本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『身近なデータで見た経済動向』を転載したものです。

 

11月のトピック

ラグビーワールドカップ、SMBC日本シリーズなどの身近な指標は景気の底堅さを示唆。消費税増税の影響は台風が足を引っ張ったことを除けば、概ね想定通りか。一方、海外環境の要因から、輸出・生産・景気動向指数などは弱含み。

ラグビー日本代表が決勝トーナメント進出決定直後、週明けの日経平均株価は前日比408円高に

11月2日に閉幕したラグビーワールドカップ2019日本大会は、南アフリカの3年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。翌日3日、組織委員会などの大会を総括する記者会見で、ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は、「最も偉大なW杯として記憶に残る。日本は開催国として最高だった」「素晴らしく、謙虚で歴史的なホスト国であった日本と日本人に心の底から感謝したい」とコメントした。日本流の「おもてなし」が評価された大会になった。評判の良さは、今後の訪日外国人の増加などにつながるものと期待される。

 

史上初の決勝トーナメント進出を果たしたラグビーワールドカップでの日本代表の活躍は、日本に感動と勇気を与えてくれた明るい話題になった。日本はロシア、アイルランド、サモア、スコットランドに4連勝し、全勝で予選リーグを1位通過し、初の決勝トーナメント進出を果たした。スコットランド戦の平均視聴率(ビデオリサーチ、関東地区)は39.2%、瞬間視聴率は53.7%と盛り上がりがみられた(図表1)。裏番組となった大河ドラマ「いだてん」の平均視聴率は3.7%と史上最低を更新してしまった。ラグビーは野球やサッカーに比べてマイナー競技の印象が強かったが、開幕後はがぜん盛り上がりを見せた。また、前回2015年の大会では、南アフリカを破り予選リーグ3勝1敗でも決勝トーナメント進出を逃していたので悲願の決勝トーナメント進出に日本中が沸いた。「1次リーグ日本戦4試合」は全国で5,486万人が見たとビデオリサーチは「テレビ視聴率調査」から全国の視聴人数を推計している。

 

 

 

1998年のサッカーW杯フランス大会アジア最終予選で、日本代表がイラン戦に勝利し、悲願のW杯初出場を決めた翌日の1997年11月17日の日経平均は、北海道拓殖銀行の経営破綻のニュースがあったにもかかわらず、前週末比約1,200円高と急騰した。今回のラグビーワールドカップでも10月13日のスコットランド戦で勝利し決勝トーナメント進出を決めた週明け10月15日の日経平均株価は前日比408円34銭の大幅高となった。日経平均株価は大会が始まった9月20日終値で22,079円09銭だったが、大会終了後初の取引日の寄付きは23,118円79銭で、1,039円70銭上昇した。

ラグビーワールドカップ観客動員は約170万人。9月分英国からの訪日外客数は前年同月比84.4%の大幅増加

日本大会組織委員会が公表した経済効果は直接効果、間接効果をあわせて4,372億円だった。大会終了後、発表された観客動員数は170万4,443人、チケット販売率は99.3%で過去最高であった。当初のチケット販売予想が約130万枚だったことからみて、経済効果は4,372億円を上回った可能性が大きいとみられる。観光庁によると18年の訪日外国人1人当たり旅行支出金額は英国が22.1万円と全体の平均15.3万円を上回ったが、英国などからの観戦客が多かった今回のワールドカップでもインバウンド消費がかなり出たものと思われる。実際、9月の英国からの訪日外客数は前年同月比+84.4%増加と大きく伸びて、韓国の同▲58.1%の減少を補って全体の伸び率も同+8.2%と8月の減少から増加に転じている。読売新聞が観戦に訪れた訪日外国人100人に聞いたアンケート調査によると、大会は44日間行われたが、滞在期間の最長は57日間、平均は約18日間だったという。大半は試合だけでなく、各地の観光なども楽しんだという。

 

