貧富の差がますます激しくなる日本。子どもが将来稼げる人になって欲しいというのは、親にとって切なる願いともいえますが、「会計士になれ」「医者になれ」などと、闇雲に伝えるだけではいけません。そこで本連載では、公認会計士林總事務所代表・林總氏の著書『年収1000万円 「稼げる子」の育て方』(文響社)より一部を抜粋し、令和時代を生きぬく子どもの育て方を解説します。

ドラッカーの時給は「4000万円」?

「仕事からではない、時間から始める」というドラッカーの言葉が示すとおり、時間から仕事を眺めてみることで、見えてくるものがあります。

 

たとえば時給。一般に、会社員の平均時給は平社員から部長クラスまでおよそ2000〜5000円程度だといわれています。ファストフード店のアルバイトだと800円くらいです。一方、時給が高いのが、技術を持った大工さんなどで1万円ほど。腕がよく引っ張りだこの弁護士や医者なら3万円、大手監査法人のシニアパートナーなら時給10万円くらい取ります。

 

実に800円から10万円まで、およそ120倍もの開きがあるのです。この差はなぜ生まれるのでしょうか。それは「あなたにしかできない仕事かどうか」という希少性で決まります。

 

時給は需要と供給の関係で決まりますから、需要が多く、「あなたにしかできない仕事」であればあるほど時給は高くなります。ドラッカーの講演料は、時給に直すと実に4000万円(!)ともいわれていました。それほどのお金を払っても「話を聴きたい」という経営者が多かったのです。

 

また、生産性も重要です。年収1000万円の人が、1日10時間、月に23日間働くと、時給は約3600円になります。これが、残業なしで1日8時間なら約4500円、1日10時間で休日出勤して月に27日働けば約3000円と、同じ年収1000万円でも、生産性によって時給には1500円の開きが生まれています。

 

「希少性」と「生産性」。このふたつが、人よりも少し多く稼ぐのに必要な二大要素なのです。

 

私自身も、常に生産性を意識して仕事をするように努力してきました。生産性が大切だという気づきを得られたのは、外資系会計事務所、中堅の監査法人など複数の職場を経験するなかで、自分より〝少し〞優れた人を勝手に目標に設定し、その人に追いつくように、仕事のやり方を観察し、いいところを盗みながら仕事をしていたからです。

 

自分のなかでその人に追いつけたと感じたら、ふたたび〝少し〞優れた人を探します。その繰り返しのなかで、仕事ができる人の共通点が見えてきました。

 

●時間の使い方がうまい

●効率的で遠回りしない

 

この2点です。さまざまなタイプの「できる人」がいましたが、間違いなくこのふたつは共通していました。ただ仕事が速いだけでなく、メリハリがあるのです。

 

余談ですが、少し上の目標を見つける、というやり方は、自分の実力を上げていくのにずいぶん役に立ちました。

 

100人、200人の集団のトップははるか先にいます。はじめから集団トップの人を意識しすぎると、あまりに実力の差がありすぎて気持ちが萎えてしまいます。しかし、身近な先輩に追いつこうとがんばっているうちに、徐々に目標とする人のレベルが上がっていき、あんなに遠くにいたトップをいつのまにか身近に感じる、ということがよくありました。

「専門性」と「得意分野」が組み合わさった仕事を選ぶ

私は、子どもたちに「資格を取れ」と繰り返し言ってきました。なぜそこまで資格にこだわるのか。それは、仕事における「希少性」と「生産性」を高めるのに、資格を持っていることがきわめて有効であるからです。

 

資格の「専門性」に軸足を置きながら、そこに自分の「得意なこと」「好きなこと」を組み合わせていくことで、確実に希少価値を手にできます。組み合わせというよりも、掛け算というほうがいいでしょうか。乗法でどんどん可能性が広がります。希少価値が高まれば、おのずと生産性も向上します。

 

提供できる価値が高まるほど、コンサルティング料も高額になりますし、講演会などに呼ばれるような存在になれば、より短時間で高いフィーが約束されるようになるからです。

 

