金融庁による「公的年金以外に老後資金2000万円が必要」という報告書が物議を呼んだ、いわゆる「老後2000万円問題」。様々な意見が交わされましたが、「これからは公的年金だけに頼る時代ではない」というのは、誰もが抱く感覚ではないでしょうか。しかし、どのようにして資産を形成していけばいいのか、という道筋は、いまだ示されていません。そこで、一般的な会社員が資産形成を進めていくうえで必要な基礎知識について紹介していきます。今回は、「NISA」について解説します。

NISA(少額投資非課税制度)とは?

今年6月3日に金融庁が公表した報告書(『高齢社会における資産形成・管理』)で、物議を呼んだ「老後2000万円問題」。報告書では、以下のように記述されています。

 

<夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になる。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。>

 

報告書は、あくまでも統計などをもとに推測したものであり、誰もが老後のために2000万円が必要であるとしたものではありません。実際にどれくらいの金額が必要になるかは人それぞれですが、公的年金以外で賄うべき金額を把握しておくことが重要であると述べています。

 

もう年金だけには頼れない
もう年金だけには頼れない?

 

そこで注目を集めているのが「NISA」です。前述の「老後2000万円問題」のニュースを機に、口座開設が増加しているようです。2014年1月にスタートして5年が経ち、今や世間の常識という雰囲気が漂うなか、「いまさらNISAについて教えてなんて言えない」という人も多いのではないでしょうか。

 

そもそもNISAとは、年間120万円までの投資に対して5年間、そこから得られた利益に税金がかからなくなる制度です。

 

通常は、株式投資をして得た利益や受け取った配当に対して20.315%の税金がかかりますが、NISA口座での運用の場合は非課税となるのです。NISAを利用するには、金融機関でNISA口座を開設し、そこで投資運用する必要があります。NISA口座を利用にあたり、以下の制限があります。

 

利用できる期間:2023年まで

口座数:1人1口座

対象利益:配当や売却益が非課税の対象

非課税期間が過ぎたら……選択肢は3つ

一見メリットが多いNISA口座ですが、注意すべきポイントがあります。1つずつ見ていきましょう。

 

■投資枠は年間120万円まで

NISA口座での投資の上限額は年間で120万円です。年間120万円の投資枠を使いきれなかったとしても、翌年に繰り越されることはできないのと、購入した株式を売却しても投資枠が増えることはありません。

 

売買を頻繁に繰り返す投資を行っている方は、120万円の投資枠がすぐに上限に達してしまい、非課税の恩恵を最大限受けられないでしょう。

 

■損益通算ができない

NISA口座は損益通算ができません。普通の口座であれば、たとえばA口座で利益が50万円発生し、B口座で損失が50万円発生した場合、利益と損失を合算して「0円」の所得とすることができます。

 

しかし、NISA口座で発生した損失は、他の口座の利益と合算することができないため、NISA口座を利用したことで、税金がより多く発生してしまう可能性があります。

 

■5年の非課税期間が終了した時(ロールオーバー)の取り扱い

NISAでは、最長5年間の非課税期間を設けています。5年経過時の選択肢としては、「非課税期間の終了前に売却する」「通常の証券口座へ移管する」「翌年の120万円の投資枠へ移管する(ロールオーバー)」の3つがあります。

 

ロールオーバーとは、非課税期間が終了した際にNISA口座で保有している金融商品を翌年の120万円の投資枠に移管することをいいます。ロールオーバー時に、時価が120万円を超えている場合でも、全額を翌年の投資枠に移管することができます。しかし現状では、NISAの制度が2023年までとなっているので、ロールオーバーが永続的に使えるわけではありません。

NISAを活用する際の3つのポイント

上記ポイントを読めばわかる通り、NISA口座は使い方を間違えると逆に損をします。活用の際のポイントを紹介します

 

(1)投資であることを忘れてはならない

NISAを節税目的で行うことも重要ですが、そもそも投資ということも忘れてはいけません。市場価額が下落するケースもあります。制度を最大限活用するには、中長期的に値上がりの期待できる金融商品を選ぶと良いでしょう。

 

(2)NISAと贈与の組合せで税金対策

家族名義のNISA口座を作って、贈与税の非課税の枠内で運用資金を贈与することで、相続税対策につながります。贈与税の非課税枠は暦年で110万円までです。

 

(3)投資のコストを考慮する

NISAの投資対象である投資信託の場合、手数料を十分に考慮する必要があります。投資信託の投資対象、投資国、運用会社等によって、手数料が異なってくるので、いくら運用成績が良くても手数料が高くなってしまうと資産は思うように増えないので、投資前に十分な検討が必要です。

「NISA」と「つみたてNISA」の違いとは?

つみたてNISAとは2018年1月から開始した制度で、少額の長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。つみたてNISAと通常のNISAの主な違いは下記の通りです。

 

・投資枠が年間40万円まで(通常NISAは年間120万円まで)

・非課税期間は最大20年(通常NISAは最大5年)

・株式は購入できない

・ロールオーバーができない

 

つみたてNISAは、これから投資を始める人や、NISAよりもさらに長期的な投資によって資産形成を行いたい人に向いているでしょう。

 

メリットの多いNISA。実際に始めてみようとしたら、どうすればいいのでしょうか? インターネット上で、「NISA 始め方」などのキーワードで検索すれば、口座開設ができる証券会社のページが上がってきます。

 

証券会社によって、取り扱っている商品の数、手数料、情報提供量などそれぞれに特徴がありますので、自身の条件に合わせて選んでみてください。

 

本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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