離婚協議で問題になるのが子供の親権。一般的に男親は親権を獲得することが難しいといわれているので、頭を抱えている人もいるでしょう。今回は離婚を検討する前に知っておきたい、親権について説明していきます。※本連載は、弁護士の稲葉治久氏の著書『男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学』(幻冬舎MC)の内容を一部抜粋・改編し、よくある男女トラブルと、それに適切に対応するための法的知識をわかりやすく解説していきます。

親権争い泥沼化…裁判所は母親を選ぶのが一般的

子どもがいる場合には、財産分与の問題のほかに、子どもを引き取ることができるのかについても、つまりは「親権を手に入れられるか」どうかも気になるところでしょう。

 

離婚の際に夫と妻のどちらが親権を取るのかに関しては、まず当事者の話し合いで決めることになります。

 

もっとも、妻の側が親権を手放すことに同意する可能性は限りなく低いので、ほとんどの場合、話し合いでは決着がつきません。

 

そこで、最終的には家庭裁判所の審判で決めることになりますが、結論からいうと、子どもの親権はまず間違いなく母親の元にいきます。

 

親権に関して何よりも第一に重要視されるべきは、子どもの福祉、利益であり、“イクメン”“パパ育”などという言葉も使われている昨今ですが、やはり父親よりも母親のほうが子どもの養育・監護に適していることは明らかだからです。

 

もちろん、重度の精神疾患などがあって子どもを十分に養育することが難しかったり、あるいは子どもに暴力をふるっていて児童相談所の介入も受けているなどの状況が母親側にある場合には話は別です。

 

しかし、そうした例外的な事情がない限りは、父親は親権をまず確保できないと思っていたほうがよいでしょう。

 

離婚とともに、子どもは母親のもとへ
離婚とともに、子どもは母親のもとへ

親権がなかったら、もう子どもとは会えないのか!?

ただ、親権が得られないとしても、父親が子どもと定期的に会うことは権利(面会交流権)として認められています。

 

この面会交流権の具体的な中身については、親権と同様に、当事者の話し合いもしくは家庭裁判所の審判によって決められます。

 

そして、審判で決定される場合には、おそらく1ヵ月に1回や2ヵ月に1回の頻度で面会を認めてもらえることになるでしょう。1回の面会時間はまちまちで、半日や1日の場合もあれば、子どもがまだ小さい幼稚園児や小学校低学年であれば2、3時間という短時間の例も見られます。

 

また、母親側から「○○の場所で会うようにしてほしい」などというように面会場所等に関して特別な条件がつけられることもあります。

 

さらに、面会の際に、「家庭問題情報センター(FPIC:エフピック)」のような公的な第三者機関の立ち会いを求めるケースも最近は増えています。その場合には、同センターの施設内で子どもと会うことになり、その利用料の負担も求められることになります。1回の利用で数万円の額になることもあるので結構な出費ですが、「条件を受け入れなければ子どもに会わせない」と言われれば、払わざるを得ないでしょう。

 

特に子煩悩な人は、子どもとの面会の際に、思わず「向こうには戻したくない。このまま連れ帰ってしまおうか」という気持ちになることもあるかもしれません。

 

しかし、そうした思いをうかつに実行に移してしまうと、裁判所に以後の面会交流を禁止される可能性がありますし、最悪の場合、誘拐罪に問われることになりかねないので絶対にやめましょう。

 

それから、子どもに「父親とは会いたくない」と言われれば、どんなに望んでも会うことはできません。面会を強制することはできないので、そうなってしまった場合にはどうしようもありません。

 

もっとも、なかには、子どもの意思ではなく、母親にそう言わされているケースもあるかもしれません。特にまだ子どもが小さい場合は、その可能性が否定できません。もしそうだとすれば、裁判所から、面会の約束を守らせるよう、母親に対して命令を発してもらうことも可能です。

前妻が再婚したら、子どもとの面会はどうなる⁉

前妻が別の男性と再婚したとしても、自分の子どもであることに変わりはないので面会は従前通り行えます。

 

ちなみに、前妻が再婚した男性が子どもと養子縁組をした場合には、元夫は第一扶養義務者ではなくなるので、養育費の支払いを免れることがあります。ただし、養育費の免除を受けるためには、家庭裁判所に対して所定の申立てを行うことが必要になります。

 

したがって、離婚した後も、前妻の動向に対しては注意を払っておくとよいでしょう。そして、前妻の再婚と、その再婚相手が子どもと養子縁組をしたことがわかったらすぐに免除の申立てをしましょう。この申立てをした月から、養育費を支払う義務がなくなる場合があります。

 

なお、免除の申立てをする前に支払っていた養育費の返還を求めることは認められていません。例えば、2020年1月に前妻の再婚相手が養子縁組をしていたことに、同年の6月に気づいて免除を申し立てたとしても、前妻に対して「1月から5月の間、支払っていた養育費を返せ」と求めることはできません。

 

ただし、前妻と養育費に関する取り決めをした際に、文書の中で「再婚相手が養子縁組をした場合にはその縁組をした月から支払いを免除します」という趣旨の条項を定めておけば、後から養子縁組に気づいたとしても、この条項に基づき払う必要がなかった養育費の返還を求めることが可能になります。

 

もっとも、そのような条項を事前に定めてしまうと、前妻の側は「せっかくだから養育費をもらえるうちはもらっておいたほうがよい」と、あえて再婚相手に養子縁組をさせない可能性もあります。

 

いずれにせよ、子どもとは離婚後も良好な関係を築き、子どもを通じて、子どもの生活状況や前妻の様子などの情報を絶えず得ておくのは大切なことになります。

 

 

男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学

男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学

稲葉 治久

幻冬舎

不倫、離婚、セクハラ、痴漢冤罪…… 男女の間には何かとトラブルがつきものです。 昨今マスコミをにぎわせている芸能人、著名人の不倫トラブルに典型的に示されているように、 男女トラブルは訴えられた側に甚大なダメージ…

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