私自身も、自分の専門である「管理会計」に、興味があって好きだった「IT(情報技術)」の知識を組み合わせ、原価計算システムをつくるといったように〝ニッチ〞で勝負してきました。

 

また、会計監査やコンサルティングだけでなく、食品会社の副社長として経営に携わることで、会社を多面的に見てきたことも強みになりました。「会計」だけ、「IT」だけ、「副社長の経験」だけでは不十分でも、この3つを合わせることで「自分にしかできない仕事」を生み出していくことができたのです。

 

コンサルティングだけでは食えない時期には、監査や税務の仕事を極力抑えて、管理会計の論文を書いて投稿していたことが、大手総合研究所との仕事をもたらし、10年後の『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』の書籍のヒットにつながりました。そして、そろそろ引退か……と思っていたときに、縁あって68歳まで大学院で教壇に立つことになりました。

 

こうした希少価値は、ほかの資格でも同じように生み出すことができます。医師免許を土台に、「社会のために公益性の高い仕事がしたい」なら公的機関で公衆衛生に携わってもいいし、物を書くのが好きなら医師の知識を生かして医療ジャーナリストや小説家になってもいいでしょう。プログラミングが得意なら、IT企業で医療現場用のシステム開発に携わることだって可能です。

 

「専門性×Somethig」の法則
「専門性×Somethig」の法則

 

もちろん、会社員であっても専門性+得意なこと、好きなことで「自分にしかできない仕事」を生み出すことはできます。営業なら、セールスのノウハウを軸に、マネジメント能力を生かして管理職になる道もあれば、特殊な商材を扱って専門知識を磨いたり、人事部に転身して営業で培った「人を見る目」を活かす道もあります。

 

SEならテクニカルな知識をベースとし、リーダーシップや営業、コストに関する知識を磨いてマネジメント職に就いたり、企画力に自信があれば起業してソフト開発を専門におこなったり、多彩なプロジェクトに関われるフリーランスになったりと、さまざまな選択肢があります。

 

自分の希少価値と生産性を高めていくために、自分をどうプロデュースしていくか。このあたりは、学校や家ではなかなか教えることはできない部分ではあります。だからこそ、多様な例を子どもに教えていく大切さを感じます。

 

単に「会計士になれ」「医者になれ」「好きなことを仕事にしろ」と言うだけでは、人より一歩先を行くのは難しいのです。

 

医師になった息子たちも、長男は総合診療、三男は心臓リハビリをやりたいと自分の軸足を定め、興味のある分野を広めたり深めたりしている真っ最中です。

 

専門性を磨き上げて、希少価値を高める術を子どもに授けるには、専門性を武器に仕事をしている人と交流するしかありません。子どもが親と先生以外の大人と交流する機会は、驚くほど少ないものです。自分の周りにいるさまざまな専門性を持つ人たちと触れ合う機会を、子どもにつくってあげましょう。

 

ここで大切なのは、親が他人と張り合わないこと。謙虚に他人の仕事をリスペクトする親、自分の仕事のほうがすごいと自慢する親、どちらの様子を子どもに見せるべきかは、本記事の読者ならもうおわかりですね。

 

私が無理して購入し長年住んでいるマンションには、医師、商社マン、TV局のプロデューサーやフランス文学者が住んでいて、彼らと交流することで、子どもにたくさんいい影響をもらいました。

 

ドラッカーも、父親はオーストリアの高級官僚、母がオーストリアで最初の女医という環境のなかで、学者が集まるホームパーティーなどで知的な会話に触れながら少年時代を送りました。

 

稼ぐ力を高めるコツを知っている達人は、実は身近にあふれています。子どもが専門性を磨くヒントを得て、稼ぐ力を高めるためにも、親自身の交流の輪のなかに、子どもを参加させてみましょう。

 

 

林 總

公認会計士林總事務所 公認会計士/明治大学特任教授

 

年収1000万円 「稼げる子」の育て方

年収1000万円 「稼げる子」の育て方

林 總

文響社

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