2019年6月3日、金融庁は「人生100年時代」に備えた資産運用を促す報告書を発表しました。定年退職後、夫婦で約2000万円の金融資産が必要になること、そのためには公的年金だけを頼らず「早い時期からの資産形成」をすることの重要性が強調されており、世間では困惑の声もあがっています。はたして、これから約2000万円という金融資産をどのように形成すればいいのでしょうか? 書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版)より一部を抜粋し、「米国つみたて投資」というひとつの解を紹介します。

個人金融資産のうち、株と投資信託の比率が「48%」

◆株式資本主義が浸透している米国

 

幾度となく直面した株価の暴落に対して、どうして米国の株式市場はこうも強いのか? 米国が移民政策を取り、人口が増加している、経済的に若い国であることは、もちろん理由のひとつですが、それに加えて、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)や企業が、株価を維持させるのに必死だからです。

 

米国という国は、資本主義の総本山であるのはもちろんですが、その資本主義の実体は「株式資本主義」です。つまり、企業経営にしても中央銀行の金融政策にしても、あるいは政治家までもが、株価を上げることを最終目標にしているのです。

 

その理由は、個人金融資産にあると私は考えます。2018年8月に発表された「資金循環の日米欧比較」によると、日本の個人金融資産に占める現預金の比率が52.5%であるのに対し、米国のそれは13.1%に過ぎません。

 

また株式と投資信託を合わせた比率は、日本が14.9%であるのに対し、米国は48%。これはつまり、米国において株価の上昇は、米国に住んでいる人たちの「幸せ」に直結することを意味します。だから、中央銀行も企業も、そして政治家も、株価の維持・上昇に必死にならざるを得ないのです。これは、実際に株式市場に参加している投資家にとっては、何よりの安心材料といえるでしょう。

 

 

もちろん、米国株式市場ほどの規模になると、本当にたくさんの投資家が、各々の思惑によって取引していますから、暴落に乗じて儲けようとして積極的に売りを仕掛ける投資家もいるでしょうし、買いポジション(ポジションとは、未決済のまま残っている取引のこと)を持っていた投機筋が、手持ちのポジションを整理するために投げ売りをすることもあります。

 

各々の投資家が許容できるリスクの範囲によって対応が変わってきますが、たとえ暴落しても、時間が経過すれば回復するという事実は、特に長期の資産形成を行う人たちにとって、株式を長く持ち続けるための強力な拠り所になります。

 

さらに言えば、金融マーケットのグローバル化が加速するなかで、米国株式市場は、その強力な存在感によって、他の国・地域の株式市場のけん引役になっています。つまり、米国の株価が上昇すると、米国の株式市場に投資している投資家が儲かり、より高いリスクが取れるようになるため、欧州や新興国、あるいは日本への投資を増やす動きが、このところ顕著に見られます(下記図表参照)。

 

[図表]NYダウ/S&P500をはじめとする世界の株価指数過去30年間の推移(現地通貨建て、指数化) 出所:各種データベースにより著者作成
[図表]NYダウ/S&P500をはじめとする世界の株価指数過去30年間の推移(現地通貨建て、指数化)
出所:各種データベースにより著者作成

 

結果、米国の株高が、他の国々の株高にも波及していきます。もちろん、米国の株価が下落すれば、それとは逆の現象が生じます。良しにつけ悪しきにつけ、米国の株価動向が世界の株式市場に強い影響を及ぼすようになったのです。

「分散投資でリスクヘッジ」は過去の話!?

◆欧州、中国、日本株に分散投資する意味はない

 

そう考えると、敢えて世界中の株式市場に分散投資する意味が、どのくらいあるのかという疑問が浮かび上がってきます。

 

投資の教科書には、金科玉条のごとく「分散投資が大事」と書かれています。確かに、国によって経済情勢が異なっていた昔であれば、その通りだったのかも知れません。1987年のブラックマンデーでは、米国の株価回復に時間がかかるなか、日本の株価はいち早く立ち直り、暴落前の水準をあっという間に回復させました。

 

それは、「米国経済の先行きには不安感が残るけれども、日本は伸び盛りだから安心して投資できる」という判断が働いたからです。つまり米国と日本の株式市場は、あくまでも違う国の株式市場であり、それぞれ国固有の情勢があるのだから、株価の動きも異なるはずだ、という前提のもとに、国際分散投資が有効だと考えられていました。

 

 

それが今では、金融のグローバル化が進み、ITによる情報伝達のスピードも格段に速くなりました。地球の裏側で起こった金融不安のニュースが、即座に世界中に伝わり、大勢の投資家が一斉にリスク回避をする時代です。その中で、米国株式市場の存在感が圧倒的な水準にまで高まり、そこで取引している投資家が、米国の株高、株安に応じて、グローバルにポートフォリオのリスク調整を行うようになりました。

 

実体経済面でも、国境の壁がどんどん下がっています。たとえば米国が製品のアイデアを考え、その製造に必要なパーツや機械を日本や台湾で調達し、人件費の安い中国で製造・出荷して、米国がそれを輸入するというような、グローバル・サプライチェーンが当たり前になっています。これは、米国の好不況が、米国内の問題に留まらず、世界中に波及することを意味します。金融マーケットだけでなく、実体経済についても、米国を中心にして世界の動きが一つになりつつあります。

 

今、世界経済で起こっている状況を、資産運用に照らして考えると、わざわざ国際分散投資を厳密に行う必要などないのではないか、という考えに達します。つまり、米国にだけ投資しておけば、それで十分、ということなのです。

 

 

太田 創

株式会社GCIアセット・マネジメント

投資信託事業グループ

執行役員

チーフ・マーケティング・オフィサー

 

本連載は、2019年3月18日刊行の書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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