また、ラグビーワールドカップ関連のCDも売れた。11月4日付オリコンシングル売上ランキングで、日本テレビ系列テーマソング・嵐の「BRAVE」は70.6万枚売れている。現在70.7万枚だった自身の第4位だった売上に次ぐ第5位になっている(図表2)。また、7~9月期に放映されたラグビー部を舞台にしたドラマ「ノーサイド・ゲーム」の主題歌、米津玄師の「馬と鹿」は週間2.4万DLを記録し、11/11付オリコン週間デジタルシングル(単曲)ランキングで2位にランクイン。累積売上を68.1万DLとし、同ランキングの「歴代累積DL数記録」でDA PUMP「U.S.A」を上回り2位に上昇。1位の自身の曲「Lemon」と併せ、1位、2位を独占することとなった。

 

今年のSBMC日本シリーズの対戦カード、ソフトバンク対巨人は人気チーム同士で景気にプラス⁉

令和最初の年のセ・リーグ優勝は昭和(1リーグ時代)、平成に続き巨人であった。一方、パ・リーグは西武が優勝した。クライマックスシリーズでは、セ・リーグでは巨人、パ・リーグはソフトバンクが勝ちあがり、日本シリーズは4連勝でソフトバンクが3年連続の日本一となった。人気ランキング1位同士の対戦なのでランキングの合計は2となった。

 

日本シリーズの対戦カードとその年シーズン前のランキング合計との間に不思議な関係がある。1986年から2018年のデータでランキング合計が2~5の人気球団が絡んだ組み合わせは19回あるが、景気拡張局面18回、後退局面1回、暦年の実質経済成長率の平均は1.84%だ。それに対し、ランキング合計が7~8の組み合わせは8回で景気拡張局面3回、後退局面5回、暦年の実質経済成長率の平均は1.06%だ。しかも拡張局面3回は全て下剋上による日本シリーズ進出の年である。日本人の判官びいきの影響でにわかファンが増えるのだろう。ランキング合計が6の組み合わせは6回で景気拡張局面3回、後退局面3回、暦年の実質経済成長率の平均は1.53%と2~5と7~8のちょうど間になる(図表3)。一部に景気後退説も出ているが、対戦カードからみるとSMBC日本シリーズの期間は、景気の拡張局面である可能性が大きいと思われる。

 

 

他の身近なデータも、景気の底堅さを示唆するものが多い。例えば、JRA中央競馬会の年初からの売得金は11月3日現在前年比+3.4%で、8年連続前年比プラスに向けて推移している(図表4)。雇用の限界的な関連指標と言える自殺者数は、7月の前年同月比が+2.7%と5カ月ぶりに一時増加に転じたものの、8月は同▲8.6%、9月が同7.2%と再び減少傾向に戻り、1~9月の累計前年比は▲3.4%と10年連続の減少に向けて推移している。金融機関の店舗強盗件数は9月20日までで6件と18年同時期の13件の半分未満にとどまっている。17年は26件、18年は17件だったが、19年はさらに減少が見込まれる状況である。

 

9月景気ウォッチャー調査、「消費税・増税」関連DI、現状判断は50.5と50超、先行き判断は29.4まで低下

景気ウォッチャー調査で「消費税・増税」関連DIをつくってみると、現状判断の回答者は1月調査の40人から9月調査では548人に、先行き判断DIでの回答者は1月調査では196だったのに対し、9月調査では796人に大きく増えた。「消費税・増税」関連9月調査現状判断DIは50.5と、景気判断の分岐点の50を大きく上回っていた。「良くなった」が43人いたが、ほとんどが「駆け込み」について触れていた。一方で関連先行き判断DIは29.4と低水準になった。6月48.2、7月39.1、8月30.7と、どんどん低下した。全員「やや悪くなる」と回答すると25.0でそれに近い水準だ。消費税増税が実際に実施されると直後には一時的にせよ、消費支出が落ち込むと判断する人が多いことを示唆している。

 

消費税増税前の駆け込み需要とその反動は今回も高額品を中心にそれなりに出たようだ。全国百貨店売上高の9月の前年同月比は+23.1%と、7月同▲2.9%、8月の同+2.3%から大きく増加した。中でも美術・宝飾・貴金属は前年比で+102.9%と倍以上の売上高となった。一方、10月の前年同月比には予想通り駆け込みの反動が出た。大手百貨店5社の売上高前年同月比の単純平均は9月が+26.8%の増加だったが、10月は▲18.6%の減少になった。台風による店舗休業や営業時間の短縮も影響し、2014年4月の増税時よりも下げ幅が大きかった。ナウキャストのJCB消費NOWの前年同月比は、9月が+9.831%と8月の+0.941%から大きく増加したが、10月前半は▲6.706%とマイナスに転じた(図表5)。乗用車新車新規登録届出台数の前年同月比は、9月が+13.6%と8月の+4.9%から増加率を高めたが、10月▲25.1%と大幅なマイナスに転じた。

