできます。

 

11月18日、国際教育研究所(IIE)および米国国務省によって公表されたOpenDoors®2019によると、2018~19年には、1,095,299人(対前年比+0.05%)の留学生が米国の高等教育機関で学び、史上最高を記録しました。留学生は、米国の高等教育人口全体の5.5%を占めています。

 

内訳を見ると、留学生の51.6%がSTEM分野を専攻しています。留学生が一番多く学ぶ分野は工学であり、全留学生の21.1%を占めています。注目すべきは、2018~19年には、数学およびコンピューターサイエンスを学ぶ留学生が9.4%増加、ビジネスマネジメント分野で学ぶ留学生を抜き、2番目に大きな分野になったことです。

 

米国には、OPT(Optional Practical Training)という大学・大学院卒業後、一定の期間アメリカ国内で就労出来る制度があります。何を勉強したかによって米国で働ける期間が異なり、通常は1年ですが、STEM分野を学んだ学生は、3年間の実地訓練を目的として米国で就労することができるようになりました。

 

OPTプログラム終了後は労働許可がなくなるのでそのまま米国で働くことはできませんが、このOPTプログラムの変更がSTEM分野の留学生を増やしている大きな要因となっています。

 

今回発表された国別留学生数は以下の通りとなっています。

 

1、 中国 369,548

2、 インド 202,014

3、 韓国 52,250

4、 サウジアラビア 37,080

5、 カナダ 26,122

6、 ベトナム 24,392

7、 台湾 23,369

8、 日本 18,105

 

大きな変化は見られません。留学生トップの中国人留学生の内訳を見ると、大学学部148,880人、大学院133,396人、Non-Degree 17,235人、OPT(Optional Practical Training)70,037人となっています。

 

第2位のインド人留学生の内訳は、大学学部24,813人、大学院、90,333人、Non-Degree 2,238人、OPT(Optional Practical Training)84,630人となっています。

 

興味深いのは、中国人留学生は学部、大学院の人数に大きな差はありませんが、インド人留学生は大学院で学ぶ学生が圧倒的に多いということです。そして、OPTプログラムに参加しているインド人が中国人より多くなっていることにも注目です。企業にとっては、高度な知識を持ったIT人材という意味では、学部卒よりも大学院卒の学生の方が即戦力なのかもしれません。

 

日本人留学生の内訳は、大学学部9,001人、大学院2,875人、Non-Degree 4,713人、OPT(Optional Practical Training)1,516人となっています。その特徴は学部生が多いことと、学位取得を目的としていない留学生が多いということです。1年間の交換留学制度などで留学する学生が多いということだと思います。

 

米国の名門リベラルアーツカレッジで学ぶ学生の7~8割が大学院に進学すると言われています。日本人の考える大学院の位置づけとは明らかに異なります。これは米国の企業がマネジメントを採用する際に学位をより重視するからかもしれません。また、学部卒、大学院卒の給料差が大きいのも米国の特徴です。

 

人口の多い中国、インドからの留学生が多いのは自然なことかもしれません。2000年には54,466人だった中国人留学生、42,337人だったインド人留学生は急増しています。

 

一方、2000年には46,872人いた日本人留学生が、2010年に24,842人、そして2019年には18,105人と減少しています。日本の総人口は減少しており、特に少子化で若年層人口が減少するなか、米国高等教育への留学生総数が減るのは仕方がないことかもしれません。しかしながら、日本よりも人口の少ない、ベトナム、台湾からの留学生の数の方が日本よりも多いことには注目すべきだと思います。

 

日本人の米国留学は減っている
日本人の米国留学は減っている

縮小する内需…外国語取得が必須になる

最近では日本の学校のカタログを見ると「グローバル教育」「ダイバーシティ」を眼にすることが増えてきました。中高一貫校でグローバルと言う言葉を掲げていない学校を見つけることが難しいほどです。小学校での英語教育も始まります。小さな頃から英語をこれまで以上に学ぶ環境になることは素晴らしいことです。短期留学で英語を学び、次のステップとして、様々な科目を英語で学ぶ時代になっていくでしょう。

 

人口減少が続く日本では、今後、国内需要の大幅な伸びは期待できません。かかる状況下、インバウンド需要など「外国人を相手とするビジネス」を拡充していく必要があるでしょう。日本政府も海外からの訪問客を増やすために様々な政策を打ち出しています。

 

米国の大学でも学生に対しStudy Abroadプログラムを提供していますが、日本で学ぶ米国人留学生の数は増えています。OpenDoors®2019によると、2009年に5,784人だった米国人留学生は2019年には8,467人になっています。海外からの訪問客を増やすのみならず、日本で学ぶ留学生を増やすこともとても重要な課題です。

 

今後の日本では、バイリンガル、トライリンガルで、日本の商品、サービスの素晴らしさを外国人顧客に対してアピールできる高度な教養を持つ人材が求められるでしょう。こういう力を身に着けた日本人は、仕事に困ることはありません。また、これからどんな時代がやってきても世界中どこでも活躍できる人材になっていくでしょう。

 

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