本連載では、不動産投資に関連する様々な契約や手続きについて、専門家がそれぞれのポイントを説明していきます。今回は、不動産案件を多く手がける、新百合ヶ丘総合法律事務所代表の中山隆弘弁護士に、建物賃貸借の契約期間について、法律が定める基本事項を解説いただきます。

建物賃貸借の契約は「入居者保護」が基本方針

今回は、建物賃貸借の「契約期間」について、法律の定めを説明します。この記事では、まずは、民法及び借地借家法における基本的な定めである、普通建物賃貸借におけるルールを説明したあと、その例外的な定めとして定期建物賃貸借におけるルールを説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。

 

建物賃貸借の「普通建物賃貸借」の契約期間

 

まずは、契約期間の長期と短期について、それぞれ説明します。

 

(1)長期について

 

建物賃貸借の契約期間に関して、長期についての制限はありません(借地借家法29条2項、民法604条)。

 

(2)短期について

 

他方、短期については、賃借人保護の観点から、1年未満の期間を定めたときは、期間の定めがないものとみなされてしまいます(借地借家法29条1項)。

 

「普通建物賃貸借」の契約更新

 

続いて、普通建物賃貸借の契約更新について書いていきます。

 

(1)契約更新とは

 

更新とは、「期間の満了時に、契約を終了させずに継続させること」をいいます。この点、そもそも期間の定めがなければ更新という概念は出てきませんので、これは期間の定めがある賃貸借における問題です。

 

(2)更新には2種類がある

 

更新には、当事者の意思に基づく「合意更新」と、法律の規定に基づく「法定更新」があります。実務上、注意しなければならないのが、「法定更新」についてです。法定更新には、2つのパターンがあります。①通知期間内に更新拒絶等の通知をしなかったとき ②期間満了後も賃借人が使用継続していた場合に賃貸人が異議を述べなかったとき。以下それぞれについて詳しく見ていきます。

 

①通知期間内に更新拒絶等の通知をしなかったとき

 

建物賃貸借契約の賃貸人(オーナー)は、期間満了の「1年前から6ヵ月前」までの間に、賃借人(入居者)に対して更新をしない旨の通知、又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなければ、更新したものとみなされます(借地借家法26条)。加えて、賃貸人からのこの通知については、「正当事由」がなければ効力がないものとされます(同法28条)。なお、この「正当事由」については、実務上複雑な問題がありますので、あとのシリーズにてまた詳しくご説明します。以上の定めは、実務において、特に法律相談の現場では、頻繁に関係してくるものです。普通に考えれば、わざわざ契約期間を定めている以上、そのような厳格な通知がなくても契約は当然に終了すると判断しがちですが、法律上はそうではないことに注意しなければなりません。これも、まさに借地借家法における賃借人保護の精神が現れた定めといえます。

 

②期間満了後も賃借人が使用継続していた場合に賃貸人が異議を述べなかったとき

 

さらに、賃貸人は、上記の更新拒絶の通知をしたからといって、まだまだ油断はできません。借地借家法26条2項により、更新拒絶の通知をした場合でも、期間満了後なお賃借人が建物の使用を継続する場合において、賃貸人が「遅滞なく」「異議」を述べなければ、更新したものとみなすとされています。すなわち、賃貸人は、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に更新拒絶の通知をしたとしても、賃借人がそれを無視して居住している場合には、遅滞なく異議を述べなければならないとまでされているのです

 

(3)注意点

 

以上の定めについては、一方的強行規定であるため、賃借人に不利な特約をすることはできません(借地借家法30条)。これまでの筆者の経験上、建物のオーナー様は意外と以上の定めを把握されていない方も多く、この規定によって更新が認められてしまうという例も結構ありました。たとえば、契約期間満了の3ヵ月前になって初めて相談に来られた場合には、更新拒絶は困難となります。また、上記の更新拒絶通知や異議を述べたという事実については、裁判等では賃貸人側が立証責任を負いますので、必ず配達証明付きの内容証明郵便で出しておくべきです。筆者自身、オーナー様が更新拒絶通知を普通郵便で出していたために、裁判でその点が争いになって大変だったことがありました

 

(4)法定更新の効果

 

以上のようにして法定更新がされてしまうと、当該賃貸借契約は期間の定めのない契約となります。なお、期間の点以外は、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされます(借地借家法26条1項ただし書)。ちなみに、期間の定めのない契約の場合、賃貸人による解約申入れの日から6ヵ月を経過することによって、契約は終了します(借地借家法27条)。ただし、この場合も「正当事由」が必要とされます(借地借家法28条)。一方、賃借人からの解約申入れ期間は3ヵ月とされています(民法617条1項)。

いわゆる「定期借家」…定期建物賃貸借制度

定期建物賃貸借

 

最後に、定期建物賃貸借について書いていきます。

 

(1)なぜ、定期建物賃貸借ができたのか?

 

以上に書いたように、建物賃貸借では、1年未満の期間を定めたときは期間の定めがないものとみなされてしまったり、期間の定めがある場合でも厳格な法定更新の制度が定められたりしています。しかし、正直これでは賃借人保護が行き過ぎてしまっているという意見が多くありました。そこで、平成11年、借地借家法が改正され、「定期建物賃貸借」という制度が創設されました(借地借家法38条)。定期建物賃貸借は、一言でいうと、「契約期間が満了すれば、更新せず確定的に契約が終了する賃貸借」です。また、1年未満の期間を定めた場合でも有効とされます。

 

(2)定期建物賃貸借が認められる要件

 

定期建物賃貸借を認められるためには、

 

1.契約期間の定めがあること

2.契約書を作成すること

3.契約書に「契約の更新がない」という条項を入れること

4.契約の更新がないことについて、ⅰ説明書面を交付して、ⅱ口頭で、ⅲ事前に説明すること

 

が必要です(借地借家法38条)。

 

(3)効果

 

上述のとおり、定期建物賃貸借は、契約期間満了により確定的に契約が終了します。ただし、契約期間が1年以上のときは、賃貸人は、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に、賃借人に対し、期間満了により賃貸借が終了する旨の通知をしなければなりません(借地借家法38条4項)。なお、定期建物賃貸借においては、正当事由は不要です。ただし、この期間内に通知をせず、その後通知をした場合でも、通知日から6ヵ月を経過すれば契約終了を対抗できると規定されています(借地借家法38条4項)。

 

 まとめ 

 

以上、今回は、建物賃貸借の「期間」を巡る規律についてご説明いたしました。今回説明した事項は、実務上、建物賃貸借の本質に関わる非常に重要な規定でありながら、あまり気にかけていないオーナー様も多くいらっしゃる事柄ですので、今後の不動産経営にあたってはぜひ意識していただければ幸いです

 

本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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