 

 

なお、消費税増税1年前となった18年10月から1年間にわたって低下を続けていた内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(二人以上世帯、季節調整値)は、19年10月分が前月より0.6ポイント高い36.2になり、1年ぶりに上昇に転じたことは明るいデータだ。実際に消費税率が引き上げられると先行きの見通しは改善方向に向くことが多い。高齢者のマインド悪化も一服した感がある(図表6)。

 

鉱工業生産指数7~9月期・前期比▲0.6%、海外要因からの輸出減少が響く

「ESPフォーキャスト調査」10月特別調査で、「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える可能性がある要因」(3つまで)の回答で、10月調査の第1位は「中国景気の悪化」。第2位は「米国景気の悪化」、第3位は「円高」となった。引き続き海外発の要因が懸念材料になっている。米中貿易戦争などの国際情勢の影響を受け、輸出が鈍化傾向にある。このため輸出関連の生産状況が弱い。10月中旬には記録的な大雨と、多くの河川での堤防決壊をもたらした台風19号の影響も工場の操業停止などにつながり、生産の足を引っ張るものと思われる。一方、設備投資、公共投資などの内需関連の生産は足元しっかりした状況にあるとみられる。

 

鉱工業生産指数・9月分速報値・前月比は+1.4%と2カ月ぶりの増加になった。しかし、四半期ごとにみると7~9月期の前期比は▲0.6%と減少になった(図表7)。このところ鉱工業生産指数は四半期ごとにみると前期比増減を繰り返しているのでパターン通りである。経済産業省は基調判断を4月分以降の「総じてみれば、生産は一進一退」から、8月分で「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」に下方修正したが、9月分でも「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」に据え置いた。

 

 

但し、よく見ると9月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲1.6%の減少で3カ月連続の減少になるなど明るい動きもある。電子部品・デバイス工業の在庫サイクル図をつくると、19年7~9月期では出荷の前年同期比が▲3.3%、在庫が同▲17.8%と、4~6月期に引き続き「意図せざる在庫減局面」の状態にあり、在庫調整が進んでいることが確認された。

 

先行きの鉱工業生産指数を、10月分は先行き試算値最頻値前月比(▲1.6%)、11月分を前月比(▲1.2%:製造工業予測指数)、12月分を横這いで延長すると、10~12月期の前期比は▲1.0%と減少になる。このケースだと鉱工業生産指数の四半期ごとに前期比増減を繰り返すという最近のパターンが崩れるが、一方で10月分は製造工業予測指数前月比(+0.6%)、11月分を前月比(▲1.2%:製造工業予測指数)、12月分を横這いで延長すると、10~12月期の前期比は+0.3%の増加になる。このケースだと鉱工業生産指数の四半期ごとに前期比増減を繰り返すという最近のパターンが維持される。結果がどちらになるか予断を持つことなく見守りたい状況だ。

9月分景気動向指数、一致CI前月差と3カ月後方移動平均前月差とも上昇に戻るも、基調判断は「悪化」継続に

9月分の景気動向指数一致CI前月差は2カ月ぶりの上昇になり、3カ月後方移動平均が4カ月ぶりに上昇に転じると予測する。9月分の一致DIも景気判断の分岐点50%を4カ月ぶりに上回ると予測する。但し、「下げ止まり」に転じることができるほど3カ月後方移動平均の前月差が上昇しないため、基調判断は「悪化」継続になると予測する。なお、10月分が小幅の下降になり、11月分がそれなりの上昇になれば、早ければ1月10日発表の11月分で基調判断が「下げ止まり」に戻ることも夢ではない。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本代表躍進…ラグビーW杯が国内経済へおよぼした影響とは?』を参照)。

 

2019年11月5日

 

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

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